「あっ……んん、ん、っ、」
喉を反らせて、息を取り込む、押し出す、その全部に音が混ぜ込まれて。
引き上げようとした腕が、絹の重さに引き摺られるかと思う、そんなことは在り得ないのに。
前が解かれて身体の両脇に滑り落ちた赤は、乱れて拡がってる、
「―――ゾぉ、…ろっ」
深くまで一度に内を埋められ、リネンを指先で引き結び。声が跳ねて。
それでも、距離のある身体がもどかしくて腕を伸ばそうとしても。浅い位置まで熱で擦られてただの嬌声が上がって。
「ぁあ、…っぁ」
濡れた音が被さるように消していく。
「―――ォろ、」
切れ切れな声が熱にウナサレタみたいに、聞こえる。
擡げようとしてた首、だけど。
あれだけ欲しかった半身、その空気を介しても体温が感じ取れるほどに近づいて腕を回そうとした、けれど。
耳朶に吐息を感じて、それだけでも背骨が軋むかと思う。犬歯を鋭く立てられて、下肢まで身体が跳ね上がる。
「ッあぁ。ア…っ」
溢れるかと思う、快楽の中心を抉るように穿たれて何もかもが溶け落ちる。
いつのまにか胸につくほど引き上げられていた脚が強張り。自由になる片方がリネンの上で踵から引き攣れるかと。
身体の間で熱く濡れる、腰から下が捩れてく。捩れた先から溶け落ちて滴るかと思う。
目が、ゾロを探して。
突き上げられて顔が上向いて、目に光が飛び込んでくる、無数の白い点が暗色に散ってる。
喘いで、視線を揺らし。まっすぐに深く見詰めてくる翠を探す。
すぐに見つかる、それに。笑いかけようとしたけれど、多分失敗した。
背を抱きしめようと片腕を回したけれど、それさえも滑り落ちそうだ。
だけど腰が揺らいで。鼓動より大きく快楽にアタマのなかを掻き回されて、震えた。
ぱし、と視界がフレアに覆われて。
押さえ込まれた下肢に信じられないくらい、深く熱があたり。声が息より先に引き上げられていって。
息の合間に熱が弾けていく、声が途切れそうに喉もとまで競りあがって。達したのに、奥まで穿たれて。意味なんかとうに
無くした音が唇から零れて、熱を注がれた身体が押さえ切れないくらい震えて。
何かに縋り付いていた、無茶苦茶に。
それが、回された腕なのか、わからないけど。
抱きしめられていることを遅れて知って。
声が聞こえる、口付けを強請るそれは。―――おれの声で。
喘ぐように薄く開いた唇に重ねられる。
首に縋りつくように片腕を回して。
背中で絹が滑ったのを感じる。
浅く呼吸して、
唇を寄せて。そのまま囁く。
だけど、音に仕切れずにまた啄ばんで、息を呑みこみ。
翠を見詰める。
「――――――ぁ、あ…ぅん、っ」
反らされない翠に見詰め返されて。身体から熱が引き出されていく、それに内が絡むように引き摺られていくのも酷く鮮明に
伝えられて。
喘ぐ、濡れた音と、同じくらいに濡れた声だ。
ふわ、と微笑むんだゾロが。顔を落としてきて。頬に口付けを柔らかく落としてくれた。
「―――ゃだ、」
離れていく身体が寂しくて、抱きしめる。
身体のうちからも抱きしめることができれないいのに、と脈絡もなく真剣に思う。
「風呂、もう一回入るだろ?」
「まだ、」
甘やかすような声に返す、短く。
「まだ?明日もドライヴだぜ?」
「ちゃ……」
笑い声がすぐそばで聞こえて。顔を向けようとするより先に。耳朶を舌先で擽られて声が千切れる。
「ちゃん、と、起き……」
言い足す。
「―――ぞろ、」
両腕を回そうとしたなら、さら、と絹を腕から抜かされて、身体を起こされて、するりと抜け殻みたいに落ちていった。
背中に腕を回す、触れてくる肌が気持ちいい。
直に背を抱きしめられて、唇が重ねられ。瞳をできるだけゆっくりと閉ざす。
静かに深めていく合間に、
「もっと?もういい?」
囁きが落とされて。
舌を深く絡めて、掌で頬を包み。返事の代わりにする。翠を見つめる。
我侭、きいてくれるならいい。
あまく食んで。混ぜ合わされたものに喉を鳴らして。軽く啄ばまれて微笑む。
「―――もっと、なぁ…、」
頬に頬を寄せる。
「―――…どっか、おかしいのかな、…おれ」
どのポジションがいい?と低い声に訊かれて応える。
問いかけの答えじゃないのはわかってるけど。
「気持ちと身体がリンク強すぎるのかな、」
くう、と。もっと身体を引き寄せあう。
する、と抱き寄せられて吐息が漏れる。鼓動があわさる、体温が混ざり合う。
耳元、口付けて。声にする。
「おまえが、いいのが良い、ほんとうなんだ」
next
back
|