くたりと弛緩した体。背中ごしに抱き、頬に口付けた。
閉ざされた睫の端、快楽に零れた涙の欠片が残っていた。

温度の上がった肌、汗にぬれひたりと張り付き、それでもそこにあるのは。
「なにか」が容をとったものだ。

汗を含んで重みをました髪を手で押し上げて、項、唇で触れた。
舌先でたどる、薄い汗のあと。
そのまま頚骨まで滑らせ、骨を確かめる。
肩の線を口付けて降り、薄く皮膚を浮かせる骨を舌先で味わう。
歯にあたる硬質さに薄くわらった。

熱く、やんわりと包み込む中から、少しづつ身体を遠ざけていく。
くう、とサンジの眉根が意識を飛ばしていてもなお、わずかに寄せられた。
背骨。キスを落とし。そのなだらかな線に額を押し当てた。
緩やかに起伏が感じられ。まだ当分は「戻ってこない」と見当をつける。

肋骨、脇腹。身体を浮かせわずかずつ内から引き出しながら触れていく。
確かめる、その存在を。
肌をじわりと啜り、痕を散らせながら。
背骨の突き当たり、薄く食むようにし。
なだらかな丸みから膝裏まで手のひらで線と感触を愉しみ、撫で下ろす。
膝裏、舌先で擽り。

腰の中心、口付けてから、そっと仰向かせた。
さらさらとまだ上気した頬を撫でてみた。
まだ意識はないだろうに、わずかに。表情がうっすらと笑みをうかべた。
イイところへ行けているみたいだな、オマエは。
そんなことを思いながら、胸の中心、ちらりと舌で触れ濡れた痕を残し。
腰骨を辿り、軽く脚を引き上げさせた。

膝、かり、と食み。
ふう、と深く息をサンジがついたのを耳が捉えた。
手で容に触れる。
踝、そして。
「…ン…」
足首をやんわりと掴み、引き上げ踝に触れた。
もぞ、と身体が動いた。
放っておいた。骨の窪みに舌先を潜り込ませ、くすぐるように動かした。
つるりとした踵に線をなぞった。

何度か、瞼が揺れ。やがて、うっすらと目を開き。サンジはまだ意識が戻りきっていない風に、ぼう、としていた。
踵から足裏、舌で擽るように閃かせれば
どうするだろう、ふと思った。

舌で擽るように動かした、踵から足裏。
足首は固定したまま。
つ、と真顔。おれに向けられた。
眼差しは茫、としたままだった。

く、と舌を閃かせれば、突然何かの線が繋がったのか、スイッチが入ったかのように脚を引こうとした。
きちり、と押さえ込んだまま。土踏まずまでぺろりと舐め上げた。
「ふぁ、は、ッ」
きり、と噛み痕を淡く残しては宥めながら舌で擽った。
サンジはといえば、きゅっと目を細め。ひどくくすぐったい、と顔と声で訴えてきた。
首筋を反らせ、気持ち揺れて喉を曝し。じんわりと緩慢な動作で脚を引き抜こうとしていた。

「サンジ、」
足の甲、歯を立て。
「な…、し、て…?」
そのまま、足指の間の薄い皮膚、舌先で拡げた。
擦れた声だ。おれがなにをしているのか知りたいのか?
目をおとせば、ほにゃりとわらっていた。
「…喰ってる、」
「ふ…ふふ…」

つる、と指を口中に引き込んだ。
とろり、と蒼を蕩けさせたその様を見ていた。舌で撫で上げ、牙で薄く爪を穿ちながら。
「んん…」
ずらしては、食んでいく。
ひくひく、と時おり。足首が無意識に逃げようと強張り。それでも。口許からはあまく擦れた笑い声が小さく零れていった。

足首の上の腱を、かり、と食み。
「…ッ、ふ…」
辿った先を逆行するようにした。膝裏まで。
内側の薄い肉を歯で掬い上げ。
膝にキスを落とす。
「あぅ…、ふ…」
とろとろと。揺れる瞳を見つめた。
サンジが。おどろくほど柔和な表情で見つめかえしてきた。
蒼に眼差しをあわせたまま。内側、腿の柔らかな箇所を吸い上げていく。
僅かずつ、付け根へと向いながら。

「ん、ァ…」
きり、と肉を噛む。
熱い吐息が、小さく吐き出されたのを感じ取った。
ゆっくりと上ってきた感覚を段々と自覚させるように柔らかな愛撫を与え。
低く、緩やかに快楽を伝える声が唇から零れ始め。
知らず、笑みが浮かぶ。ひろく脚を開かせ、その付け根、浮き上がった筋を唇で食んだ。

「あァ…」
とろり、と蕩けた声と一緒に。ひくん、と脚が跳ねた。
手で柔らかな金を押し撫で。
「…は、」
舌先をそのままに掻き撫で。まだごくわずか熱の兆しを宿すだけのサンジ自身に舌を這わせた。
「ッ、く、」
背が緩やかに弧を描き、喉元を曝して。

衝動が湧き起こる。
ゆらり、とひどく加虐的な、それが。
じわじわと穏かな愛撫だけを与え続けながら。
指、脚。時おり、ぴくぴくと痙攣を起すように跳ね。
一層、舌と唇とを穏かにサンジに添わせ、高め、弄った。
じわ、とやがて舌に慣れた味が広がり始めるまで。

擦れた声が、高く、低く、断続的に上がっていく。部屋の空気が一層。
その密度を増した。
零れた唾液と。撫で拡げた蜜にやがて奥も濡れはじめ。
まだ内から、とろりと零れ出るものにも濡れる。

「ゾ、ロ…ッ」
蜜を零す先を押し撫でた。舌で。
「はぁ…ッ」
く、と蠢かす。
「あー…」

指を伸ばし。サンジの口許に添えさせた。
つる、と唇の内側、熱い中に滑り込ませ。舌を撫でる。
「ん、む…」
きゅ、と吸い上げられ。指を、舌の動きになぞらえて。口蓋をつるりと滑らせ引き出した。
透明な糸が、赤く熱った唇からつ、と伸び、途切れ。
「ふ、ゥ…」

視覚、煽られ。
聴覚、音を全て拾い。
身体は。僅かな震えさえ取り込む。

ふるふる、とサンジの身体が震えていた。
目を遣れば。瞳は固く閉ざされ。
重ねた肌は沸き上がる熱に体温を上げて。
サンジ、と声に出した。
震えを宥めるように。

「…ふ、」
ひく、と蠢いた奥。濡れた指を差し入れた。
綻び、熱を持ち、柔らかく絡み取るソレ。
く、とサンジの眉根が僅かにより、濡れたリネンを握り爪を立てた。
片手、サンジのその手に重ね。
つぷ、とどこまでも柔らかいその場所に指を埋め込む。
「は、ァ、ぁ、あァ…、」
唇と舌とは、とうに昂ぶり始めていたサンジのものを濡らし。
熱い粘膜にぎゅ、と締め付けられた。
ざわめく熱と動きを指が伝え。
僅かにサンジが首を横に振り、さらさら、と髪が擦れ場違いなほど涼しげな音がリネンに起されていた。

つくり、と舌が、唇が血の流れを感じ。
堰き止め、引き起こし、啜り上げる、ソレを。
「イ、ぁ、はぁ、ン、」
切れ切れの声。
耳に届くウタ。ああ、もっと聞かせろよ。
「聞かせろ、鳴けよ。」
「くぅ…ん、ふ、う、ッ」
歌ってくれるんだろう、オマエは。
おれだけのために……。
「なァ、―――サンジ?」

指の腹、押し当てる。
ぐうう、と背がアーチを描き。
「い、ン…ッ、ぞ、ろ…ォ…ッ」
ゆら、と腰が揺れていた。
「んぅ、ふ、あ、はァ、あ、ぁ、ァ」
増やした指で、中を弄りながら。
爪の先で敏感なその場所を掻く。
「ふぁ、あ、ああ、ああ、はァ、イ…、ン、」

限度が無い。
もっと聞かせろよ。
快楽のその先まで、オマエを連れていっちまいたい。

切羽詰って切れぎれに訴える声。
「イ、く、…も、イ、ァ、ア、あああああッ」
サンジの昂ぶりを手で押さえこんだ。
きつく。

「―――待てよ、ン?」
声。耳に届く自分のソレも擦れていた。
指を引き抜き。
絡みつく感触に眩暈がした。
「や、あ、ッ、ゾ、ろォ、ッ」
嬌声が高く上がり。
痛みをおぼえるほど高まった自身を嫌になるほど感じる。ビクビクと波打ったサンジの腹。目にして。
理性が、飛びかけた。
「ひ…ッ、ゥん、も、イ、…た、ィ」
喰い破っちまいてぇ、と。内から。

朱を刷かれた肢体。一気に貫いた。辛うじて残っていた理性が許すぎりぎりの強さで。
歯を噛み締めた。
「―――――――ッ」
突き当てる、最奥に。

サンジが手を振り解いて、リネンに爪立てていた。
金の髪、揺れ。
爪を立てた手、取り上げ。
肩口に添わせ、背に、回させた。
「あ、あ、ア、アァ、はぁ、あ」
ざ、と背が。爪に薄く引き裂かれたのをどこかで知覚した。

腕に抱き、引き上げ。肩口に顔を埋め、追い上げ。
曝された喉に、歯を当てた。
「イ、ぅ、ふッ、んんんッ、ふっ、んんんんッ」

ウタを聞いた。耳元。
なぁ、もっとだよ。
「や、アッ、あ…ッ、い、イ…っ、あァ、あああああッ」
聞かせろ。
最後の吐息まで、全部。




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