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 インターステート10に乗って、ほぼ380マイル。
 時間にして6時間、途中、朝ご飯とランチを食べ、休憩しながら、エル・パソに到着した。
 エル・パソはニュー・メキシコにある最も古い町で。スパニッシュ・メキシカンの影響が強く出ている場所だ。
 確かスペインの征服者たちがここに到着し、リオ・グランデに入る北側の道、El
      Paso del Rio del Norte と呼んだのが街の
 名前の由来になったと何かで読んだような気がする。
 
 「空の色がものすごい事になってる気がする、」
 サンジが窓から外を見上げて、空よりキレイな蒼を煌かせていた。
 「車から降りる前にもう一度塗っとけ」
 日焼け止めのボトルを手渡した。
 「ビーチに行きたくなるね」
 砂漠の中の街であるからして、現在の気温は多分華氏90度を越しているのだろう。
 「ビーチどころじゃないかもな、」
 さらさらと日焼け止めを塗っていたサンジが、あまっていたのを頬に塗りつけてきた。
 「なんで」
 「オレはもう塗ったぞ?」
 笑って日焼け止めを伸ばす。
 
 「触りたいからだョ」
 「ここ一週間のアヴレージとしては、まだ足りないくらいだな」
 笑ってサンジの頬を撫でる。
 「んん?ビーチが?」
 「そういうこと言うか」
 にこお、と笑ったサンジの頬を軽く指で摘んだ。
 「ま、これからいやというほど、砂塗れにはなるぜ?」
 テキサス、ニュー・メキシコ、アリゾナ―――砂漠へようこそ、だ。
 
 停めた車の中で、外に出る前にエリィに水を飲ませておく。
 この時間帯にエリィを車に入れっぱなしにしておくことはできないので、飲み終わったところでリーシュを着けさせる。
 「おまえが抱いてく?」
 サンジが見上げてにこっと笑い。軽く頷いて返した。
 「うあ、冗談だったんだけど、」
 「へえ?まあいいさ。な、エリィ?」
 みぁ、と返事が返され。
 支度を終えたエリィが運転席に回ってきた。
 抱き上げてから、サンジに車を出るように促す。
 「サングラス忘れるなよ」
 「うん、」
 
 サンジがサングラスをかけてから、するりと車を降りた。
 エリィを抱えたまま車を降り、ドアにロックを掛けてアラームをセットする。
 「サイフすられるなよ、」
 サンジに言い含めて。エリィを抱いて街を歩き出した。
 「だーいじょうぶだよ、」
 サンジがほつれて穴の開いたデニムのバックポケットから指を出してひらひらとさせていた。
 「エリィがじいっと見てるぞ?」
 くるくると喉を鳴らしていたエリィの視線の先がサンジの指先に当たっていた。
 「離したら襲われるからしっかりな」
 「まさか襲いはしないだろ」
 に、と笑って更に指をひらひらとさせながら言ったサンジの頭をくしゃりと撫でる。
 「ほら、前見て歩けよ」
 背中をぽんと押して、白い塗り壁の教会を指し示した。
 
 
 
 
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