何度も、何度も。指先が、同じその場所撫でていく。
掠めるように、爪を押し当てるように。柔らかく撫でるように、何度でも繰り返して。
「ゾロッ、ゾロッ、あああッ」
強烈な快楽に、総てが流されていく。
空恐ろしいほどの、純粋な吐精願望に、首を振る。
タスケテ、と悲鳴にも似た声が、勝手に零れ出て。

滲んだ視界の中で、ゾロの目がす、と細められたのを見た。
熱い吐息が昂ぶりきったモノを掠め、思わず目を閉じると。
不意にそれを上回る感覚が一点を襲って。
堪えきれずに、三度目の精を放った。

グツグツに煮立った蜜が飛び出していったのを、クラクラの頭が理解した瞬間。
す、と後ろが空になって。
きつく腰を捕まれて。
指より太いものが、ズル、と押し込まれた。
「ああああああッ…」
ゆっくりと押し開かれる感覚しか、もう解らなくなって。
「あ、ああ、はあ、ああ、はあ」
抑えることも出来ない声を乗せたまま、喘ぐ事しかできず。

意識を失う一歩手前、どこもかしこも熱く溢れているみたいになって。
コントロールしよう、という思いを手放す。
柔らかに頬に触れる掌。
サンジ、と低く掠れたゾロの声が、オレを呼ぶ。
びくびく、と勝手に脚が跳ねて。
けれど、それに構わずに、歪んだ視界でゾロを見上げた。

ぐぐ、と奥まで楔を打ち込まれて。
押し開らかれたままのオレを、ゾロがじ、と見詰めている。
昏い色を帯びた、緑の瞳。
捕らわれる、自分を組み敷くオトコに。

「ふ…っく、」
快楽に、勝手に涙が零れた。
「ふ、ぇ…ッ」
そしてそれ以上に、自分の中から湧き出る想いに。

刺し貫かれたまま、顔を覆うことすらできずにいると。
ゾロがすい、と僅かに首を傾けた。
指先が、そうっと眦を拭う。

「サンジ、」
「ひぃ…っく」
勝手に嗚咽が零れる。
子供みたいに、どこか幼い。
ゾロの掠れた声が、ゼイゼイと煩い呼吸音に混じって響いた。
見下ろしていたゾロの顔が、耐え切れない、というように僅かに歪んで。
胸を合わされ、ぎゅ、と抱きしめられた。

「ぞ…ろぉ…ッ」
重くてどうしようもない腕を持ち上げて、ゾロの首に腕を回す。
ゾロが益々強い力で、抱きしめてくれる。
「すき、なんだよぉ…ッ」
舌足らずな声で、伝える。
あとからあとから湧き上がり続け、留める事が出来ずに、ただ溢れていく想いを。
ほかにどうすることも、できず。
「ぞぉ、ろ、が…ッ、スキ…なんだよぉッ…」
ぎゅう、と目を瞑ると、熱った皮膚よりなお熱い涙が、零れ落ちていく。

唇が、零れ落ちるそれを吸い取っていく。
グラグラ、と沸き立っていた脳が、零れる涙に、少し冷静さを取り戻した。
「ふ、…っく」
ぐ、と息を呑む。
すがり付いていた腕、一つ下ろされ。
柔らかな口付けが落とされた。
「…っく」
すう、と感情が落ち着く。
「言うな、」
す、とまた口付けられる。
「っく」
「殺しちまいたくなる、から」
「…ごめ…ッ」

ゾロの目の底。ゆら、と冴えた色が掠めた。
ゾロ、ゴメンナサイ。
酷いこと、オレ、言った。
オレを殺して、だなんて。

「いまの、オマエのまま。閉じ込めておくのに―――殺しちまいたくなるだろう…?」
ゾロの首にしがみ付いた。
小さく首を振る。
こめかみに、唇が触れた。
ずく、と小さく奥を穿たれる。

ゾロにしがみ付いた腕、さらに力を混める。
「…ごめ…なさ…ッ」
快楽に押しやられた思考が、ほんの少しだけ、戻る。
あやまるな、とゾロが、言葉を耳元で落とした。
口付けが、すぐにそこに落とされて。

じわり、とまたわずかにゾロの身体が揺れた。
もう一度、小さく首を振った。
オマエが在て、おれはうれしいから。
柔らかい声が、落ちてきた。

頷いた。
オレも、アナタの側に在れて、うれしい。
抱かれて、愛されて、うれしい。
ゾロ、と。声にできなくても、名前を呼ぶ。
く、と身体が少し押し付けられた。
は、ぁ、と息を吐く。

淫らに渦巻いていた性欲がするりと消えて。
純粋に、ゾロを求める気持ちだけが湧き上がる。
ゾロが、すう、と片眉を撥ね上げたのが見えた。
「サンジ、」
「…ン」
少しばかりからかいの混じった声が、オレを呼ぶ。
「"いま"は、おれはマドンナなんざ、いらねえぞ?戻って来い」
「…ま、ど…な?」

…マドンナ?聖母???
言葉を、脳が理解しない。
どういう意味か、と訊ねることすら、思いつかずに。

指先が、立ち上がりっぱなしの昂ぶりをなぞった。
「あァ。戻ってこい、」
ぞくり、と快楽が波のように襲ってきた。

ぐ、と身体を引かれて、息を呑んで。
グン、と奥まで押し込まれ、叫びを上げた。
ぞくぞくぞく、と背中を快楽が駆け上って。
ゾロが喉でくく、と笑ったのを耳にして。

一瞬で身体が、燃え上がった。
冷めた熱が、倍の温度で熱くなる。
感情が総て快楽に取って代わる。
全身が、魂すらも、甘い熱い蜜になったみたいに。
上がり続ける体温。
熱すら重い液体みたいにとろりと纏わりつき。

溺れてしまいそうだ。
自分の内から湧き上がるそれらに。
それでいてなお、ゾロに餓える。
貪欲にゾロを呑み込んでいる場所が、絶えず新たな波を引き起こしていっても。
まだ足りない。
もっとゾロだけに満たされたい。

欲望は、底なし、だ。

熱く硬いゾロのモノが、収まっていた奥から縁ギリギリまで出て行って。
その質量や容を身体に刻み込もうとするように、より深い場所まで狭い襞を擦っていった。

思考停止。
引き攣る襞が齎す感覚が引き起こすハレーション。
喘ぐ。
熱に溺れる。
縋る、ゾロの肩に。
浮いた汗に、腕が滑る。
ゾロが薄く笑ったのを感じた。
目を開いても、フラッシュが光るばかりで。
だから、皮膚が視覚の代わりになる。

耳が、ゾロの低い声を拾い上げた。
満ちた蜜に、落ちる雫。
漣のように、歓喜に取って代わる。
自分が、ゾロに快楽を与えているということが、どうしようもなく嬉しい。
想いが深くなる。
心で感じるエクスタシー。
笑みが浮かぶ、息をすることすら苦しい中。

「……サンジ、」
擦れかけた声、落ちてくる。
身体の裏側に到達して、音が快楽に転化する。
言葉、綴ることができずに、深く喘いだ。
瞼に渇いた唇の感触。
グン、と突き入れられた楔が、深さを変える。

「ふぁ、アぁ…ん、んん、」
愉悦に塗れた自分の声。
他人のもののように、淫らだ。
けれど、言葉に出来ない総てを音で表す。
ゾロが、それを愉しんでいる。
緩く、きつく、穿たれて、変化するウタを。

ポイントを掠めるように、奥の一点を突いては引き出されるゾロの昂ぶり。
締め付けて、悦ぶ。
受け入れることは、こんなにもキモチガイイ。
「―――フ、」
ゾロを包んでいること。
ゾロに愛されていること。
嬉しくて、しょうがない。

くう、とゾロの口の端が、吊り上がったのを知る。
「熱いな、オマエの。なか、」
「あン、は、ああ、ン、」
強烈な感覚が背骨に沿って暴れ出す。
キリ、と耳朶を噛まれて、びくん、と脚が跳ねた。
「絡み、ついてくる」

ひゅ、と喉が鳴る。
火花が散る。
仰け反る。
奥、きつく穿たれて。
感覚に呑まれる。

麻痺した入り口、それでも窄まったのが解る。
ぎり、とゾロの背中に爪を潜り込ませた。
ゾロを挟む脚、その片方。付け根から膝裏まで、さあ、と撫で上げられた。
そのまま抱え上げられて、苦しい姿勢に息を呑む。
それでも、口から溢れ出すのは、甘いばかりの声。

増した密着度に、ぐり、と奥を抉られて。
悲鳴を上げた、音にならないソレ。
弾ける。
留める事ができずに。
身体中が勝手に跳ねた。
痙攣してるみたいに。

力強い腕がよりいっそうきつく抱きしめてくる。
総てを取り込むみたいに。




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