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 家の明かりが、遠くからでも見えて。
 ほっとした。
 真っ暗な家に帰り着くのは、とても嫌だから。
 
 闇がキライなわけじゃない。
 だけど、独りでいるってことは、とても寂しいから。
 待っててくれる人がいるって、とても嬉しいこと。
 それがとてもダイスキなゾロだっていうのは、もっともっと嬉しいこと。
 なんでだろう?仕事の疲れもどっかにいっちゃうヨ?
 
 車をポーチの外に停めて、買物の袋を手に、車を降りる。
 ふ、と気配を感じる。
 …アレ?チーフとルテナントの霊だ。
 今まで家に来たことはなかったのに。
 す、とチーフが消える。
 ルテナントは、じっとオレを見て。それから消えていった。
 「…なにしてたんだろ?」
 ううん、イオンの匂いがするぞ?
 まぁ、いいや。あとで対策を練らないと。
 
 「ゾロ!ただいま!!」
 ドアを開けて、声をかける。
 う、部屋中幽霊クサイ。
 …ゾロ、遊んでたのかな、ホントに。
 
 中に入ると、丁度ゾロは暖炉の脇に立っていた。
 何かを片付けているみたいだ。
 …カード?そんなものウチにあったっけ?
 「ゾロ、ほんとに幽霊とカードしてたの?」
 「ん?」
 
 ゾロが振向いたところへ、ただいまのキス。
 「会いたかった」
 うん。会いたかったぞう、ゾロ。
 ゾロはどうだったかな?
 
 唇、啄まれた。
 そのまま、少し冷たい指先が頬を撫でる。
 「連中はな、」
 「うん?」
 じ、と目を覗きこまれて。思わず覗き返してみる。
 「陰気臭ェだけで何の役にも立たないぞ、」
 ゾロが笑って、きら、と眼が光を弾いた。
 「カードの相手もできない」
 「…まぁ、幽霊だしね?」
 「話し掛けても無視だしな」
 ううん、悪さする以外では、幽霊ってジツのところ、大してなにもしてくれなかったりする。
 たぁまに助けてくれるケド。
 
 「…あ。チーフ?」
 「あァ、あいつら両方だよ」
 「ふぅん?チーフとか、ほかのネイティヴのひとたちは、初対面だとまず口利いてくれないけどねぇ?」
 くすんと笑って、買ってきたものをテーブルに置く。
 「笑いやがったけどな」
 「うわ、珍しいなぁ!チーフって、ほとんど顔の表情動かさないんだよ?」
 ゾロの視線が、テーブルに向いた。
 おなか空いてるのかな?
 
 ゾロが、ああ、他のももういないな、って言っていた。
 …一体何人呼び込んだんだろう、ゾロは?
 「…あんまり呼んじゃダメだよ、ゾロ」
 シンクで手を洗ってからゾロに向き直ると。
 すい、って片方の眉を引き上げた。
 「向こうから勝手に来るんだ」
 「…ありゃりゃ。そっか。…ううん、じゃあ今度、家の周りに呪いをしておこっか」
 …ああ、ゾロが呼ぶのか。無意識に。
 それはちょっと困ったぞ?
 
 むう、とか唸ってたら、ゾロが声を出して笑ってた。
 「やめろよおれが家に入れなくなる、」
 「ウン?そんなことないけど?」
 ケラケラと笑って、口付けられた。
 ゾロの首に腕を回す。
 
 「で、サンジ。オマエは?何も轢かなかったか?」
 「うあ!ゾロのイジワル!!」
 なんでそんな質問をするの!?
 にゃ〜…もぅ…ゾロを轢いたのが不思議だったんだってば!!
 
 ぷく、と膨れると。
 ゾロが、半日放って置かれたからな、って軽い口調で言って。
 耳元、柔らかく口付けられた。
 ぎゅ、と腕に力を入れる。
 「…ゾロのニオイだ…」
 
 ふぅ、と息を吐く。
 ふわふわと暖かな気持ちになって、幸せになる。
 「にゃあ…ゾロ…」
 ゴロゴロ。喉が鳴っちゃいそうだ。
 ちゅ、と音がして。こめかみに口付けられて、片目を瞑った。
 くすくす、と笑いが零れる。
 やわらかく抱きしめられて、ますますほわほわとあたたかな気分に浸る。
 
 「…ゾロ、おなかすいた…?」
 ん、と何かを考えているような返事が返ってきた。
 ゾロを見上げる。
 「メニューによるな。」
 「んっとね、さっきデリカテッセンで、ターキーハムとサラダ3種類、買ってきた。バゲットで、軽いサパーにしない?」
 「フン。―――オマエは?」
 「食べるよ〜。おなか空いたし。…あ、あと、レバーパテも買ってきたんだった」
 
 ぶっ倒れそうにお腹空いてるのかって訊かれて、んん、と考える。
 「そこまでは、空いてないよ?」
 「なるほど。じゃあ、」
 「にゃ?」
 に、ってゾロが笑った。
 んん?
 
 「おれは亡霊どもと遊んで待ってたんだぜ?オマエのこと」
 「…?うん?」
 「まずは軽く喰われろ、」
 「……うにゃ!」
 うわあ!そういうことか!
 
 かぷ、と首元を食まれて、思いっきり笑顔が零れた。
 「にゃあ…いいよぉ」
 うわあ!なんだか照れるぞう!
 でもって、すっごい嬉しいんだけど?
 
 ゾロの手が、そろそろと背中を動いて、あっという間に蕩けた吐息が口から零れた。
 「…いっぱい食べてね」
 ふわふわな気分で、ゾロの首に齧り付いた。
 「あァ。遠慮なく」
 
 ふふ、と零れた笑いは。
 瞬く間に甘い吐息に変わっていった。
 
 
 
 
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