Day 18:Los Angels
起きる、と呟いた声はほんの少しだけマシになってた。
ぴったりとくっついたままだったけど、言ってみた。眼、開けて無かったけど。
のんびりした風に、ん、とゾロの声が耳に届く。
昨日、眼が覚めたときに比べれば随分と身体はラクだけど。
くう、と。ゾロに腕を回してみる。
「ちゃんと、おまえさ……?ディナー、食べれたの」
実を言うと、昨日の暗くなってからのことはあまり記憶が確かじゃない。抱きしめられて、柔らかな音に包み込まれていたことは、熱で惚けた頭もちゃんと覚えていたけど。
「食べたよ、」と。静かな声が返される。
「んー……?マスカットとか……?」
唇に押し込まれたつるり、とした果実のことは少しだけ、覚えてる。
「―――あ、」
思い出した、
「おまえ、おれのこと怒ったろ。シャンパンとイチゴくれ、って言ったら。額、ごちってやられてなかった?」
くく、と。ゾロの肩に額を押し付けて笑った。
そうしたなら。
「それはヤッテナイ。鼻は噛んだけど」
そんな返事で。
「−−−うわぁ、」
く、ともういちど額を押し当てる。
「もう、熱下がったと思うんだけど」
どうかな、とゾロの背中に掌をあててみる。
「あー……そうだな。極めて平温だな、」
笑みと一緒にあっさり肯定された。
「んん、でもな?」
「うん?」
さら、と髪を撫でられて息がゆっくりと漏れていく。
「ちょっと、まだ。本調子じゃないかも、」
ゾロの指先が、肌に触れる先からふわ、と感覚が揺らいでく気がして。
「フラフラしてンのか?」
翠が、おれのこと覗きこんできて。
外の明るさを少しだけ映しこんだ色味を、見上げる。
「んん、少しね」
フラフラっていうよりはさ、と続けた。
温かな指先が、頬を柔らかに撫でていくのに、また眼を閉じそうになる。
漏れていった息が甘ったるくなるのは、仕方がないよなぁ。
「フワフワ、かもしれない」
困ったね、とわらった。
「齧ったら溶けたもんな、」
「−−−−−−ゎ、ほんと……?」
かあ、と。勝手に頬の辺りが熱い気がする、や、いまさら、とか言われなくてもわかってるけど―――わぁあ、
勝手に眼ばっかりデカクなってる顔してたおれのこと、ゾロはなんだか笑顔乗せて見詰めてきてくれてるけど。
「−−−−ぁ、のさ……?」
く、と。喉の奥で声が掠れる。
「んー?」
指先が、身体が震えそうな場所を軽く触れてって。愛されることに、限度が無い身体が柔らかく先を強請り始める。
なのに、帰ってくる返事はどこか間延びしてるくらい、穏やかで。
「きの……、」
こく、と息を飲み込んで落ち着こうとしても、またあっさり触れてくる温かさにどうにか瞬きすれば、すぅ、と翠があわせられて。
「おぼえてないんだけど……、」
カオがもう、赤いのはわかりすぎてるくらいだ。
「ゾロ……?」
する、と。肌の表面を滑っていく指先に意識を取られかけて。
「んー?」
穏やかな声だから、余計―――
「あのな……?」
腕をそろっと抜いて。ゾロの頬のところ、ぺとりと引き合わせる。
掌で、その端正な輪郭をそうっと包むようにして。
そうしたなら、ゾロの片眉が先を促すみたいに引き上げられて。
「ちょっとまだ、首のトコとか痛い」
ふにゃとまた勝手に口元がわらってるんだと思う、自分でも。
「喰い足りねーな、」
「わ、ほんと?」
それって、一生、つきあってくれるってことだよな――――?
頬を包んでた掌をそうっと髪へ滑らせて。
言葉にしたなら、にぃ、とゾロが口端を引き上げた。
「なんだかな?いた、って思うたびに……」
どこかまだ寝起きでぼんやりした口調なのは仕方ない、よなぁ。
合わせられたままの翠が、煌いている様に見惚れてるし、おれ。
「同時、にね?ちょっとヤバイ感じ、」
ふぃ、とゾロの眼が細められる。おれの言葉の意味を追いきれない感じで。
「んん、なんかさ……。思い出すんだよね、身体。おまえの、」
息とか、唇とか、と。小声で付け足して。
くぅ、とゾロの笑みが深くなって。
「なにがヤバいって?イイことだろーが、」
「じゃあ、いま、」
同じ風にキスが欲しいって言ったら、それでもイイのか、と吐息に混ぜて訊いたなら。
笑み、”ステファノ”が浮かべてたような性質が悪いくせに魅力的なソレがちらりと浮かんで。
縋る指先から、力が抜け落ちてくような。深くて、息が追いきれずに喘いでもその先まで絡みとられる、そんな激しさのあるキスを受け取って。
薄く浮いた唇の熱が冷めない。
「ぞろ、」
声が縋る、みたいだ。
なに、と。言葉を押し込められる合間に囁かれる。低い、背を滑り落ちてくような声で。
「…だ、めっぽい、おれ……−−−」
「ふゥん?」
どこか意地悪く意味を問うような声、ゾロから。
「目ぇ、覚めちまったみた…ぃで。おまえのこと、ほし……、」
だぁめ、って笑うおまえの声聞こえそうだけど。
鼓動が早くなってく。
ちゅ、と。
唇を啄ばまれて。また、鼓動が競りあがる。
「ゾロ……?」
「もっとダメんなっちまえ、」
ふ、と。一瞬火照った体が弛緩して。
そのすぐ後に、倍以上の速さでまた熱くなった。
首に、両腕を回して、首元にカオを埋めた。
「ウン、」
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