「ゾ……ロっ、」
全身で縋れない代わりに、声が色を乗せて。
身体の奥深くから、熱くなる。
上り詰めていく快楽は、それでも酷く緩やかで、だけど感覚は冴えて。
金色に濡れた指先、が。くすぐるように奥にあるのも知ってる。
全身が、重くて、熱いのに。
高まりきらない快楽が四肢の全部を支配しかけて、ゾロの体温や吐息にさえも。飢えて渇いていく。

「ぁあ、ア、」
声が唇を突いて出て行く。
ゾロの唇が、首筋を辿って。痺れるように、深く奥まで波が伝わる。
「ッァ、」
歯をやんわりと、でも深く感じ取れるほどに強く立てられて身体の奥に火種が落とし込まれる。
き、もちぃ……、くら、と。酩酊する。
所有されていることを知らされて、嬉しいと思うなんてありえないと思っていたのに。
「ぁ、あ。ぞ、ろ…、」
痛みと背中合わせなほど、きつく肌を吸い上げられて。肩に、背に指先で縋りつく。
残されていく、肌に。痕が、きっと。
ぱしん、と。光が弾ける。
「んぁ、ン」
重ねられた身体がきもちいい、体温さえ欲しい。
身体の中心が熱い、濡らされて涙がこぼれそうになる、オーヴァフロウ。けれど、高められてく。

リネンを握り締めていた手が、肩から揺らぐ。
きり、と。埋め込まれる、肌に。ゾロのキバ。
くらくらする、指先が奥に塗りこめるみたいに、動いて。その些細な動きまで感じとる。
「ぁあ、ア、あ」
背がリネンからうきあがりかけて。
ぴり、と。張り詰めていく神経があるのに、もたらされるどんな些細な動きも快楽に変えていく。
触れるだけ、欲しいのに。
「ぁ、ゾ、ろぉ…っ」
泣き声めいたモノ、縋って。
それだけじゃいやだ、と。触れられるだけじゃ、もう、足りない。
おまえに、埋め尽くされるまで。
「んー…?」
「ぞ、ろ…っ」
濡らされていく奥が。過敏で。だけど耳元に落とされる声にも背骨が軋みそうになって。
熱に浮かされていくようなのに、感覚がどこまでも冴えて。
たかまった自分を伝い落ちる、蜜が流れるその感覚にまで、喘ぐ。
熱い、のに。腰の奥から、重たくなって。

「ゾロ…、っ」
涙が勝手零れてく。
触れられるだけじゃ嫌だと。身体は告げてるのに。恋人は、意地悪だ、けど―――
「甘いな、」
まるではぐらかすみたいに、低い声が言う。
「ほし、って言ってるのに……っ」
頬が熱い、濡れてる。
「来て、ほし…よぉ、」
リネンの上。爪先が強張りかける。

「ぁア…っ」
深くまで、指、が。埋められて。一息に。
感じ取って、声が漏れてく。内に、感じ取って。
「ぅ、あアぅん…っ」
甘えたような声、零れてく。
低い、甘い声が。耳元、落とされる。
「奥までドロドロ、」
うっすらと笑みを佩いた表情まで、眼を合わせなくてもみえる。
「ぁ、…あ、」
蜜、零れる、溢れそうになる。記憶が繋がる、”おまえ”、昔の。同じこと言って―−―
身体は、もっと、と強請って。
肩口に、爪をたてようとしたなら。声が落とされただけで震えてた、耳元。
「ふァッ」
跳ね上がった吐息が、ただの鳴き声になる。
耳朶、キバに食まれて背が浮き上がって。それと同時に、差し入れられていた指先が引き出されて、一層強く押し込まれて。
「ぁ、ああ、ア」
膝が浮きかける。
「ぁ、…っや、」
笑うような声が、キバを立てられて疼きっぱなしな場所を熱い息が掠める。
「タリナイ?」
ちが……、こわぃ、んだ。高まるばかりの熱と、甘すぎる疼きが体中を覆っていくかと思って。

「ゾ、…ぉ、」
声、途中で掻き消えてく、内を弄るようだった質量が突然なくなって。
引き止めようと足掻く奥に、すぐに。
新しい滑りが、増した質感と一緒に埋められて。鳴き声めいて喘ぐ。
「ィ、きた…っ」
高められる、内からも。
だけど、冴えるばかりの感覚が熱を重く甘く変えていって。
天辺にいるのに、その先が遠くて。
ど―――しよ……?
こめかみあたりまで、鼓動が競りあがるばかりで。
「いいよ、」
低い囁き。聞いただけで、ずく、と奥が熱く重くなってく、ソレが落とされて。
「ぞ、ろぉ、」
縋ろうと伸ばした指先は、髪に掠るだけで。
「ぁあ、あッ」
滑った熱さが。潜りこんできて。背中が浮き上がる、喉を逸らせて。
「ゃ、ア、」
胸元を薄く触れて掠めてく掌、その熱にさえ。

「も、っと…っ」
小さな悲鳴めいた声、あがる。
指先、自分の。リネンを掴んでいる力が現実味をなくしていって。
「あ、ア…ぁっ」
身体が跳ね上がって、身体の中心が溶けるかと思うほど。
こんなにも、くっきりと感じたことなんて、ナイ。内を押し上げてく指先がなにもかもを引き出していって。
「ンん、ァっ」
締め付けて、啼く。
熱すぎて、何もかもが。視界、とっくに霞んで。
「ほら弾けちまえよ、」
耳元、舐め上げる舌先が甘い言葉を落として。
「は、っぁ、…ァっ」
奥、掻く様に押し上げられて。
一度も、触れることも。触れられることもないまま、身体の中心。
熱が弾けていった。

すべての瞬間も、感覚も。神経を焼ききりそうに甘くて重いのに。
ゾロが、低く。くく、っと喉奥で漏らした笑い声に、じわ、とまた熱が上がる。
「ぁ、つぅ……」
喘ぐ。
リネンから手指を引き剥がして。ゾロの背に両腕で縋りつくみたいにした。
鼓動、体温、吐息。僅かな汗の匂い。
重ねて、まだ、足りない、と全身で訴える。
「溶けきっちまってるな、」
からかうような声が聞こえる。
きゅう、と腕に力を増した。嘘つきだ、オマエ。
「そんなはず、…なぃ、の。わかってるくせに」
喘ぎ混じり、吐息にもなりきれないモノとあわせて音を綴る。
眦、浮いていたのかもしれない。涙。
それを、ぺろっとゾロの舌先が舐めとってく。熱さに、身体の奥から震える。指先まで溶けていく。

「知ってる、まだ足りないんだよな?」
「すき、なんだ」
声にだして。
「オマエのほか、こんなにならない」
なぁ、だから。
「おれの知らない先まで、連れてっちまって……、」
く、と。 息を呑む。
「おまえも、行ったことナイとこまで、いこ……?」
「安心して跳んじまえ、」
―――ウン。
跳んじまうんだろうな、って。アタマとか気持ちとか。
きっと、跡形もなくなにもかも、晒しちまうのかもしれないけど。安心、って。できんのかなぁ……?
だって、おまえ。 ”悪い”んだ、知ってるんだろ?




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