“ド田舎”のモーテルは、極度に寂れているか、場違いにハデだ。
観光客が滅多にこない場所では寂れているし。
ここソコッロのようになんだかんだと若者が多ければ、アトラクションのひとつと換算されるからなのか、遊び心のあるモーテルが所々に出没する。
“スターダスト・イン”は背の高いバンガロゥタイプの1階建ての建物で。全個室にガラスのルーフがついているのが売り物だという。
流石に電波天文台があるだけに、比較的騒音とは無縁な土地で。それだけに人口や人工物のアトラクションも少なく、従って
スカイスクレーパなどに邪魔されずに星空が一望できる。
その上アパッチ族が管理するナショナル・ワイルドライフ・レフュージの他、3つのナショナル・フォレストがある。
ソコッロに遊びに来る人間は自然の中で遊ぶのが好きな人間が多く。
大学の町でもあるので、寂れとは程遠く在る“整った田舎”だと判断できる。

チェックインの手続きを済ませ、サンジを伴って部屋に入る。
建物は比較的新しく、内装もどうやらキレイなようだ。
一通り見て回っている間にサンジは天井の窓を見つけ、おおはしゃぎだ。
「星だらけだよ…!」
「以外と悪くないな」
モーテルとはいえ、アコモデーションの品揃えも悪くはない。

しばらくぼーっと星空を見ていたサンジが、アンパックを始めていた。
「明日ここを発つからあんまり出さなくていいぞ」
「んん、」
ワインを立たせ、ワイングラスを洗いながら言えば、そんな返事が帰ってきて笑った。

サンジが明日着る服などを揃えてくれている間に、買ってきておいたチーズやハムや果物などを冷蔵庫に仕舞う。
晩御飯はモーテルに入る前、町のカフェで軽く食べたから。あとは適当に腹が空いた時にでも食えばいい、と思って買って
おいたもの。
エリィにはウェットフードをプレートに出してやり。カツカツ、と音を立てて食べていくのを暫く見守った。

服を出し終えたらしいサンジが、する、と隣に立つ。
サンジの肩に腕を乗せて、エリィがゴハンを終えるのを一緒に見詰める。
「なあ、サンジ」
すう、と蒼が見上げてきた。
「明日、グランドキャニオンの方まで足延ばすか?」
「うん、行こう……?」
「オオケイ。どうせだったらあっちで1泊するか、」

とん、と耳の横に口付けてから、腕を解いた。
にこお、とサンジが笑う。
「ルート66に乗れるぜ?」
に、と笑いかける。
「うあ」
Get your kicks on Route 66と節を付けて歌う。
「それじゃあオープンカーにしないと、」
笑ったサンジに肩をすくめた。
「日焼け対策が大変だぜ、きっと」




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