いつもより、ぼんやり度の激しいサンジの蕩けっぷりを、どこかくすぐったいような思いで見守った。
なにかを思い出したらしい、カオを真っ赤に染めている姿はなかなかソソル。
けれどまあ、いつもは引っ掻いてこないサンジが夢中で背中に爪を立てるくらいに激しいセックスで腹を充たしたわけだし。
サンジが放出するものを失くしてからも何度かドライオーガスムに導いて、その慣れない過度の快楽に結局は意識を失ったまま深く眠り込むまで喰ったわけで。
とろりとした目線で、もっと、と強請られてもなァ…応じるわけにはいかないだろ。
サンジが視線で追いかけてくるのは解っても、振り返らずにおいた。
どこか悔いているような眼差しだったけれども。
それは爪を立てずにはいられないような愛し方をしたオレの責任であるわけで。
確かに朝一でシャワーを浴びなおした時に沁みはしたけれど、それだけのこと。
久しぶりにそんな傷を作ったな、と。やはりどこかくすぐったいような気分を味わった。
“悪い男”―――自覚はあるわけで。
いくらサンジ相手に純愛に徹してはいても、それは今のこと。
サンジには言えないような過去も持ち合わせてはいるわけで―――だから、本当に。ただそれだけのこと、なのだ。
少し体力を取り戻させて。激しいセックスから回復させてやらないと、内が熱を持ちすぎてしまう。
こんなところで炎症によるダウンは避けたいしな。
冷蔵庫に、自分の分を支度するついでにサンジがいつ目覚めてもいいように切って冷やしておいたフルーツを取りに行った。
ラップを取り外してから、タオルを一枚取る。
フォークを持っていこうか考え、けれど身体を酷使させちまった分だけ甘やかすのも悪くはないかと思い直し、それは止めておいた。
たまには餌付けも悪くないよな?
最も―――いつも喰われてはいるわけだけれども。
自分の考えのロクでもなさに笑いながらベッドルームに戻れば。
へたん、と真紅のリネンの中に蹲るように座り込んだままのサンジが見上げて来ていた。
「少しはしゃきっとしたか?」
「んん、」
側に戻り、サイドテーブルの上にプレートを置いてから、隣に腰をかけた。
甘い蕩けたままのサンジの声は、果たしてどちらだと言っているんだかな。
サンジがそうっと肩に触れてきた。
僅かに身体を離していたから、カオを覗き込む。
「どうした?」
「ん、」
身体をまた少しずらし、背中に移動しようとしていた。
「見たいのか、オマエのアートワーク?」
笑って背中を向けてやる。
ゆっくりと肩甲骨に火照った指先が触れてきて。
そうっと唇が傷の横に押し当てられた。
「Pretty impressive, isn't it?」
結構イイだろ、と笑えば。
サンジが僅かに唇を浮かせ。
「ごめんね…こんどは、しないから」
甘く優しい声が、どこかしょげたように言ってきた。
「別に構わないさ。もとといえばオレの責任だし?」
「齧っちゃったし…ほんと、ごめんなさい」
項垂れた猫のような状態なのが解る。
声はほわほわとどこかまだ浮いたようではあったけれども―――さすがチビのマァミィだな。
「サンジ、それって、」
わざと言葉を区切る。
なに、と甘い声が応えてきて。
肩甲骨に額が押し当てられた。
「焦らされるのも、激しくキツいのも嫌ってことか?」
軽い声でからかう。
サンジの顔が赤くなったのが、押し当てられた額の熱が上昇したので解った。
「Which is it?(どっちなんだよ?)」
身体を浮かせ、サンジに向き直る。
「“もうしない”、って言わなかっただろ―――?」
目許まで赤に染まっていて、酷く愛らしかった。
金を掻き混ぜて、俯いた額に口付ける。
「じゃあもっとああいうのがいいんだ?」
サンジがますます赤くなり、耳まで染まっていった。更に顔が俯く。
「ベイビィ?」
返事を促してみる―――泣くか?
「おまえが―――」
消えそうにふわふわな声に、く、と頤を捉えて目線を合わせる。
「ん?」
ますます赤くなるサンジの蒼を見詰める。蕩けて潤んだヘヴンリィ・ブルゥ。
正午間近の明かりで見れば、それはきらきらと煌いて、宝石より美しい。
サンジがこくっと息を呑んでいた。
にぃ、と口端を引き上げてみる。
「気持ち良さそうだったもんな、オマエ」
途中までだったけどな。
最後の方は、辛そうでもあった。
そりゃそうだろ、出ないモン出せって強制的に刺激されていたわけなんだし。
「ぜんぶ、寄越してくれて。―――うれしかったよ…?」
そう囁くように言ったサンジがまた真っ赤に染まっていた。
くすくすと勝手に笑いが洩れる。
「刺激的なのは、またちょいと休憩してからな、ベイビィ」
とん、と口付けて、それで終了させる。
返事はイエスでもあり、ノーでもあるんだろうし。
「それより、ほら。午後はでかけるから、何か腹に入れろ」
すう、と腕が伸びてきて、とんと頬に口付ける。
「食わせてやるから」
耳元でささやき、ぺろりと耳朶を舐める。
く、と小さく肩が揺れ。潤んでまたオーラが艶っぽく蕩けた。
「なにを…?」
「オマエが食えそうなもの、括弧オレじゃない」
くくっと笑って抱きつかれたまま、サイドテーブルに手を伸ばす。
軽くタオルで手を拭ってから、一口サイズのメロンを指で摘んだ。
はむ、と肌を食んできていたサンジに笑って、ほら口開けろ、と告げる。
目許で微笑み、うすく唇を開いたサンジの口の中に、すい、と緑の四角を押し込んでやる。
「美味い?」
ぺろ、と指先ごと舐められて笑った。
目線は合わされたまま、咀嚼していく。
濡れた唇をぺろりと舐め取った。
甘い蜜が舌に広がる。
「もっと?」
吐息で笑ったサンジに訊けば、ブルゥがきらきらと煌いて。
「あまいね、」
そう言って目だけで笑っていた。
「じゃあ少し甘くないのを、」
笑ってグレープフルーツのカケラを押し込む。
きゅう、と蒼が僅かに細まり、爪ごと軽く齧られて笑った。
「オレがカトラリでは満足できませんか?」
ぺろ、とサンジの唇を舐めて囁けば。
「いちばんすきなのに、」
つる、と舌先が押し当てられて、軽く啄ばむ。
「グレープフルーツに負けたら、腹いせにしょっぱい水分を放出してやる」
息が少し零れていたのに気付かないフリをして笑う。
「ゾォロ、」
くすくすとサンジが笑った。
あん、と口が開いたから、舌を差し込んでぺろりと赤く熟れたような舌を舐めた。
蒼が蕩けたのにまた笑って、ダークチェリィを咥えてからサンジの口に押し込んだ。
サンジの舌がそれを押し潰す前に軽く触れてきて笑った。
顔を引けば、ダークレッドの果汁が唇を濡らし、それを軽く啄ばんで引き取った。
「過保護、」
「じゃないほうがいいのか?」
すい、と指先を引き上げられて、あむ、と含まれた。
舌先でそれを押し出し、甘えた声が応えてくる。
「やだ、もっと、」
「素直なコは好きだよ、」
笑って苺の蔕を摘んで、サンジの唇に押し当てた。
「素直じゃなくてもオマエなら、愛してるけどな」
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