やっぱり、というべきか。
なんだか、妙にNYCを離れてからずっとサーブされるものの量がどうみても多かったり、オマケが付いてきたり。
――――顕著。
ホテルスタッフの持って来てくれたシルヴァトレイのカヴァを外せば、やっぱり。
田舎だからかなぁ、このホスピタリティのよさっていうのは……?
どう考えても、二人分以上はあるポーションのヴァニラアイスクリームと。
小振りなピッチャーに入れられたチョコレイトソース。エリィのミルクは室温よりほんの少しだけ温められてた。
「んん…まぁいいや」
カヴァをし直して。そのままリヴィングへ持って行く。
「届いたよ、エリィ、おいで」
サイドテーブルにトレイを置いて。
ちゃっかり毛皮はゾロの足に置き土産。エリィがトン、と膝から降りて小走りにやってきていた。
「現金なコだね、おまえ。はい、どうぞ」
深皿を置いてやれば、すぐに赤い舌がミルクを掬い上げていっていた。ゾロは、すこしわらって白の毛皮をロゥテーブルの
端に置いていた。
すこしだけトレイをソファの方へ押し遣って。
「先のティビーよりいまのミルク、」
ただいま、と。ソファに戻った。
「オカエリ」
すいすい、と指先が呼んで。
笑みのまま軽く口付けを交わして。
間近でグリーンを覗き込んだ。
「デザァトにチャレンジ?」
くぅ、と。間近で笑みが返されて。ふわん、と嬉しくなる。
「よかった、量がね半端じゃないんだ」
軽くした口調でトレイのカヴァを上げた。
「―――何を想定して盛ったんだろうなぁ?」
ゾロのからかい口調。
くく、と機嫌の良い笑いを聞きながら、ピッチャーの中にシルヴァスプーンを差し入れた。
ソース、っていうよりは……ジェリィに近いくらい、しっかりと重みがあるそれを掬い上げて。
一口。
――――ん、ちゃんとセミスウィートよりは微妙にビター寄りだった。
甘味がまだのこったままで、す、と唇を寄せる。
「キスして欲しいんだけどな…、」
落とした声で言葉に乗せて。
目元が、笑みを翠に過ぎらせて。啄ばまれた。
ゾロの唇に甘さを乗せるみたいに舌先を滑らせて。
きゅ、と絡められ、喉奥で勝手に笑いの欠片が作られてく。
舐めとらてく。
唇を浮かせて、囁いた。
「甘すぎない、オーケイ?」
「十分に甘い、誰かさんが」
「じゃ、次は肝心のアイスクリィム」
くく、と。
低い笑みが耳を擽ってく。
同じように、一口だけ食べて。ふわりとひろがるヴァニラビーンズの香りが気に入った。
「美味しいよ、」
すい、と。唇を押し当てて。
ほんの少し冷えた舌先で唇を辿って、滑り込ませる。
溶けきれずにいた冷えたヴァニラの欠片ごと。
間近の翠が、煌めくみたいにライトを弾いている様に見惚れかけて。
とろ、と引き受けられて。
濡れた音が耳の底に忍び込んでくる。
絡められて引き上げられて、とても熱く感じる。
いつもよりは、冷たくなってるから、舌先。
「ヴァニラアイスは?まぁまぁ…?」
「ちゃんとヴァニラビーンズが生きてるな。結構美味い、」
指さきで、コトバを模る唇をやんわりと撫でて。
なんとなく生真面目に飲み込んでからそんなことを返してきたゾロにわらいかけた。
「じゃ、ダイジョウブだね、」
「ああ、多分ナ」
片腕を伸ばして、ピッチャーからソースをヴァニラに掛けて。
「オーケイ、じゃこんどこそ?」
スプーンで掬い上げて口に含んで。
んー、甘すぎず美味しいよな。
味わっていたなら、見遣ってくるグリーンを感じて。眼差しを流した。
「オイシイ、」
とん、と一瞬だけ冷えた唇をあわせて。
く、と笑みを模ったそれをアクセントにまた飲み込んで。
アイスクリイムを指先に掬った。
唇の前に持って行く。
「ゾォロ…?はやくしてくれないと、零れるよ」
声が、甘くなっていた。勝手に。
はむ、と唇に含まれて。
またちいさく笑みが零れてく。
オイシイかな……?
「―――――――っん、」
舌先をやんわりと絡められて、ソースごと吸い上げられて息が零れた。
「甘い、」
グリーンアイズがまた光を弾いて、口調が笑みを含ませていくのを聞いた。
「……そ?じゃぁ、」
冷えた塊を掬って。また唇にゆるく押し当てて。
どうぞ、と囁く。
やんわりと熱に含まれていって。ゾロの目線が落とされて、少しだけ見下ろすようにすれば鳶色の睫が思いのほか長くて。
やわらかく動く舌先の熱さとは裏腹に、なんか――――すごく。
見詰めていたなら、指先を咥えたままで見上げられて。
翠に、体温が上がった。
「おいし…?」
声、なんか掠れてるかもしれない。
ちゅ、と。濡れた音を立てて指が解放されて。すこしだけ、空気に触れてひんやりとする。
「美味いよ」
笑み。
「もっと要る…?」
「指から?」
おれも、一口。
飲み込みながら、わらって首を横に振る。
また口に含んで、く、と唇を合わせた。
開かせた唇の間に舌先で押し込んで。
喉奥で低くわらう振動が伝わってくる、おもしろいね。
とろり、と。溶け合ったチョコレイトフレーヴァが舌先に戻されて。
滑り降りてく、喉奥。あまく。
「―――ふ、」
息が零れていった。
「オレはオマエが食いたいけどナ?」
コトバ、受け止めて。
くく、と笑いが零れてった。
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