「…鍵」
酷く冷静な、リトル・ベアの声。…すっかりいることを、忘れてた。
…あちゃあ。
「…早く帰って、御家でやんなさい。間違っても、砂漠の真ん中で始めるんじゃないぞ」
ゾロが、振り返って、鍵をテーブルに向かって投げた。
「ああ、そんな勿体無いことするかよ。ちゃんと溶かして喰う」
キィン、と音がした。
「…フン」
リトル・ベアの笑う声。

ああ、早く家に帰りたい。
もう溶け始めてるよ、オレ。
家まで保つかなぁ?
世話かけた、って、ゾロの声が聴こえた。
耳の側で、低い声。開き直ってる。
早く早く。
もっとその声、オレだけに聞かせて。

「次は勝手にしろ」
リトル・ベアの笑い声、大きくなって遠ざかる。
ドア、閉まる音。


車の鍵は、イグニションに刺しっぱなし。
ああ、そうか。車に乗ってる間は、いちゃいちゃできない。
「後ろに座っておくか?」
「ヤダ」
からかうゾロの声。
勝手に熱る、オレの身体。

「ガマンする」
ウズウズ。
「残念だな、横にいられたらアシも触れねぇ」
ゾクゾク。
なんだか粗野な言い方。
…へぇ。そういうのも、かっこいいなぁ。
身じろいだ。

「ゾロ、降ろして。車に乗れない」
「んー?いま考えてたんだ。どちら側に乗せるか」
離れたくないけど、早くゾロと一緒になるには、今ガマンしなちゃ。
「アナタの上がイイ」
ムリだけど。
「できるかよ、」
くう、と首筋に顔埋められた。
「知ってる。だから、次に近い場所がイイ」
くくくく、と触れる唇はそのままに、ゾロが笑った。
そんな振動すら、快楽に転化される。

助手席のドア、開けられた。
すとん、と座らせられる。
離されるのが惜しくて。
「キス、して」
強請った。
「ダメ。」
「だって」
だって…欲しいんだもん。
そしたら、持たないだろ、ってゾロが笑って。
一瞬遠くなったゾロの気配、すぐに戻ってくる。
運転席に、座った。

「早く帰ろう」
どうしよう、車の振動にすら感じそうなくらい、感覚が鋭敏になってるよ。
はむ、って噛み付くみたいな口付け。
一瞬で離れていって。
車がスタートして動き出した。
…うん。
大丈夫だ。
車の振動は、快楽にならない。

ゾロがくれるものだけ。
熱の上がった身体。
もう奥で蕩け始めてる。
ゾロはオレにどんなことをしてくれるんだろう?
わくわく。
どきどき。
ああ…待ち遠しいなァ…。




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