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 リカルドがゾロを送って帰ってきたのは、もう10時を回るころで。
 その前までにその日二回目のお風呂や、ベッドメーキングを終えていたから。
 揃って夕食をとってしまえば、後はもう寝るだけだった。
 
 リカルドは、そのまま自分の家に帰ろうとはせずに。
 どうやらしばらく泊まっていくみたいだった。
 
 リカルドがお風呂に入っている間に、師匠と一緒にお酒を飲んで。
 ゾロは今頃どうしてるんだろう、と思いながら時間を過ごした。
 
 その大分後、すっかり酔っ払った師匠をリトル・ベアがベッドに連れて行き。
 それから、風呂上りのリカルドを交えて、3人でダイニングでカモミールティを飲んだ。
 「ゾロが、オレに車を寄越してくれると言った」
 リカルドが、ゾロのことを"ゾロ"と呼ぶのに一瞬驚き。
 くう、と優しい笑みを浮べているのを見て、なんだか嬉しくなった。
 
 「近日中に連絡が入るらしい。しばらくこっちにいるから、どんな車が来るのか、一緒に待っていような、」
 そう言ったリカルドに頷く。
 リトル・ベアがくくっと笑っていた。
 「さて次はどんな部下が来るのやら」
 
 ゾロが撃たれた後、オレを家まで送り届けてくれた人たちのことを思い出した。
 それから、家の前でオレを張っていた人たち。
 ううん…どうだろう?ゾロのとこのヒトって、NYCから来るのかなあ?
 
 「そうだ、アルトゥロ、」
 「なんだ?」
 「あの鷲、実は楽しんでたそうだ」
 …あの鷲って…ペルさんのことかな?
 …たのし――――えええ?
 
 リカルドのコトバに、けれどリトル・ベアは驚くこともなく。
 「ふむ、」
 僅かに目を細めていた。
 ―――――もしかしたら、リトル・ベアも…楽しんでたりしたのかな…?
 
 リカルドが、小さく笑っていた。
 ―――オトナのヒトの顔、してた。
 そりゃ、オレより年は上だけど…前は迷ってたのに、もう迷っていない。
 ―――――確実に、少しずつ。なにかが変わっている。
 いい方に。
 うん、そうだよね。
 
 ふあ、と欠伸をしたリカルドに、リトル・ベアが笑った。
 「もう寝ろ、シンギン・キャットもだ」
 「んーさすがに…ああ、寝るよ」
 リカルドが立ち上がり、くう、と大きく伸びをしていた。
 
 「リカルド」
 「んー?――――ああ、おやすみ、サンジ」
 「オヤスミナサイ。今日もいろいろとありがとうございました」
 「どってことない。良い夢を」
 「リカルドも」
 ぽんぽん、と頭を撫でられて、ぎゅう、とオヤスミに挨拶。
 リトル・ベアにも、ハグをして。
 オヤスミナサイの挨拶をした。
 
 ベッドルームに向かう間に、ダイニングの電気が落とされていくのが解った。
 客間はオレが使っているから…リカルドは、リトル・ベアの部屋で一緒に寝てるのかな?
 それともソファ?
 
 レースのカーテンの向こうから差込む月明かりを頼りに、大き目のベッドにもぐりこむ。
 広いベッド。
 冷たいシーツ。
 久し振りに眠るのに――――なんだか、居心地が悪い。
 
 リネンの間で丸まるけれど、疲れている筈なのに、眠りがなかなかやってこない。
 くるん、と寝返りを打つ。
 手を伸ばしても―――――。
 
 溜め息を吐いて、目を閉じた。
 ゾロ、…ちゃんと飛行機に乗れてるのかな…?
 
 
 
 
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