Day Two: Starting point, Georgetown, Delaware.
セミダブルのベッドで、サンジと一緒に眠った。
明け方冷え込む頃、隣のベッドで大の字になって眠っていたエリィも潜り込んできて―――いつもの通り。
目覚ましが鳴る前に、鳥の囀りで目が覚めた。
ぺたりとくっ付いてきているサンジが、腕の中で温かかった。
布団の中に入り込んで来て、足元で寝ているエリィの熱も。その柔らかな毛並みと共に、そこに在ることを示していた。
幾度となく感謝する。
まだこの温もりが、側に在ることを。
ふわふわと幸せそうに眠っているサンジの顔を、しばらく眺めていた。
ゆっくりと明るさを増すレースのカーテンを隔てた窓の向こう側。
長い睫が、伏せられており。R.E.Mの兆候は見られない―――もうすぐ、目覚めるか?
「………ゾロ、」
小さな声で、サンジが寝言を言っていた。
声に反応したのか、エリィが足元でもぞ、と動いていた。
「I'm right here, baby」
ここにいるぞ、とサンジに囁く。
くう、とますます額を胸元に押し当てられて、小さく苦笑。
「ベイビィ、外はいい天気だ。旅行日和だぞ」
トン、とアタマにキスを落とす。
「――――ゃ、」
「折角なのに?」
寝惚けているサンジに笑って、頬を撫でる。
暖かな体温。
きゅう、と眉根が寄っていった。
「起きないと朝食代わりにオマエを喰うゾ」
笑ってサンジに囁く。
「―――――んン、」
もっと顔を埋めてきたサンジの髪に口付けを落とす。
「起きろ、サンジ。いいコだから」
ふう、と甘い吐息がサンジの口から零れていく音が聞こえた。
さらさら、と髪を撫でてから、布団から出ている腕をそうっと辿る。
「…ん、」
甘えた声が聞こえる。
「起きろ、サンジ。キスできないだろ?」
笑って指先まで辿り、指を組む。
きゅ、と指先を握り返されて笑った。
「朝飯、食いに行くんだろう?」
「―――――――んぅ、」
サンジが首を横に振っていた。
横向きになっていた体から腕を上げさせ、それからゆっくりとリネンに倒す。
エリィがその動作に起き出し。
ゆっくりと布団の間から出てきた。オレの胸のすぐ側から。
エリィが通り抜けていってから、サンジを上から覗き込む。
「チビはもう起きたぞ?」
すう、と寝息に半分戻りかかったサンジの唇にキスをする。
柔らかく綻んだその場所を啄ばむ。
ゆっくりと、ゆら、と揺れる蒼が覗いた。
「おはよう、ベイビィ」
ちゅ、とまた口付けを落とす。
きゅう、と首に両腕が回されて、ゆっくりと体重を落とす。
甘い吐息を零したサンジの耳に直接口付けてから、声を落とす。
「起きろ、サンジ」
ぴくん、と僅かに跳ねたサンジに小さく喉奥で笑う。
「朝飯、食いはぐれるぞ?」
「――――…ォロ、」
おはよ、と消えそうな声が聞こえる。
「おはよう、ベイビィ」
ますます身体を引き寄せられて、笑った。
「良く眠れたみたいだな?」
「―――――――――ろ、」
「ん?」
さらさら、と髪を撫でてやる。
指から零れるたびに、知らないシャンプーの匂いがする。僅かに甘いローズ。
きゅう、とくっ付いたまま伸びをしたサンジの額に口付ける。
ふにゃん、と目を瞑って笑ったサンジの唇にもキスをする。
微笑んだ仕種に、目覚めを確信する。
「―――あさ…?」
「そうだよ」
甘ったれた声に柔らかく頬に口付ける。
「外はいい天気だ」
「喰ってくれないの、」
ふにゃんふにゃんに笑っているサンジの耳の下を啄ばむ。
「喰っちまったら朝飯抜きだぞ?」
エリィが小さく鳴いていた。
「どっちとるの、」
小悪魔みたいな表情を浮かべ。くっくとサンジが笑った。
「チェサピーク・ベイブリッジ・トンネルを寝て過ごしてもイイっていうなら、喰っちまおうか」
カリ、と耳朶を緩くピアスする。
「んっ」
くすぐったそうにサンジが身をよじった。
声が甘さを含んでいる。
「ロング・ビーチまで行かないで、ロッキーの麓辺りで泊まるとか?」
くくっと笑う。
「任せ―――っる、」
吐息にびく、と震えたサンジの耳に口付ける。
「オマエはどうしたい?」
エリィがまたベッドの端で、みぁ、と鳴いた。
サンジがぎゅう、と一度強く目を閉じていた。
「Baby?」
促す。
「起こして、」
甘えた声に笑う。
「オーライ。バスルームまで運ぼうか?」
きゅう、と抱きついてきた。
Answer, Yes。
「なら行くぞ」
身体を横にずらしてから、横向きにサンジを抱え上げる。
サンジの腕は強く首に巻きついたままだ。
背後、トン、とエリィも床に下りる音。
カーペットに足音を吸い込ませ、先に歩いていく。
「オマエの朝ごはんはちょっと待てな、エリィ」
声をかけて、バスルームに連れて行く。
バスの中のタップに片腕を伸ばして、湯を流し始める。
腕に当たる素足の熱さにヨテイヘンコウの文字が僅かにちらつく。
ゆっくりと湯気が立ち始めるのが見え。
結局裸で寝たサンジを、そうっと湯船に立たせる。
「美味そうだけど、夜まで頑張ろうな」
ゆっくりと見上げてきたサンジに笑いかける。
「ロングビーチで丸1日過ごそう。波音の聞こえる場所で」
すう、と首を傾けたサンジの唇に口づければ。
「うん、」
そう言ったサンジが、ほわ、と微笑んでいた。
「目覚めて出て来い」
さら、と髪を撫でてやってから、バスルームを後にする。
「ひとりはいやだよ、」
「チビにゴハンやったら戻ってくる。それくらいは待てるな?」
ドア口で両足をそろえてちんまりと座って見上げてきているエリィを指差す。
バスタブの中に座り込んだサンジを振り返る。
「んん、」
縁に後頭部を預けての返事。
そのまま沈みそうな勢いのサンジに、苦笑する。
寂しがり屋の恋人は、とても素直だ。
「急いで支度してやるが、オマエはゆっくりと食えよ」
すりすりと足元に懐いてきたエリィを促し、ドライフードを皿に出す。
水もボウルに入れてやる。
「今日もロング・ドライヴだからな。腹八分だぞ?」
みあ、と小さく鳴いてから、かつかつかりかりと食べ出したエリィの頭を撫でてやり。
それからざあざあと水音の止まないバスルームに戻る。
「サンジ、起きてるか?」
Tシャツを脱ぎながら訊けば、サンジが閉じていた目をゆっくりと開けていた。
「―――…ぉはよ、」
ぽけ、と返事が返される。
まだ半分寝てるか…?
くくっと笑いながら、着ていたスウェットなども脱いで、バスタブに入る。
くう、と微笑んだサンジが、腕を伸ばしてきた。
膝を折ってサンジの反対側に腰を沈め。
サンジの身体を反対に向けて背中から抱き寄せる。
くたりと寄りかかってくるサンジの湿りを帯びた髪に口付けてから、手を伸ばしてバスオイルのボールを引き寄せる。
「なんの匂いだろうな?」
笑いながら2つばかり湯に落とした。
「きもちいい、」
とろ、としたサンジの声が響く。
「いい朝だな、」
上がってきた水かさに、足の指でシャワーを止める。
ふわ、とローズマリーの香りが漂い始め。
サンジが僅かに身体を捻り。肩に口付てきた。
火照って赤みを帯びた額にトン、と口付けを落とし。
するりと手を滑らせる、サンジの胸の上。
ひく、と揺れたサンジに笑いかける。
「もう少し、気持ちよくなっとくか?」
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