オレがそうやって遊んでいる間にも。
サンジはエディとシャーリィに、コーザと一緒に会ったらしい。
最初、オトウトに間違われたらしいけど。
シャーリィが、苦笑してエディに言ったらしい。
『ハニィ、サンジの目がチガウでショ?』
シャーリィ、さっすがオレのお母様。
なんでアントワンと結婚できたのかが人生最大のナゾだよ。
ま、おかげで今のオレがいるけどナ?
で、コーザは。
う、と勢いを引っ込めさせられたエディに、自己紹介をしたらしい。
『残念ながら、ぼくは代理なのですが。始めまして』ってな。
……”ボク”ねえ。
心得てらっしゃる、さすが”社交家”のオレの”ダーリン”。
で、例の”革命家の亡命先の血族”ってハナシをして。
『僭越ながら。大事なご子息です、ぼくがお送りさせていただきました。ご挨拶も代わっていたします』
と、ゾロとの関連性を明確にしてから、なぜオトウトの代わりにサンジの側にいるのか、説明したらしい。
シャーリィからの事後報告、そのイチ。
『セト、スウィートハート!すっごい爽やかでいい青年だったわよう、サンジのダーリンの従弟クン』
シャーリィの飲み込みは早い。
うーん、どうしようかな。オレとしてはオモシロイから、オレとアイツの関係もバラしちまいたいんだけどネ?
まあ、こっちは半分ノリだし。いいか、まだ。
『コーザくん、気に入っちゃった』
嬉しそうなシャーリィの声。ハイハイ。見目良いオトコノコはダイスキだもんなァ、マァミィ。
『もおねえ!エディががみがみしくしくサンジに言ってる間もね!ずっと側に居て、サンジのこと、すっごい優しい目で
見守ってくれてたのよ。
コーザくんが、サンジのダーリンの一番信頼している相手なんでショ?マミィ、サンジのダーリンのこと。受け入れる気に
なったワ』
コーザ、ポイント、プラス3くらい?
エディからの事後報告は。
『セェエエエトォオオオオ!』
号泣、で幕を開けた。
「なに、エドワード。泣くほどイイオトコだった?」
笑えば、ぐにゃぐにゃとヨッパライは言葉を口の中で噛み潰し。
『サンジがあ、サンジがあ』
ああ、ハイハイ。泣くだけ泣きナ。
―――纏めると。大学はちゃんと約束どおりに卒業するけれど。その後はもうずっと、オトウトの側に在り続けたい、とのこと。
エドワードとシャーロットの愛情は痛いほど理解したし、ここまで慈しんで育ててくれたことをすっごい感謝しているけど。
人生における唯一の相手と出会い、何を投げ打ってでも一緒に添え遂げたい、その覚悟はもうできてしまった。
不義理なコドモかもしれないけれど、はっきり言えば。エディとシャーリィよりも。ゾロがイイ、……だって。
そんなことを、切々と言われてしまったらしい。
あーあ、直球勝負。
まあ、オマエにカーヴとかフォークとか投げられるとはオレも思ってはいなかったけどナ?
迷惑をかけたこと。連絡をせずにいたこと。なによりもシンパイを掛け続けて来たことを、きっちりとアタマを下げて謝られたら。
エディ曰く、”ダディが何を言っても無駄なんだよう”って結論に達しえずにはいられなかったらしい。
まァな、そうだろうなあ!天使チャン、そうとう頑固者だしネ?
サンジからの事後報告。
『―――でね、コーザ、ね?”面倒な立場の男で。ご迷惑をお掛けしますが認めてやっていただけませんか”って。
一緒にアタマを下げてくれたの。
オレ、びっくりした。コーザは、オレとゾロの決めたことなのに、エディから文句言われるの覚悟で言ってくれたんだよ?
本当にいい”ヒト”。こんなヒトがゾロの側に居てくれたんだ、って。オレもうすっごい…きゅう、ってなっちゃった』
―――ベイビィ。それは惚気かい?
報告に笑った。
シャーリィの報告、そのニ。
『でねえ!コーザくんてば!アタシとサンジ…は飲んじゃいけないからほんのチョットだけネ?…と一緒に。お酒飲んで、
エディに付き合ってくれたの』
ああ、もう。マァミィ。サンジが底なしのドリンカってこと、知ってるってバ。ダテにオニイチャンはしてないヨ?
『もおねえ、エディが泣いて絡んでもねえ、にこにこ、ってやさーしく付き合ってくれてねえ…マミィ、感激しちゃった』
―――ちなみにこの報告が来たのは。エディが泣きながら電話してきた後。…つまり、その後更に飲んで、エディは
潰れたってコトだな?
『サンジのちっちゃい頃の話とか、狼さんたちと一緒の生活をしてて心配してたこととか、いま大学に行ってて、一人暮らし
してて心配してたとか。もお、長々とグチを零してたんだけどねえ…全部をちゃんと聞いてくれてね、最後にはエディをベッドに
まで運んでくれたのよ?』
コーザ、プラス3ポイント、計6、か?
『遅くなっちゃって悪いから、どうせベッドルーム、あるし。泊まっていけば、って言ったんだけどネ?若いコなのに礼儀正しく、
”ご家族で水入らずでお過ごしください”ってにっこり笑ってねえ。”失礼でなければ、ミセス・ラクロワ”って頬にキスもらっちゃっ
たから、思わず言っちゃったわ。”あら、シャーリィでいいわよ?”って』
ホホホホホ、って…まあなあ。いいオトコだけどナ?
『もう、にこお、って…ああ、ホントかわいいコねえ!ハニィほどにはイイオトコじゃないけど。若くてシングルだったら、
マミィ、うっかり惚れちゃうワ』
―――うーわ、ちゃっかり惚気られるツイデに、すっげえコメントだね、それは。
『”では、シャーリィ。おやすみなさい、また明日伺いますね”なんて言われちゃったもの、もーマミィ、うっきうきだわ』
まあ、そのうっきうき具合は、サンジからも報告入ったけどナ?
『マミィ、すっごいにこにこしててね?ふわふわ、キレイだったよ?エディが酔っ払ってて残念』
「それは見なくて却ってよかったと思うよ」
『そう?―――ヨクワカンナイけど』
ああ、そこまでヒトじゃなかったか、オマエ。
『オレの髪撫でてね、また明日って挨拶くれたんだけど…すっごく嫌じゃなかった』
「へえ?コーザの手は平気?」
『うん。全然、真っ黒いの付いてなかったし』
コーザはサンジがタイプではない、と。
オマエ、邪なヤツには一発で気付くもんなあ。
ま、そんなヤツのアイジンにオレがなるわけもナイけどナ。
『エディには泣かれたけど。―――でもね。オレが納得して決めたコトならいいよ、って。言ってくれたんだ』
「よかったな、ベイビィ」
『シャーリィはゾロに会いたがってた。コーザがいいヒトだから、きっとゾロもイイヒトだろう、って』
暫し絶句。
温度が違うゾ?
「肝心のエディは?」
『ゾロが会いたいなら、会うにはハヤブサじゃないって。意味ワカンナイんだけど』
「…やぶさか、じゃないのか?」
『うーん、ソレかな?』
ゾロ、いつあえるかなあ、と。
安心してうっきうきな恋愛モード全開のサンジとは、それから直ぐに通話を切って。
最後に報告、オレのアイジンから。
『セェト。あンたの家族、いいね』
優しい声。
『気持ちの良い人たちだった、会えて嬉しかったな』
「…うん。オレも好きだよ。自慢の家族」
穏やかなコーザの声に返した。
若くしてオレを生んだ母と。
オレがいることを承知でその母と結婚した義父。
いろいろと、あるけれど。そこにはちゃんと、愛があるしね。
いろいろと考えかけたオレを引き戻したのは。
軽い口調になったオレのアイジンからのコトバ。
『思わず、息子さんを下さい、って言いかけたヨ?』
ここにいない方の、だってサ。
「親に訊く前に、オレにまず筋通さないとなァ?」
からかって返した、軽口。
『ダァリン、だから黙ってたサ』
楽しそうなトーンの返答に笑った。
「ま。オレとも一緒に帰ろうぜ?シャーリィのデザートは絶品だったろ?」
ディナーが、と言えないところが辛いけどナ。ママ・リディのディナーは美味いケド。
あァ、って笑ったコーザに言った。
「オマエが”大使”なんだろ?ウチへの」
『暗殺されない限りね?なにしろ反政府分子』
「言ってろ。オレといる間は、オレのスポンサでダチでいいだろうが』
オマエが革命家じゃねェだろうが、と笑って返した。
『あ、アイジンっての抜かしたなー』
けらけらと笑っているコーザに、笑う。
「シャーリィはオッケイでそうだけど。エディの心臓が停まったらシャレになんねーからな。折を見て?」
半分ジョーク、だしな?
『ン、その内また行きたいな』
優しい声、押し付けがましくないソレ。
イイトーンだ、…電話越しでも。
「行こうぜー?オレが誰か連れて帰るのなんて。ほんと…親友のカメラ馬鹿以外、いねェし」
そういやカノジョも連れて帰ったことなかったなァ…どっかで長続きしないこと、予感してたンかねえ?
『アイジン冥利に尽きるよ、ダァリン』
からかう声が、すう、と真剣に戻った。
ン?
『天使チャン。―――あのバカがどうにか連れて行けるみたいで。ありがたいよ』
そう言って。じゃあ、って言ったっきり、さっさと切ってた。
ふン、言わずもがな、ってか?
ダメって言われても、オレの天使チャンは愛するヒトのところへパタパタ行っちまう、なんてことは。
あーあ…くそう。
寂しくなるなあ、ベイビィ。
前みたいに。
『セート!どうしよう!アメフトの試合で、チアリーダで出ないか、って言われてるんだけどさ、オレにそんなこと言われても
困るよう』
なんて、おいおい、って思わずツッコミ入れたくなるような相談事、なくなっちまうんだろうなぁ。
親離れはカンタンだったのにナ。
弟離れはそうはいかないって。どういう理屈だろうなァ?
はー…まぁ。
アイジンに構ってもらうか。
ベイビをあれの従兄が持ってっちまう分。
―――ん?今日何日だ?…ルフィ、出てくるかな。
オマエの従兄、すげえマダムキラーだって、教えてやらなきゃな?
アイジンがダメな時は、ルフィに構ってもらおうっと。
間違ってもミハイル・ヴラディミロヴィッチ・ウスティノフみたいに。
『セト、オレの王子!オレの両腕に抱かれて特設ステージに立ってみないか?』とかアホみてぇなコト言って。
オレの青筋立たせるようなこたぁしねェだろうし。
さっそくコールだな。
ハハ、いい友達をアリガトウ、オトウト。
いいアイジンは、もちろんのコト。
オマエがベイビィのダーリンでなけりゃ。結構いいダチになれたかもしんねェのになァ?
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