Saturday, August 17
勝手に、目が冴えた。
稀に、こういうときがある。常ならば、しばらくは自由にならない意識が最初から覚醒している。
眠っていた時間との隙間が、なにかに埋められていた。そして、実感する。
自分が気付くより先に、身体だかアタマだかが、「向こう側」にシフトしていっていることを。
穏かな温かさは変わらずに側にあり、腕が抱きしめている身体は柔らかいままだ。
静かな、微かなとさえ言っていい寝息が聞こえてくる。
そして、抱き込んだままの胸元に、さらりと額を摺り寄せられるのを感じ取る。
金の髪に口付けを落とし、声に出さずにおはようと呟いた。
しばらくは、こういう目覚め方ともオワカレだな、と。ふいと思いつき。
それと同じタイミングで、くう、と。サンジがまわしていた腕を詰め、シャツの布地を握り締めていた。
これを、緩めるには。
身体をひいてはいけない、これは新しく覚えたことだ。
正解は、抱きしめ返すこと。
そして、それでもダメならば。
寝ているサンジに、名前を呼びかけること。
そうすれば、強張っていた指が、ほろりと蕩ける。
そしてわずか、頬も。笑みの影を浮かばせる。
頼りないほど柔らかな線が浮かぶ、おれの目のすぐ先で。
それを見るたびに、砂漠に降った雨を思い出す。
止む事を知らない天上からの水にずぶ濡れになって、バカみたいにわらったこと。
―――たしかに、この2ヶ月近い時間は。
おれのなかの何かを変えたのだろう、と。思う。
もう一度、やわらかな金色に口付ける。
そして、緩んだ腕の中から、身体を浮かせる。
サンジが浮かべている表情は相変わらず穏かで、すこしばかりわらった。
おまえを知る前と、いまと。
たかが目が覚める事さえ変わっちまったな?
とん、と。
頬に指で触れ。起き上がる。
しばらく、外で一人になりたかった。
向こう側、に。サンジを巻き込みはしたがこれ以上関わらせるつもりなどゼロだし、なにより。
同じ空間で自分の足場を考える事は気分的にオモシロクナイ。
悪いな?
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