1時間ばかりエル・パソのクラシックな建築物や、スペイン・メキシコの影響が大きいショップなどを眺め。
途中のカフェで軽くスナックを摘んでから、車に戻ってインターステートに戻った。
I-10がI-25と名前を変え。
始終機嫌のいいサンジがふわふわと幸せそうなのに小さく笑った。
エリィは暑い中での散歩が辛かったのか、クーラを利かせたバックシートでくうくうと長く伸びて眠っている。
「アイスパック買ってやろうか、今度。エリィが上で寝られるように」
「上?」
ちらりとサンジに目線を遣る。
「シートに置いて、上に布でも敷けばきっとその上で寝るよ」
うん、と頷いたサンジに、クーリングマットでも?と提案する。
「あ、しまったそれがあるじゃないか」

けらけらと笑ったサンジをちらりと見遣ってから、視線を前に送った。
ゆっくりと太陽が傾きかけているのが解る。
「エル・パソで夕陽を見たかったか?」
「誰と、が大事なんだ、場所は二の次」
窓の外を見ながら、サンジが言った。
「そうだな、」
ちらりと笑って同意する。
「牛の真ん中で見たってかまわないんだョ別に」
くくっとサンジが笑った。
「次に向かっているソコッロという町には、National Radio Astronomy Observatory(国立電波天文台)があるんだ」
ゆっくりと車を走らせる。
「まったいらな所、」
「砂っていうよりは石みたいなものがゴロゴロしてる場所なのかもしれない。自然に囲まれた場所なのは、まあ言うまでも
ないな、」

サンジが、あ、と言って見上げてきた。
「そこって―――――あぁ、宇宙からの電波が全部入ってくる“皿”のあるところだ?」
「そう。でっかいディッシュのある」
頷く。
「映画があったね、たしか」
「ジョディ・フォスタ主演の、ポール・セーガンか誰かが書いた物語を映像化したやつだな?」
「さすが、読書家」
「一応好きなジャンルには入ってるからな」

「じゃあ、きょうは、」
す、とサンジが笑顔を浮かべて見上げてきた。
「星が良く見えるところに泊まろう、」
「―――オレはいつでもよく見えてるけどな、」
に、と笑って目を煌かせていたサンジの頭をくしゃりと撫でた。
浮かせた手をサンジが一瞬捕まえ。指先に口付けてきた。
そうっと柔らかく唇が触れる感触に口端を引き上げる。

「凄い台詞だね、ソレ」
優しいサンジの声に軽く肩を竦める。
「オマエに見せてやれないのが残念だ」
「もっといいものを見れてるからいい」
「ふン?」
くくっと笑ってサンジの手を軽く握った。
「今夜はどうしたい、サンジ?」




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