指先、それがまだジブンにあるのがわからない、リネンに埋めて。
熱いばかりの息を零して、水音を聴いたかとおもった。
何度も交わって、溢れて。なにもかもが限界を訴えて身体の節々から滴り落ちそうになるまで快楽だけに埋められても、
その先があるのを知って、泣いて。
水音、光に溢れた中でバスタブの縁、その陶器の白と、天上で水の輪が光に弾ける模様、それを見ていた、のかもしれない。
意識が戻る前は。
水を、手が力なく叩いて、水滴が散ってっていた、そのきらめきを覚えている。
幾度も。指先を、濡らしていく舌を、ゾロを、受け入れた場所…触れられて。引き出されていく感触に声に出せずにうめいて。
内を拓いていく意図のない指先、それでも。過ぎた快楽を味わったばかりの身体は熱くて。
柔らかく蕩けそうな中心が僅かに息づき始めて。
声、それが水音に紛れて意識に滑り込む。「まだ足りなかったか」、と。
熱い、なかに含まれて。泣いた、包まれる快楽に震えて。
流れる血さえ、どろりと滴りその先から沸騰していきそうに思えるのに、引き上げられていった。
はなして、と。切れ切れに泣いて請ったかもしれない、光に溢れそうな浴室でグリーンが、陽射しを取り込んでなおも明るく
見えたのを覚えている。
少しだけ浮かされた感覚に、安堵の息を吐く間もなく、「やだね、」と。唇が綴って、また息づいた中心を含まれていって。
溢れた蜜を深く嚥下されていくまで。短く、声を上げっぱなし、だったみたいだ。
だって―――喉、いたいよ。
くう、と。リネンに指先をまた埋めてみた。ただ、ぴん、と張った白が少し撓んだだけ―――
しろ。
アタマ、上げられない、重い。
記憶が絡まる。時間の感覚はとうに抜け落ちて。
さっき、きれぎれに泣いて、鳴いて。腕を伸ばして身体を引き上げようとしたとき。
縋ったソレは、深い赤をしていて―――
最初、受け入れたとき。ゾロの肩の下にあったのも、深い赤だった。跨がされた身体、繋がったままでおれだけ、零れて。
「―――――ん、」
アタマ、起こせ―――ない。
やだ、と舌ったらずな鳴き声で、言葉を洩らしていたのは、―――おれ、なのかな…
くう、と瞼が落ちてきそうな感覚にぜんぶを委ねたくなる。
もっと、と。ゾロの胸を掌で押して、涙を零して……繋がったまま入れ替えられた視界に眩暈がした。
肩、絹に押し付けて。高く引き上げられた下肢を深くまで穿たれて。また、涙を零した。快楽、呑まれて。
からかい混じりだった声が、不意に耳の底、蘇って。
それを齎されたときと、いまも。同じだけ息が苦しくなる気がした、「自分で動けよ、」低い、甘い声。
いわれずとも、揺らいだ腰。
波間に、溺れるように腕を伸ばして、縋りたくて。
深く、遡るほど熱を奥に受け止めて、意識が甘く揺らいで。
深くに、溶けいるほど奥、放たれた熱を感じて、溢れさせたとき。
もういちど、身体。溶けるかと、声。ゾロの、あまいソレがうれしそうに。言葉が身体を愛撫していった、「いいコだな、」と。
とうに掠れて、揺らぐだけの吐息が唇を開いていって。
舌先に、零した蜜の散った肌を濡らされていって、蕩けた場所に残った僅かな雫さえぜんぶ舐め取られて、切れ切れの声、
洩れていってた。
放ったばかりの熱、それがじわりとまた戻りはじめて、ジブンの貪欲さに震えそうになった。でも、
おぼれていいって、言ったよね、と。ゾロに泣き声でおれ、訊いた気がする。
答えは――――――
つき、と。
背中、すこしだけ痛みを訴えてくる。なんども歯を立てられて舌で辿られて、震えたことも。
「ああ、」と。甘い声、まだ耳に残ってる。そして。
目の前、深い赤の海が広がって。それが、リネンだとどこかで知って。
腕、その上につく暇もなくて。強い腕に掌に、腰を高く掲げられて。
激しく突き上げられて、嬌声、あげて。
内を熱く擦り上げられて、身体、揺れて。
快楽をしめす証しが、また零れていった、散って。
雫さえ熱い舌に掬い上げられて、肌を伝ったソレも舐めとられて。
煌めく翠を見詰めて、やだ、と涙を零した。強すぎる快楽に、震えたまま。
まだ、こぼす涙が残っていることが奇妙なほど。
伏せられた身体。肩から、背中を唇で辿られて、また鳴いた。
中心に手指を絡まされたままで、背骨の窪み、舌で擽られて。
「ンっ…ゃ、」
ほんの微かに掠れた声が、耳朶を擽った感触にまた震えて、手指を零れる蜜で濡らして。
「やじゃないだろ、」
「―――っぁ、ャ、ァ」
背中、撓んで。突いた膝も、崩れかけて。視界が色を無くしかけた。
高まりすぎた感覚が悲鳴を上げ始めて。
ゾロの、手の中に熱を零して震えた。
項、食まれて。
肌に牙を薄く宛てられただけで血が遡って。
ホシイ、とナイタ。
奥まで、熱を埋めてくれ、と。蜜を零しながら嗚咽交じりに…?
身体、引き下ろそうとして、背中のぬくもりに。
とろりと濡れていた奥、熱が掠めて。
リネンに、爪を立てた、
埋められる熱を予感して身体がまた熱を持って。
背中、唇を落とされて、奥まで埋められて。唇から、吐息だけ零れて。
望まれるままになりたいんだ、と声が聞えて、それはおれの声で。
サンジ、と。低い声、肌の下から響くように低い声に呼ばれた。
高められるままに、快楽に呑まれるままに、また蜜を零して。
ジブンのなかに埋められた熱が、また注ぎ込まれる熱さに容を変えていくのを感じ、眩暈がして。
引き上げられた身体が覚束なくて。視界が、明るいのに瞬きした。
陽射し……?
膝、うっすらと痕が浮かぶ、目の下にあって。―――おれの?
アタマ、反らしたなら。肩にあたる、ゾロ…?
耳元、洩らされた吐息の熱さに声が押し上げられていった。
「オマエ、キラキラしてる、」
どこか、笑いを潜めさせた声が間近で落とされて。
「あぅ、ん」
内を押し上げてくるものに鳴いた。
膝、勝手にリネンを踵が滑って引き上げられて。
膝裏、熱い掌、腕に。抱え上げられて、アタマのなかが白くなった。
「あ、ぁ、あァ、」
落とされるたび、零れ上がる濡れた音と。
揺らいだ陽射し、それが全部で。
内を充たされ、掻き混ぜられて。それさえももうわからなくて。
壊れたみたいに、喉からただあまい声が絶え間なく上がってたんだ、と思う。
ゃだ、と泣いても。それは意味のない音で。
はなして、と請うても、手も、絡みつく内も、声も。その逆を強請るだけで。
「もっと蕩けるんだろ、」
すべて、見越してそう問われれば。
嗚咽の合間から、熱い吐息に混ぜて頷いて。ゾロの名前を呼んでいた気がする。
快楽に塗れて、声を上げて。
腕に抱き上げられるのを感じていた。
そして、―――ゆらぐ温かな水と。
水音を聴いていたんだ。
「――――ぅ、」
甘い白の絹に指先で触れてみる。
息、長く零して。
――――ぞ、ろ……?どこ、だろ―――
瞼、下りてきそ…
する、と。
望んでいた掌、それがなにかを―――着せてくれて。
「ぁ、」
んん、だめ、身体うごかな…
リネンから引き上げられた腕、ゾロの背中に預けた。
唇、触れて。
「飲んどけ、」
声、届くより先に、唇を開く。
含まされる、水……?舌を絡めて、喉を鳴らした。
すう、と沁みていく。
あまったれた吐息が零れるのを聞いた。
ほのかな甘味と、酸味がすこしだけ意識を押し上げて。レモン、はいって―――
瞼、引き上げて
ぞろ、と。あまいだけの声が名前を模った。かさかさに乾いて、掠れた声。
ここにいて、と強請った。
「いいコで寝てろよ、」
さらさらと頬と髪を滑る掌に瞼を閉じそうになる、それを我慢してグリーンの柔らかな光を見詰めようと。
「オマエが起きる前には戻るから、」
「ぞ、ろ」
預けていた腕、それを降ろした。
引寄せたくて。
「寝ちまえ、」
瞼に、羽より柔らかに唇が落とされて。
すう、と意識が引き込まれる。
「夢なんか見ないで寝てろ、」
ささやきが忍び込んできて。
すき、と。ゾロに向かって言葉にするのと、眠りにつかまるのはきっとほとんど同じだったかもしれない。
離したくなかった指が、する、と落ちて。
「I love you, baby」
愛しているよ、
その柔らかな声の響きだけに、抱きとめられてた。
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