一緒にいられた時間だとか。交わした眼差しであるとか。そういったいろんなことに感謝したいような、だけどどこか
切ないような。そんな気分だった。
想われているんだ、って。
わかる。
何度だって気付かされて、その度に。泣きたいような、笑い出して抱きしめたいような。ああ、違うな、多分。
アナタが在てくれてほんとうにうれしい、と。伸ばした手の先、取ってくれてありがとう、って。ただそれだけだ。
さら、と。
足先、砂が崩れてく。
上げた視界に、端麗な横顔のラインがある。
グラス越し、ふわりと見下ろされた眼差しが。おれの、なによりイトオシイと思うあのグリーン。
とても優しいのが感じ取れる。
ちらりと、ヒトのことをからかうような色味を刷いて見下ろしてきた最初のときも。すぐに、なんだか優しい影が翠のなかを
抜けていってた。
――――好きになっちゃうよなァ、……どうしても。
いっしょにいられるようになるなんて、思ってもいなかったのに。
眼差しに、笑みで返して。
もう随分と離れた場所を少し振り返った。
波音に消されて、跳ね上がるのが見える拳くらいの大きさにまで遠ざかったトビーの声はもう聞えなかったけど、
足跡が残っていて、また少しだけわらっちまった。
砂浜に残るのは、いくらオマエでも消せないよね。
「ゾ、アリステア?おれが後ろから歩いてあげようか」
とん、と。
足跡の上に移動した。
背中側まで。
ぶ、と。珍しくゾロが笑いを吹き出してて。拳を口許まで持っていたんだ、って肩の動きでわかった。
「消してあげるよ?」
と。トーンを変えない明るいままで続けたら。
す、と足が止まって。ゆっくりと振り向かれた。
「横を歩くんだろ?」
見詰めてくる目が、きっとひどく優しい。
とくん、と鼓動が一つ呼吸と同じだけ穏やかに競りあがった。
「たまには刻んでおくのも悪くないさ、」
静かな声が、波音に紛れる。
証になるだろ、と。
溶け込んでいく、音が景色に。
午後遅い光がさしている場所。
「ゾロ…?」
グラスのことなんか忘れて、グリーンを見詰める。
「もちろん、だけど」
穏やかに、見詰め返される。
少し先にあった、日陰。それを指さす。
「隣にもね、居させて」
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