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 「ピックアップが12台、ピックアップが――――15台、」
 I-10は、ほとんど景色に変化もない車線の広いままの道で。
 途中ですることといったら、通り過ぎる車種の数を数えるくらいで。
 「あ、っと。あれ?ゾロ、SAABは初めてだっけ?」
 ―――不毛だなあ。
 「2台目、」
 「オッケイ、SAABが2台、わあ、ピックアップが18」
 節に乗せてそんなゲームを続けて、ラファイエットに着くまでにはピックアップは27台になってた。
 
 I-10をラファイエットで一度降りて、ナビで適当に探した手近な公園まで約15分。
 エリィをバスケットから出してリーシュを着けさせて、ムッシュ・ロベール自慢のピクニックバスケットを持ってクルマから降りた。
 昼前の陽射しはそれでも眩しくて、少しだけ、空気がニューオーリンズのそれより、乾きはじめている気がした。
 ほんの、3時間も経たないくらい離れただけなのにね、あの街から。
 
 「ゾーロー、テーブルよりはグリーンがいいよね」
 ひょい、と隣を見上げた。
 「あぁ、その方がエリィもいいだろ、」
 「じゃ、あそこ。木陰だね、行こう」
 エリィを抱き上げてくれていたゾロの背中を軽く押した。
 なにしろ、おれはピクニック当番ですから。
 
 バスケットをグリーンに降ろして、その側に座る。
 脚に当たるひやっとしたグリーンがキモチイイ。
 きちんと閉ざされていたバスケットのフタを開ければ、ふん、とエリィが鼻を鳴らしたから少しわらった。
 「腹減ってるよなオマエも、」
 ゾロがそう言って笑って。
 「ドライブ中はおまえ、ドライだけな?」
 はいどおぞ、とまずエリィのゴハンをディッシュにざらっと開けて渡す。
 「オヤツ」
 くるくる、とエリィの目の間を指先で擽ってたなら。
 「ランチじゃないのか、」
 ゾロがますます笑みを深めていた。
 「朝、ちゃんと食べたしね」
 
 そんなことを笑って返して、バスケットの中身を見てみる。
 キレイに並べれらたサンドウィッチと、彩りのオリーブやマリネした夏野菜だとか。
 カジュアルだけど充分エレガントに「詰められて」いて。
 流石、センスがいいな、と感心した。
 「ハリィが居たら、絶対引き抜いちゃうだろうなぁ、」
 独り言。
 
 エリィのアタマを撫でながら、ヴァ―ミリオンで悠々寛いでたよなオマエ、やっぱり大物、そう笑っていたゾロが、すっと眼差しを
 あわせてきて。
 「テディが離さないだろ、」
 そう言って翠を煌めかせた。
 「んん?ハリィとテディって、親子くらい年違うのに真剣に喧嘩するからねェ。シェフの取り合いくらいヘイキですると思うなあ」
 笑いながら、バスケットをゾロに差し出した。
 生ハムのサンドウィッチをつまみながら、
 「けどまああのオトコはホテルがいいって言うだろ」
 そう笑みを声に乗せていた。
 「同感」
 
 マスタードの程よく効いた、これは―――クレイフィッシュだ、フライしてあるの。
 ポットからコーヒーをカップに注いで。これもゾロに渡す。
 「サンクス、」
 「どういたしまして」
 陽射しの下で、のんびりピクニックバスケットを広げいてる、なんてなぁ、驚き。
 セントラルパークでは、在り得ないこれは。
 
 オリーブも、ラタトウィュも美味しかった、サンドウィッチも、モチロン。
 そして、もうヒトツの小さくはない包み、籠に入ったものを開ければ。
 「――――こう来たかぁ、」
 わらった。
 焼き菓子の詰め合わせ。
 ピクニックランチの後にも、充分ドライブ中のブレイクになりそうなモノたち。
 フィナンシェ、ミルリトン、ガレット、これは―――リコッタチーズの香りがするから…ショソン・ナポリタンだな、ああ、プラリーヌも
 ある。
 
 「ほら、絵に描いたような詰めあわせ」
 「さすがフランス本国から来たシェフだな」
 「どうせいくならフランスの田舎がいいなあ、」
 ウシ天国にいくんだよなあ、おれ。と冗談で笑って。
 コーヒーを一口。
 「あ、でも」
 にっと笑みを刻んだままでゾロを見遣った。
 「テンガロンとカウボーイブーツ買って?」
 
 
 
 
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