備え付けのバスローブを羽織って、タオルで髪を乾かしながら部屋を覗いたなら。
ベッドの真ん中で、リーシュを外してもらったエリィは長く身体を伸ばして。あぁ、もう――寝ちゃったか。

そして、部屋にはニュースキャスターの声がしてた。
ウッドのキャビネットの中から。ああ、テレビ、あそこに入ってたんだ。
ソファの肘掛にとん、と座って。
「タダイマ」
髪に口付けた。
オカエリ、と返されて。飲んでいたグラスを差し出される。透明なソレ。水。
受け取って、一口。

「コーヒーじゃないんだ?」
からかう。
「一日に必要なカフェインの量は摂取したと思うからな」
「美味しくても不味くても一緒っていうのがね」
同じように軽口で返されて。
笑いながらゾロの手に戻したグラスはすぐに脇のテーブルに乗せられ、する、と伸びてきた腕に肘掛から膝の上に
身体を持っていかれた。

「まだおれ濡れてるのに」
髪も濡れてるし、バスローブだって着たまんまだ、とわらう。
「オレのデザート?」
くく、っと笑い声。
見上げようとしたなら、項を吸い上げられて。言葉が唇に留まる。
指が勝手に、Tシャツの端を握りこむ。
肌の上、伝わった水滴を緩く吸い上げられていって、ゆる、と熱い感触が触れてくるのに息を呑む。
「―――ん、くすぐ…っ」

「美味いぞ、」
すぐそばで笑う声が低く響く。
きゅ、と。また耳元を吸い上げられて。短く息が零れてった。
快楽の欠片。逃すのか、捕まえるためか。

「―――風邪引くな。ちゃんと拭いてやろうか、」
「…いい、」
イラナイ、と返して。
笑って耳元にキスが落とされたあと。腕を回して抱きついた。
「しばらくこうさせてろ」
首元にカオを埋めてリクエスト。
柔らかにリズムを刻んで、背中を撫でられて。
願いが了承されたことを知る。

「明日はどうする?一応チェサピーク・ベイブリッジ・トンネルを通過して、最終的にはロング・ビーチまで行くつもりなんだが」
おれだってデザート貰うぞ、少しは。やんわりと肌に唇で触れながら。柔らかい声がやさしく語りかけてきてくれるのを聞いた。
「距離、どれくらい?」
やんわりと唇で食む。もうすっかり乾いている身体。

「ざっと換算して480マイルくらいかな」
ずっと、優しく背中を撫で下ろされてる。その感覚に笑みを刻む、小さく。
「10時間弱、走るぞ」
「―――広いねぇ、」
アタリマエの感想。これは、ハハオヤもよく言ってたっけ。ヨーロッパから来た人間らしく。

「ゾロ?」
「ん?」
声が勝手にあまえてる。
自分でもわかる。
「明日は、じゃあ。おまえのこと貰ってもイイ…?」
「As you wish, my dear」
「Only my wish?」
ドウゾ、と。笑い声と一緒に耳元キスが落ちてきて。
それっておれだけの希望なわけ、と。あまえたままの声で返した。
「You really think so?」
ちぇー、と続けたら。なわけないだろ、と言葉。

「ゾロ、」
「ん?」
カオを少し上向けグリーンアイズをみつめた。
やわらかな、眼差しにまた感情が充たされてく。
「エリィがベッド占領してるから。一緒に寝てもいい?」
「ノーって言うわけないだろう?」
「うれしいような、複雑なような」

笑って、とん、と口付けられて。
煌めくグリーンに見惚れる。
そのまま、唇をノックされるみたいに。ゆっくりと触れ合わせて、柔らかに深かめていく。
何かに溶けいりそうになるのを、まだ濡れた髪を後ろに撫で付けられていく、掌の感触に引き留められて。
手指が、ゾロの肩口に沈み込む前に。
口付けが解かれて。ちゃんと乾かしてこい、と言われた。

「―――ちょ、と……無理」
く、と。
肩口にカオを埋めた。
きゅ、と抱きしめられて。くく、と間近でまた笑い声が聞こえて。
競り上がった鼓動が、収まりそうも無い。
わかってる、無理だってことくらい、跳ね上がった鼓動を収めようとしたって。
回されたままの腕に思った。
―――もういいや。寝るまでこうしてよう。




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