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 「おれだけ?」
 「けど折角だから。アイスごと食わせろ」
 ゆらり、と甘味を帯びたグリーンアイズを見詰める。
 「オマエが食われたいトコに乗っけていけよ、」
 耳朶をくすぐるような、低い声が言葉を綴っていって。
 指先で、喉元を撫でていかれるようにされて、肌が震えた。
 「ちゃんとソコ、食ってやるから」
 「んん、」
 
 「つめた、くない―――ね」
 弾みかけた吐息のせいで言葉が途切れかけた。
 「冷たいのが丁度かもな、」
 にぃ、と。
 すこしだけ牙の覗くような笑みを浮かべられて。
 自分が、別のものになる気がする。
 獲物、って言ったら怒られるだろうから。―――――Treat?オヤツ?ゴチソウ?
 
 「食って、」
 腕を伸ばした。
 「ん、それで」
 耳元に、少しだけ顔を埋めるようにした。
 そして音に乗せる。
 恥ずかしがっても、無視してイイよ、と。
 
 さあ、と。頬に血が上っていくのがわかったけど。
 喉奥で笑うようにしたゾロの歯に。耳朶をあまく噛まれて吐息が跳ね上がった。
 「―――ッン、」
 息を取り込んで。翠を見上げる。
 片腕をロウテーブルに伸ばして、訊く。
 甘い、けれど見詰められた先から震えていくような「牡」の眼差しに捕らえれてるのがわかる。
 
 「ここで、い―――の…?」
 「たまにはな。なんならソコで喰ってみようか?」
 ゾロの指差した先は、ロゥテーブルだった。
 「やーらし、おまえ」
 テーブルトップ、冷たいよ、と。甘えた声が言葉にして。
 それでも、自分の表情は裏腹なこともわかってる。
 ちら、と。
 翠の底に、乾いた熱が過ぎっていったから。
 
 低い、囁きかけるような笑みがまた零されて。
 薄く唇をひらいて、音を食む。
 片腕、差し伸ばして蕩けはじめたヴァニラを掬って。
 喉元に垂らした、ひあ、とした感覚に。肩がすこしだけ揺れた。
 つ、と。
 肌の熱でまた溶けたヴァニラが流れ始めて、擽ったさにすこしだけ引き寄せられていた半身を捻ろうとしても。
 熱い舌先に舐め取られていった、残された痕のすぐ上を。
 「―――ふ、ぁ」
 あまったれた声が洩れてく。
 
 「シャツごとは食えないぞ?」
 火照り始めた指先が、ボタンを弾いていって。肌を晒す。
 片腕を抜いて。
 「移る?」
 まだ片腕をゾロの首にまわしたままで声にした。
 「どこに?」
 声がわらってる。
 「―――知ってるくせに、」
 かり、と。
 首元を薄く食んだ。
 
 「言えよ、」
 見上げるようにすれば、笑みがまた深く刻まれていて。
 「―――――てーぶる、」
 かぷり、と鎖骨に歯を立てた。シャツの布地越し。
 「先、剥いてからにしようか、」
 長い指が、コトバよりもしかしたら先にロウライズのボタンを外していって。
 「―――ゾ、」
 息を呑む。
 
 「Yes?」
 とても、平静な声。――――わざとだ、これ。
 く、と。アンダーごと下ろされていく感触に腰が揺らぎかけて。
 するり、と全部抜かれていった。
 片腕が剥き出しのまま、ふわ、と視界が動いて。
 「―――んっ」
 肌に直にあたるガラスの冷たさに声が零れていった。
 背中は、まだ半分着たままのシャツが間に挟まっていたけれど。
 剥きだしの肩と、下肢がひく、と。跳ねた、ゾロの身体の下で。
 
 「つめた、いの―――って、」
 強い眼差しで見下ろしてくるグリーンアイズにうっとりとわらいかける。
 いまだけだね、と。
 「But you look very appetizing」
 けどオマエ、すげェ美味そう。
 コトバに、素直に。
 ――――――――うれしくなっちまうよ……おれ?
 
 
 
 
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