Epilogue:: Days in September
COZA
9月の終わり、とは言っても。陽射しはいつもと変わらずに高いし。
あぁ、少しはツーリストの数が減ったか……?
ビーチフロントにあってもこの店は元々地元の連中しか来ないけれども。
オープンな場所に居られるのは迷惑だ、と眉を顰める連中は。だから撒いてきた。
なにしろ―――?オモシロイことが聞けそうだ。あのデンワの口調だと、わざわざフォートコリンズまで「おっとどけに
伺ちゃったのサ」と。そう言ってわらったトモダチはおれの従兄にも会えたンだろうな。
すう、と。
陽射しの中でカシスを落とし込んだぺリエを飲んでいた女の子の目線が通りに流れて。あー、来たな?「クルマ屋」が。
機嫌のイイのが歩き方からもわかるな、アレも。ひょい、と眼差しがあった。
に、と笑み。
とさ、と。目の前にイスを引く前に座る勢いで。
「ヘイ、まいどありぃ」
「ジャーック、なんの挨拶だよソレ?」
「んんー?オマエのおっかない従兄にさ、言いそびちゃったからね」
にこお、ってヤツ。
「おー。で、どうよジュリエットは!かーわいいかったって?」
おれの「アイジン」に言わせれば「天使チャン」。
「東のキョウダイ分」に言わせれば「バカネコ」。
おれはまだ残念ながら、本人は見てないんだけどネ。シャシンと噂だけ、だな。
「それがさ?家のドア開けてくれてね。初回に会ったときとえらくイメージ違ってたなあ」
「へえ?」
「ほぉら、アレックス流血がぶう事件。あれの首謀者とはねえ!オモエナイ」
ぶ、っと。コーヒーに咽た。
アレックスの仏頂面を思い出したから。
「ワイルド・キャット?」
「ハッハ!それがさ、けっこうセクシーにゃんこに変わってた」
「オマエその語彙なんとかしろ」
「まーねェ。で、」
けらけらと腕利きのディーラーが笑った。
「ローヴァ、届けてやったじゃん?気に入ったみたいでさ、喜んでもらえて嬉しかったな」
「どうせ足回り弄ったろ」
「アタリマエ。タダのもん渡してどうするヨ?」
そして、に、としながら前に置かれたエスプレッソのカップを引き上げていた。
「その様子じゃ、ゾロもオッケイしたな?」
「ビジン代?もちろん、請求書を渡し済み」
おれの、あのビジン。クラシックビューティのジャグア。
あのバカが逃避行のチケット代かわりにぶっ潰していったかわいいコ。
おかげさまでいまは、いまは亡きカノジョの面影を慕いつつ、2台目をみつけさせて甘んじている始末だ。
ジャックが探してもまだ出てこない、アレと同じレベルのは。くそゾロめ。
「大人しく受け取ったか、ざまあみろ」
笑う。
「しょうがねェな、ってね。けっこうあっさり」
「ちゃんと文句言っといたか?」
「あぁ、モチロン。解体されちゃったコほどビジンじゃ生憎ないんですけどね、ってね」 「まぁ、それに関しては、」
「フン?」
「生でもっとすげぇビジン捕まえたからイイ」
「お?初耳」
「ロンドンに居るんだけどね、ウン」
勝手に口角が上がる。
「ハ!ブリティッシュ好きだね、オマエもとことん!!」
「やー?フレンチだよ、実は」
「うーわ、まぁじか」
「そ、ロンドン在住のフレンチ・アメリカン」
「既にビジンの予感がするネ」
「アタリマエ、おれが不細工なモン連れてたことあるかよ」
「フレンチブルドッグ飼ってなかったか前?」
「あれはオンナのペットだよ」
「あらま」
「ビジン具合は、言うことなし。口も悪いし柄も悪いけどね、王子様」
「――――ハイ?」
ジャックがひらひら、と手を目の横で閃かせた。
「阿呆、正気だよ生憎と」
「コォザ!!」
「なんでしょう」
「―――――よっぽど寂しかったんだな?かわいそうに今度タスカンも買ってやるよ」
くっくと笑い出したトモダチの頭を軽くハタイタ。
「また東に請求書回すか」
「Certainly(トウゼン)]
9月のいい天気にはもってこいの軽いバカ話。
従兄も機嫌は良さそうだし、ジュリエットもひとまず―――お幸せ?
いいね。
これでおれも。
心置きなく「アイジン」と長電話できるってな。
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