陽が落ちてから1時間近く走って、ソコッロの街に入った。
ワインが飲みたい、と言い出したおれのリクエストを聞いてくれたゾロは途中で大き目のリカーストアを見つけて。
おれもついて降りようとしたなら残っているように言われた。
イタリアよりはフランスがいい、とだけリクエストして待つ事にした。
夜空が広い、パーキングから見上げる。マンハッタンで見るときと比べて、星の数がこんなにも違う。
戻ってきたゾロに細長い紙袋を渡されて、中をみれば赤と白。
ワイングラスまで入っているのに笑った。
「さすが!」
トールグラスで飲んだんじゃ、味も半減だもんな。
「ホテルはなさそうだもんね、この街の様子だと」
「モーテルだけだな」
観光地でも商業地でもなく。
メインストリートらしいものはあるけれども。すぐに住宅地へと続いていく。
「またコイン?」
「ああ、リトライだ」
笑う。あれはあれで面白いけどね。
「あ、」
流れ星のネオンサインを見つけた。
「天文台があることをアピールしてるあそこにしよう?」
指差す。
「オオケイ、」
Stardust Inn、とあるそれは。背が高いサインで。離れたところにあるのは―――
一つ一つが半分独立したようなバンガローとログハウスの中間じみた建物だった。
「星が見えそうだろ?」
すう、とクルマがモーテルに向かって左折していく。
「そうだな」
「またおれはパーキングで待機?」
「そう。できるだけオマエを隠しておきたいからな」
バックシートのエリィを起してバスケットに入れさせていたら、そう返事された。
「おや。ホワイトハウスのイースターエッグ探しのコドモ。世界中に流れたけど、昔。撮られてて」
すい、と自分を指差して笑う。
「ハリィが、親戚中から怒られてたよ。誘拐されたらどうする気だ、って」
「今のオマエじゃないだろうが」
「10年以上前だね」
パーキングにクルマが停められた隙に、頬へ軽く口付けた。
「ありがとう、お疲れ様」
「少し待ってろ」
「いい子にしておりますとも」
な、エリィ?とバスケットに手を伸ばす。
「That's my baby(さすがオレのいいコちゃんだな)」
「シートの下に隠れたりなんかしないから、大丈夫」
笑う。
ゾロが降りていって、また静かになる車内に残される。
フロントガラス越しにも、瞬く星が拡がっていて。流れ星でもみつけられそうに思えてくる。
「あぁ、そうだ」
思いつく。
フロリダのビーチサイドで夜の散歩をしたけど。あの時はおれはかなり気分良くハイだったから。
きょうは、ゆっくり星でもみようかなぁ―――。
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