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 「あ……、ふ………っ」
 息が、喉元でくぐもって競りあがってこようとして。
 引き上げられたままの腕が、ひくり、と跳ねたのがわかった。
 
 落とし込まれた囁き、それをアタマが遅れて理解して。
 震えて、息を呑む。
 絡まされた指に、縋って。息苦しさと熱と、奥深くから渦巻くような痺れと。
 カラダ中が柔らかく崩れていくかと思う、一点から。
 
 熱くなるばかりの息が零れて行く。
 喉を反らせようとしても、覚束なくて。
 何度も、頬や耳元、眦だとか。ゾロの唇で触れられていくのがわかって。とん、と優しく、柔らかい。
 けれど、埋め込まれて内で脈打つ熱を、感じて。
 「ぁ、…は、あっ」
 背中に、空いた手できつく縋るようにしたなら。
 ゆっくりと、熱が内を掠めていって。
 声になりきれない、音の欠片が唇から零れていって。
 
 「平気か?」
 知らずに上向けた頤のせいでリネンに押し当てるみたいにしていた耳元、掠れた声が聞えた。
 答え、言葉に出来なくて。
 短い音だけが、嗚咽みたいに零れた。
 くう、と。背中に指先を埋めるようにして。
 「―――ぉ、ろ、」
 途切れかける息の合間に。
 充たしてくれている熱に、溶け落ちそうなんだと。
 開かされた足の間に、また緩やかに引き出されて、鳴いて。涙が零れかけるほどゆっくりと腰を落とされて身を捩った。
 深すぎる、何かに曳きとめられかけて。
 「――――ァ、」
 背に、また縋る。
 
 聞こえる、おれの好きな音は―――ゾロの声で。
 微かに笑いを潜めたそれが。
 「熱いな、」
 「――――ンぅ…っ、」
 ゆっくりと穿たれる、穏やかな波が拡がって。
 「ゾ、ぉ…」
 競りあがった鼓動に、言葉が途切れて。
 内が、熱を一層伝えてきて。
 「あ…、あっ」
 泣き声じみた嬌声が遠くで聞こえる。
 
 手指に、縫いとめた掌にまた容を求めて力を入れても。
 力強い手、片手に腰を引き上げられて。
 穿たれる強さが移ろっていく。余すところなく。
 「ひ、ぁん…っ、ぁッ」
 息が追いつかずに。
 鼓動よりも確かに、快楽が拡がっていく。
 「もっと聞かせてくれな?」
 とろり、と甘い囁きに。
 背骨から押し上げられるかと思う、欠片も残さずに。
 
 「ぉ、ろ…っ」
 奥深く、熱が押し上げ。
 身体が揺れて。
 「は、ぁ、ァ…っ」
 引き出されかけて、下肢が強請るように捻れて。
 耳朶を、濡れた熱に含むように濡らされて、また鳴き声を零す。
 「ンぁ、ぅっ」
 感覚が追いきれずに、神経が捻れるみたいに。
 それでも、く、と。ゾロが息を一つ呑む音は、また悦楽を引き上げて。
 「あ、ァ、ゾ――…ろ…っ」
 耐えられない、と神経が悲鳴をあげて。穿たれるたび、頂点を促がされて。
 きつく絡めていた手指を、解かれたのを気付かずに。額を覆って、視界を隠していた髪、それを手指が引き上げていってくれて、
 初めて知った。
 
 「―――あ、」
 ぐ、と。下肢が引き上げられて。内を充たす熱をまた感じさせられて眩暈がした。
 足、縋るみたいにまわして。また重なる下肢に奥から何かが溢れてく。
 両手から伝わる体温が、妙にくっきりと意識に刻まれて。
 「―――っく、ん」
 甘えるみたいな声が零れてった。
 寄越された微かな笑みに。
 どうしたらいいかわからないくらい、感じて。
 「き…て、も―――っ…」
 強く押し上げられて、視界が揺れた。
 「あぁ、…ァッ、あ」
 
 伸ばした腕の先、それが。
 ゾロの腕に触れて。
 だけど力がこもらずに、リネンに落ちてって。
 「ぞ、ぉ…、」
 浮いた背中に、片腕が差し入れらたのを感じた。
 肌、浮いた汗で熱い。
 鼓動に包まれるみたいに抱きしめられて。上体が重なる。
 「んっぁ、」
 
 内、押し上げられて。突き上げられて、身体が跳ね上がりかけて。抱きとめられる、強い腕に。
 濡れ零れて熱い、下腹が。
 波を引き止めようとしても、穿たれ拡がっていくばかりの熱さに涙が勝手に零れて。
 強く刻みこまれて、溢れていく、弾けて。
 「―――っあ、ぁ、ア、」
 く、と。吐息と混ぜて耳元。
 低く、聞えた。
 引き絞るように、熱を。内が漣めいてく。
 「ンン――――…ッ」
 
 深く突き入れられて。
 熱が波になって。
 「あ、……っつ、」
 奥まで、注ぎ込まれていくのがわかった。
 身体、勝手に震えて。
 腕、強く抱き締められて。
 身体を全部預けて。
 熱い息が。きっと、体温よりも温まったかと思えるソレが。
 肌の間に落ちていって。
 埋められたままの熱に。
 また、それが小さく跳ねた。
 
 
 
 
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