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 エリィを抱えたままトランクの前に行く。
 喉を上機嫌で鳴らす音が続いていて、
 「オマエは暑くてもコレだけだね」
 毛皮に顔を埋めてみる。
 「刈ってもらうか?」
 くっくと笑うゾロの声に振り向く。
 「ダメだよ、ますます謎の生き物になる」
 ひょい、とエリィの前足をゾロに向かって動かしてみた。
 「この家の住民はダレも驚かなかったけどな」
 ゾロは手早く着替え始めていて。
 
 「ゾロ、」
 見上げてみる。
 「んー?」
 「トレッキング?」
 「車で行けるところまで行って、後は多分歩きだろ。観光用のシャトルバスにチビを乗せたくはないし」
 リムの方を見て回るのなら、そうだよね。
 「んー、」
 「日差しがここはずいぶんと強そうだから、服はちゃんと選べよ」
 「なぁー、」
 家を出る前には日焼け止めローション塗っていこうな、といっていたゾロに向きなおる。
 「んー?」
 「Tシャツとハーフパンツでオーケイ?」
 「アウト」
 「あう、」
 あっさりとNOを言い渡された。
 「ハーフパンツはやめとけって言ったろ?キャニオントップまで行けばかなり涼しいはずだし」
 
 「これくらいなら?」
 スーツケースから半端な丈に切れたヤツを取り出してみた。
 「それにスニーカ合わせるのか?」
 「うん」
 「トレッキングっていうよりはクラブキッズだな」
 「んー、まぁ、おれだし?」
 に、とわらってみる。
 これはじゃあ、オーケイってことだな?
 「一応長ズボンにしとけ。変に日焼けしたら辛いぞ?」
 ―――――う?ダメか。
 
 Tシャツに、ローライズのデニム。
 そのあたりに落ち着いた。
 「おまえだってさあ?」
 ゾロを指差してみる。
 「なんだよ?」
 ブラックデニムにTシャツの”ニーサン”が返事してくる。
 「キャンパーには見せません」
 「まあな。せいぜい観光客どまりだろ」
 に、としてくるゾロに眉を片方引き上げてみせた。
 どこの誰が何に見えると仰ったか?って顔を作ってみる。解かっていてわざと軽口でそういうことを言って来るンだかな、
 まったく。
 「いっそのこと、上脱いじゃいなよ、ハーリウッドスタイル」
 とん、とキスしてわらった。
 「No way」
 「”ダァリン、きっと素敵なのに”」
 頬をふに、と突付かれてまたわらった。
 
 「オマエだけが知ってればいいさ」
 「知られてるくらいなら我慢するけど?」
 「ばぁか」
 そもそもおれだけのだって解かってるし、と続けてから。手をつかまえてキスしてみた。
 「ばぁかでケッコウ、」
 「愛してるよ」
 「ウン、」
 ――――やっぱり、好きだっていう気持ちや愛情に上限なんてないんだね。
 
 「目が覚めた、アリガト」
 わらって、ゾロに軽く口付ける。
 「どういたしまして。さあ行って朝食の支度でも手伝うか?」
 「じゃあ、この家の人たちに。朝の挨拶しないとね?」
 同じようなことを同じタイミングで口に出して。
 翠の目が煌いたのに、笑みで返す。
 「愛してるよ、ゾロ」
 さて、朝の手伝いだな。
 
 
 
 
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