Los Angels to Sonoma


クルマは、クルーズスピードでハイウェイに向かってる。
最後にくるっとダウンタウンを一周してから行こう、とホテルをチェックアウト前に言ったなら。
小さく笑い声交じりで、『オ―ケイ、』と返されて。
やぁった、と言おうとしたなら 『ただし、クルマの中からナ』と付け足された、『悪いな、』とそれでも少し眼を細めていたゾロに。
ただ、レイトチェックアウトにしていたし、ランチを食べてからホテルを出ることになっていたから。
おまけにまぁ、アレだけあっちこっち引きずり回して散々、結局は散々、なんだろうな、知り合いに遭遇しっぱなしだったから、それもアタリマエだし仕方無いのも解る。だから文句など言うはずもなかった。
ホテルのマリーナの側のカフェで。日差しに光を弾く波間や、静かに揺れてるクルーザーやヨットを眺めながらゆっくり、軽い昼ごはんを終えて。気分よくステイさせてもらった場所を後にした。もちろん、「支配人」にコンシェルジェにもちゃんとお礼の気持ちを告げてから。

昨日は、夜が明けきって、もう空が明るくなるころにくたくたになって眠って。
眼が覚めてからはクルーザーで沖まで出て、海の上でピクニックをした。
リーシュをつけたままおっかなびっくり、腰を落とし気味にデッキを探検したエリィはよろよろ一周だけすると、キャビンに駆け戻ってしばらく出てこなかった。
おまえ、海に出るのなんて初めてだもんね、と。
迎えに行ったなら、船室のキャビネットの下にもぐりこんで眼だけキラキラさせてきたエリィは、無理に引き出さずに放っておいた。落ち付けばでてくるだろう、と。
『ディッキー・グリーンリーフの真似はしないから。安心しなね、』
そうエリィに言い残して。映画を思い出した。リメイクヴァジョンの方。洋上で口論なんてねぇ?ありえないだろ。まぁ?ふざけてキスくらいはするかもだけどさ?

デッキの方へ戻れば、とてもリラックスした風に船を進めてる姿がひどく様になってたから、隣に座って。
とん、とん、と。爪先でゾロのシャツの背中とか腰くらいに落として穿いてたデニムのバックポケットのあたりだとか。 突付いたりしてたら、ちら、と翠が波の上をざ、とスキャンして。船影が無いのを確かめてから。
とん、と頭の天辺あたりにキスされて。
『アタマー…?』
そう言って、ゾロを見上げて笑った。そうしたなら、唇にもトンと口付けが落とされて。
『座ってるヤツが何を言う』
そういいながら笑ってた。
『フン?』
立ち上がって。また前を向いたゾロの背中越しにぺったりくっついて。
『あっついだろ、けど座ってやらないからな』
けらけらわらって。
肩に顎を乗っけて、機嫌良くしてた。
ざん、と波を切る音が聞こえていたのに、それが途切れて。ゆら、と。船が波を乗り越えた。
『……?』
腰にゾロの腕が回されて。
引き寄せられるみたいに身体が前にまわって、深い絡み取られるみたいなキスをもらって。
朝までずっと愛されてたから、直ぐに肌の表面近くまで上げって来る感覚にちっさく喉を鳴らした。
ゾロが低く笑うのが聞こえて、離れていく手を残念に思ったけど。
譲歩は必要だった、ウン。コーストガードはどこからだってすぐに出てくるからなァ……操舵席にヒトがいないとね。

それで、夕方、それも陽が完全におちるくらいの時間帯でホテルに戻って。潮風に火照るようだった身体をテラスにでて冷まして、『つかーれたーよー?』ゾロにそう訴えて。
バス行く前にちょっと寝る、といったらやっぱり却下で。一緒にバスに行った。
潮風と日差しを浴びて、まだ少し体は重たくて。
『下、メインダイニング行こう?』
タオルでアタマを拭いてもらいながら言えば。また、却下だった。
………ウン、わかってる、言ってるだけなんだけどね。

ルームサーヴィスはまたわがままをきいてもらって、メインダイニングから好きだったメニュをケータリングしてもらった。
パッキングが終わるまでは寝るわけにもいかないしね、ワインは抑え目で。
それでも相変わらず美味しかった。ゾロも、ここの味は気に入ってくれたみたいでよかった。
それから、着替えるのが面倒でローブを着っぱなしだったけど。
パッキングをしようとベッドルームに戻って。知らない間に増えてるラゲッジボックスをみて、なんだか笑いが零れた。ゾロ、下のショップに何時の間に行ってたんだろう……?
それが、昨日。

エリィも、パッキング中のおれの足元にまたハダカに剥いたティビー、多分元は茶色だったやつを運んできて。
わらってエリィのケースにいれてやった。ふぅん?おまえ、これと明日はりょこうするの?といえば。
返事は『アゥ』だった。




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