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 エレベータを降りた辺りから、ぺったりと腕に張り付いてきたサンジの肩を抱いて、部屋に戻る。
 ドア、ぱたりと閉めて。
 「サンジ?」
 するりと腰を抱き寄せた。ふわ、と。酷くたおやかな風情のサンジが、視線を合わせてくる。
 ゆら、と蒼が揺れるのに小さく笑った。
 「どうする?寝ちまうか?それとも風呂に入るか?」
 「んん、」
 足元、にぁ、と伸び上がって挨拶をしてきたのは、随分と眠たそうなエリィ。するする、とサンジの脚と交互に懐いてから、またとっとと戻っていった。
 その様子をちらりと見送ってから、うっすらと微笑を浮かべてサンジが言った。
 
 「キスしてる間に決める、」
 蒼の双眸を覗き込んで、に、と笑った。
 「ふぅん?」
 トン、と柔らかく唇を押し当てる。トン、トン、とリズミカルに何度も。
 する、とサンジの腕が伸ばされ。きゅ、と両腕が首に回された。僅かに伸び上がるようにして、距離が縮められる。
 それから、ぺろ、と熱い舌先が丁寧に唇を辿っていったのを追いかけ、口中に引き込んで。
 ゆっくりと深い口付けをしかける―――何時間かぶり。
 引き寄せていたサンジの腰に預けておいた手を背中に上らせていく。
 サンジの手指が項から髪の中に差し込まれ。
 緩く角度を変えて、舌先を絡ませたまま吸い上げる。
 く、と息を零したサンジの背中をまた手で撫で下ろし。今度は緩くヒップを辿る。
 深く絡めた舌をきつく吸い上げれば、そうっと頬に熱い指先が添えられた。
 軽く噛んでから、絡まった舌を解いて。濡れた唇を軽く啄ばんでから、そうっと離した。
 甘く甘い吐息を零すサンジの蒼が瞼の下から現れるのを待つ。潤んだ双眸がゆっくりと間近で開いていくのを、静かに見詰める。
 
 「結論出たか?」
 くぅ、と口端を引き上げて訊けば。視線は逸らされないまま、サンジが頷いた。
 軽く眉を引き上げて、先を促す。
 「あのな……?」
 そう言って、あ、と何かを思い出した表情になった。
 「なんだ?」
 ニ、と笑えば、サンジがきゅ、と眉根を寄せて。僅かに困った顔をした。
 逡巡しているのが、蒼を過ぎる光の具合で読み取れる。
 ゆっくりと、サンジが首元に顔を埋めてきた。背中に強く腕が回される。
 「その前に、」
 小さな声が、言ってくる。首元に唇が押し当てられた。
 「“その前に”…?」
 軽くからかう。
 さあ、と。サンジが耳まで赤く染まっていった。
 横目でその様子を見守っていれば、かじ、と首元を齧られる。
 
 ―――ふふン、守るのが難しい宣言をしちまったな、オマエ。“自分からは誘わない”―――充分に誘われてるけどなァ?
 く、と。軽く腰を押し当てる。
 「どうしたい?」
 ひくん、と身体を僅かに揺らしたサンジが。消え入るような声で告げてきた。
 「おまえだけ感じたい…、」
 くくっと笑って、かぷ、とサンジの唇を噛んだ。
 サンジが思わず、といった具合に息を呑む。
 「Okay darlin’」
 サンジの身体を軽く抱え上げ、にっこりと笑いを浮かべる。
 「どこで愛し合おうか?」
 
 
 
 「ベッドルーム、遠いよ」
 肩口に顔を埋めたままで声に出す。
 「ふぅん?」
 からかうようなトーンが、上の方から聞こえる。
 「うん、」
 まだきっと顔は赤いままだろうけど、少しだけ視線をあわせる。
 「じゃあどこがいい?」
 目元に、柔らかく唇が押し当てられて息がまた一つ零れていく。
 「さすがに、ココってわけにはいかないから、」
 くくっとゾロが喉奥でわらう。
 「だから、向こう」
 きゅ、ともう一度ゾロの背中に腕を回して見る。
 「なんかさ、ふいって理性戻ると言い出し辛いね……?」
 翠を見詰める。ふわふわとした気分のままなんだけど。
 「理性戻ったのか?」
 「……ゾロ、」
 からかうようなトーンのまま、言われる。
 
 「ン?」
 光を乗せた翠が覗き込んでくる。
 「…………恥ずかしくなってきた…」
 なあやっぱり恥ずかしいからバス行ってシャワー浴びてベッド戻ってねちゃおっか???と騒ぎだしそうだったのに、腕にあっさり抱き上げられてしまえば、言葉はまたちりじりになっていって。
 とん、と。ソファの上に降ろされてた。柔らかいなかに埋もれてゾロを見上げれば。
 「あんなに大胆なのにナ?」
 言葉に、また頬が熱くなる。
 返事をする前に、また。とん、と背もたれに身体を押し付けられる、やんわりと。
 「ゾロ、」
 少しだけ浮いた足の間、片膝を乗り入れて身体を倒してきたゾロに唇を啄ばまれて。
 うっとりとした声が零れてく。背中に腕を回せば。軽く唇を合わせたままで言葉が綴られて。乾いた温かさが触れ合う僅かな感覚にも、ぞくり、と熱が拡がっていく。
 
 「ここならオマエの好きにしていいんだぞ?」
 空いた片腕を肩に沿わせて。シャツを片肌、下ろして。自分の方へ引き寄せる。直に触れる体温に、ほう、と息が零れてく。
 重ねられる重みが気持ちいい。
 ゾロの、さらりと乾いて、それでも温かな掌に項を、それから首筋を撫でられていく。口付けを恋しがる自分がいる。
 重ねようとする前に。また深く口付けられて。身体の気持ちよさだけじゃなくて、途方も無く幸せな気持ちになる。唇から、濡れて熱い内側から、絡み合う熱から、全部が意味を模ってそれは一言でいえやしないけど。
 項にずっと添えられて、柔らかく動く掌にも。呆れるくらい深く、口付けてるのに。蕩け出した頭は喜んでる、浮かれて。
 
 「……すきだよ、」
 息を継ぐ合間に音にして。ぺろ、とまた恋人の薄いのに肉感的な唇をたどる。
 柔らかさを増して口付けを返される。あむ、と唇を食まれて、くすくすわらう。
 「アリステア、ゾロ、マイ・ディアレスト、」
 息を零す合間に、名前を呼んで。
 翠が、きらりと光りを乗せてく、まるでそれが返事みたいに。
 間近で見詰めて、目を伏せて。溺れそうなくらいの幸福感と悦楽に、つる、と潜り込む。だけど、直に体温を感じ取れないのがそろそろ辛いから。腕を少しだけ自由にして、とろりとしたヌバックのボタンの外そうとすこし身じろぎした。
 「……ぁ、」
 一層深く口付けられて、意識が浮きかける。
 ゾロの指先が、小さなボタンを弾いていって。さあ、とシャツが身体の表面を滑るみたいに開かれてく、その感触にさえ肌が震えた。
 「―――ん、」
 あわせられたままの唇が笑みの容をすこし模るのが伝わって。
 熱い掌が肌を辿っていく感覚に眩暈がしそうになる。柔らかく、その熱で触れられてるだけなのに。
 ひく、と喉が勝手に鳴りかけて。
 脚の間に置かれてた膝、もっと押し付けられて、抑えることなんかできなくて。重ね合わせたままの唇さえ、先を強請って一瞬強張って。
 「……、ンっ」
 キレイに模られた背を指で辿れば。ゾロの手がそのまま下ろされて、ボトムスを緩めてくのがわかった。浅い、ライン。
 
 「は、…ぁ」
 さあ、と。冷やされた空気が肌の表面に直に触れてくる。
 布が下に落とされる音を聞く。
 片方だけ落とした、シャツの。もう半分も引きおろしてみる。スカイバーで。ほんの少しだけ、引いてみれば。『コラ』って言われたことを思い出す。口付けがとかれて、笑みを乗せる。
 「ぁ、のさ……?」
 言葉はだけど。首筋を濡らされてただの音になって。くく、と。ゾロが笑みを洩らしてる。
 ……な、ん……?
 やんわりと食まれて、また声が洩れる。低い声が、耳に届いて。
 「塩辛い、」
 「ん……っ?」
 「なのになんで甘いんだろうな……?」
 ぞく、と。耳元から足先まで。震えが走る。
 「―――−っぁ、か」
 ばか、と言いたかったのがダメだった。ぎゅう、と。ゾロのボトムスのラインを指で押さえる。
 「ナンデ?」
 「もっ・・・と、あまく、なンのに―――」
 
 
 
 
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