一人で悪戦苦闘しているサンジを見ているのは。
尻尾の中ほどにセロハンテープかなにかが引っ付いたエリィが格闘しているのを見ているのに似ている。
よろ、と足を持ったままよろけ、そのままころんとベッドに転がって、ばたばた足をさせていた。
足を真っ直ぐに伸ばして、ほとんど額に着きそうなほどに伸ばしても、脱げそうにないらしい。
空になった缶をサイドに置いて、立ち上がる。
まあショートパンツから伸びた足の裏が魅力的とは言えるけどなあ。
どうにもセクシーさとは懸け離れて見える。
「んんんー、」
足を引っ張って唸っている姿が、どうにもカワイラシイからかもしれない。
暴れているサンジの足を捕まえた。

「んっ…?」
片膝をベッドのマットレスに預け、下からまん丸の眼で見上げてくる姿は、どこかエリィそっくりだ。
踵を掌で包み込み、足裏に手を置いてぐっと引っ張る。
すぽ、と抜けたクリィムのブーツを床に放り出す。
「ひゃ?」
「コツがあるんだよ、」
ますます驚きを隠せないでいる蒼を見下ろし笑う。
反対側も同じように手をかけ、すぽっと脱がす。
「わ、」
「オツカレサマ、」
トン、と抱えたままだった足の爪先に口付けてからベッドに下ろさせる。
フロアに下りて、ブーツを揃える。

えい、と腕が伸ばされ、視線を遣れば。きらきらと眼を輝かせながら、
「なんでだ?」
そう言ってくる。
「あんなに踵にくっついてたのに」
背中越しに見ていたのを、前に向きを変える。
「だから踵をしっかりとホールドすれば脱ぎやすいだろ?」
くしゃくしゃと髪を掻き混ぜる。
「おれもしてたよ?」
蒼が細められて笑った。
「練習あるのみ、だな」

腕が首にかけられ、えいっと引っ張られた。
そのままサンジの横に手を置き、押し倒す格好になる。
素足が腰辺りに掛けられ、苦笑する。
「ベイビィ?」
「なぁん?」
にこ、と笑っていたサンジの蒼を見詰める。
「なに考えてる?」
「なんにも??」

蒼がどこか黄色味を帯びた部屋の光の中で煌く。
「おまえが好きだなってことのほかは特に」
両脚がかけられ、笑って体重を預ける。
顔を金に埋めれば、ブーツ脱がせてくれるし、と笑っている声がした。
「かわいかったけどな、」
「戦いが?」
きゅう、と背中を抱き締められた。
「あぁ」
耳の下に軽く口付ける。
「ノーコメント、」
声が僅かに笑った。

「――――――なぁ、」
「ん?」
金の髪を片手で梳く。
「苦しくないか?」
「気分イイ、もっと潰せー?」
少し顔を向けようとしていたのをからかうように頤に口付ける。
声がくすくすと笑う。
く、と思いを飲み込む―――解りきっていること、いまさら疑いはしない。心底愛されているのは骨身に染みて知っている。

「実は、体脂肪率が上がった」
くくっと笑う。
「旅は解放的にさせるからな、」
口真似で返されて、また笑った。
足がきゅっと力を増す。
「5.7くらいだったのにな、」
ワザと溜息。
「それで泳ぐなんて奇跡」
カラカイ口調が告げてくる。
「浮く必要はないからな?」
低く笑って耳朶を軽く唇で辿った。




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