ふにゃり、と笑って寄越したネコを抱え上げて。
ラグに座らせる。
「水浴びに行く前に、面倒でも下も着ろよ」
からかい混じりに言い。
ぽん、と着替えを取り出しサンジに向かって軽く放る。
僅かに頷いて。
ゆっくりと動作に移していた。
それを目の端に捕え、先に陽射しの下に出る。
バカネコは、動きが稀に雑なときがあってどこか動作がコドモじみることがある。けれど、まあいまのは。
「―――合格?」
口に出し、勝手に苦笑が浮かぶ。
煙草に火を点け。
煙を一息吸い込み。
「――――――や、微妙だな。」
言葉と一緒にソラに戻す。
コーヒーでも飲もう、そう思いつき。サンジがいつも水を汲みに行く時に使うモノはなんだったか思い出そうとしたが、浮かばなかったので、コーヒーのポットをそのまま片手に引っ掛ける。
優雅なアウトドア・ライフもそろそろオサラバだな、ふい、と思いが意識を掠める。
歩き出す前に、底が抜けたように青い空に目をやった。
快晴、だ。
オーケイ、良い傾向じゃねえか。
着替えて出て行き、水浴びをしたあと。
軽いブランチを食べた。
空は一面に青。
夏の彩りを帯びた緑は鮮やかで。
幸せな空間。
幸せな時間。
誰もが与えられるわけじゃないものを、たっぷりと二人で味わった。
大好きなゾロと二人で。
滝壷から少し離れた場所で、また釣り糸を垂れてみた。
釣った魚を即席の生簀に入れておいて、今日もまたアンナさんの人生の部分を知った。
アンナさんの複雑な人生にオレが撃沈しても、ゾロはずっと側にいてくれた。
寝てた気配はなかったけど、一緒にお昼寝。
夕方、太陽の光が随分と穏やかになったところで、目覚め。
暗くなる前に、晩ご飯の仕度。
さっさとおなかいっぱい食べて、満ち足りた。
幸せでイッパイ。
だから、多分。この生活も、もう少しでオワリだね。
漠然と、オワリが見えたけれど、でもそれは少しもショッキングなことじゃなくて。
砂時計の砂が落ちきって、今度はひっくり返してまた時間を測るような、そんなイメージ。
穏やかに、静かに。
次へと進むための、心のしたくは整いつつある。
キラキラと輝く水面の光とか。
夜空を埋め尽くす星の光とかのように。
いつまでも眩しい思い出として、記憶されていく。
I love you with all my heart。
呼吸をする度に、そう言ってる気がした。
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