| 
 
 
 
 「ダレが、熱出して良いって言ったよ、バカサンジ」
 「…熱?」
 柔らかな声に、顔をまた上げた。
 「あぁ、」
 「…出した覚えないよ…?」
 ぱちくり、と瞬いて。
 また少し気が浮いた。
 
 ゾロの表情が少し軋んでいた。
 ……?
 「まぁ、―――しょうがナイか、」
 ゾロの声。
 手荒なことしちまったからな、と。
 続いた声に、首を横に振った。
 
 額に触れるゾロの唇の感触。
 く、と頭を固定されて、少し笑った。
 「平気。アナタにしたことに比べれば、これはなんてことナイ」
 オレがアナタにしたことに比べれば。
 「大有りだよ、バカネコ」
 「アナタにはオレに噛み付く権利があるもの。オレだって同じコトしたら噛み付いてたよ」
 「オマエを愛せないだろうが、」
 ……えええ?
 
 「オレ、愛されたい」
 「却下」
 「やだ。抱いて」
 「断る」
 「タベテよう、」
 「病人をダレが喰うか」
 「じゃあ、根性で下げるから!」
 
 ひょい、と抱き上げられて、うにゃ、と呟いた。
 「出来るモンならやってみろ。無理に決ってる」
 「む。じゃあ下がったら直ぐに抱いてよ?」
 トン、とベッドルームでリネンに押し込まれて、けれど腕は外せずにいた。
 「覚えてたらな、」
 イジワルを言う声。
 
 「オレが忘れないもん」
 笑って頬に口づける。
 「さあ、どうだかな?おれの顔をわすれるくらいだ」
 「忘れてないもんっ、」
 顔を押し下げられて、ぎゃん、って鳴く。
 腕、する、って解かれた。
 「やぁだ、一緒に寝よう、」
 「おれは忙しい」
 「えええええ?」
 
 ぷく、って膨れる。
 ゾロの目が、キラキラしてた。
 ―――カラカワレテル。
 ……いいけど。
 うん。
 いいけど。
 
 「―――ゾロ、」
 見上げる。
 「なんだよ、」
 「ダイスキ」
 「ふゥん、」
 さら、とゾロがシャツを脱いでいた。
 微笑みかける。
 「すっごい好き」
 「そう、」
 トン、と靴が脱げてウッドのフロアを転げる音がした。
 ゆっくりと瞬く。
 ダイアのピアスが、きらっとしていた。
 ―――ベッドに乗り上げてきたとき。
 笑う。
 
 ゾロの熱が近い。
 心臓が高鳴るね。
 「愛してる」
 囁くと。
 くいーっとブランケットで包まれた。
 手も足も出ない。
 
 「あ、そう」
 「ウン」
 平然としている声に、うっとりと笑いかける。
 「二度と間違わない、」
 「明日まで覚えてたら偉いな、オマエ」
 に、と笑う狼の笑み。
 「―――覚えてたら、ご褒美はナニ?」
 はふ、と息を吐いた。
 ―――んんん、ああ。熱、ほんとにあるんだ…。
 
 「おれの愛情で如何でしょう?お馬鹿様」
 からかうゾロの声に目を閉じた。
 「嬉しい」
 「足りないって言えよ」
 ―――わ。
 「足りない、」
 さら、と指が髪を梳いて、微笑む。
 「もっと、」
 「あぁ、オマエの望む以上にいくらでも」
 「嬉しい」
 …いま、腕が出せればもっと。
 
 ゾロがす、と微笑を浮かべ。
 きゅう、と頭を抱きこまれた。
 瞬いて笑う。
 「―――寝ろ、」
 甘い優しい声。
 何時間前とは比べ物にならない。
 
 「―――はなさないでね、」
 吐息で囁いて、目を瞑る。
 ふわ、と意識が浮かぶ。
 「バァカ、いまさら」
 「はなれちゃ…ヤ、」
 甘い声に喜びながら、ふわ、とまた意識が浮かぶ。
 今度はそうとう深く。
 
 ―――ゾロ。
 意識を沈ませながら、抱きしめてくれる腕の強さに微笑む。
 「眠るまで、見ててやるから」
 遠のく声。
 頷こうとした。
 成功したかどうかはわからない。
 薄れ行く意識のまま、ゾロに語りかける。
 誰よりも、何よりも、愛してるよ―――ゾロ。
 
 
 
 
 next
 back
 
 
 |