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 「ひ、ァ…っ、」
 身体が跳ねるように震えてガラスに直に触れた肩が、一瞬冷たさを伝えてきたけれど。
 すぐに、倍以上の熱さにまた喘ぎが唇から洩れていく。
 「んっ、…ん」
 
 引き上げられたままの膝から、じわりと掌の温かさと心臓まで戻ってくる血が全部あまい痺れを乗せて。
 冷たさと同じだけとろりとした感触に震えても、熱いのか、冷たいのかわからなくて。
 零れて伝う、クリィム。
 「ァあ、っあ」
 
 感覚の中心を、全部。熱で舐め取られるかと思う、息を零して。
 肩が浮き上がって。
 背が、体温と混ざり始めたガラスからほんの少し浮く。
 「―――ぉろ、」
 競り上がる鼓動に邪魔されて、コトバが模れなくて。
 強い目線を感じて、また震える。
 
 まだ残された溶け落ちたクリィムと、引き起こされ零れてく快楽と。
 指先が縋る、肩に、額に、指の間を零れ落ちる短い髪に。
 「あ、ア…っ」
 濡れた音、深くまで含まれて。
 身体の、なか。熱すぎる、息をしても逃げていかない。
 
 奥にまで伝い落ちる溶け合ったものが。
 もう冷たさをなくして、それでも。
 どこか、敏感になりすぎた箇所、ゆっくりと張り付くような感覚はどこか異質で。下肢が捩れてく。
 
 指先で痕をたどられて、縋る指先が布地を強く引いた。
 「っぅん、」
 中心、引き上げられて、熱に包まれたまま。
 伝い、零れたもの。ひくついた場所に緩く指先と一緒に含まされて。
 声の零れてくだけの喉が、ひりついた。甘味が残って。
 ぱし、と。
 フレア、それが意識を灼いて。――――あ、つ…
 
 内は、緩く辿ってくる指先を強請り始めて。
 「ぁ、あ、」
 下肢が跳ね上がりかけた。
 
 冷たさ、忘れていたそれが、急に。
 熱に潤むようだった奥に運ばれて。
 「ひぁ、ンっ」
 塗り込められて、身体が勝手に逃げたがる。
 押し止められて、片手で抑えられて。
 「ぁ、ぁっ、」
 くう、と奥まで。塗り込められていった。
 
 それでも、齎されるものを身体はもう知っていて。深い快楽に内から押し上げられてく。
 冷たさにひくつく奥と、境の内ではまた熱があがってく。零していた快楽のシルシ、塗り込められてく冷たさの対極にあって。濡れた熱に拭い捕られていって。
 「―――ゃ、ア、ぁッ」
 涙が零れた、と知る。深い網、全部が快楽にしか通じていないソレ、身体に全部かけられて。
 「ぞ、ぉ…っろ、」
 泣き声めいた嬌声。
 
 「足りないか?」
 ぱつり、と。
 漣めく表面にまた声が落とされて。笑っているような、優しい音に震える。
 揺らぐ、下肢に。指。
 「――――――――ァ、…っふ、」
 また僅かに押し開かれてくのがわかって、息を呑む。
 
 何かに縋りたくて、落ちた手指がガラスの上を彷徨って。
 まだ冷えた場所に指先があたって、ちり、と神経が跳ね上がったの同じに。冷たさが奥に空気で触れて。
 「な―――、」
 増やされた指先に、蕩けかけても冷たさを無くさないそれ。含まされていって。
 「―――ぁ。あ、ア…ッ」
 輪郭、冷気の。キリキリと拡がって、刹那の強すぎる感覚に涙が零れて。でもすぐにそれは溶けた内の熱に混ざり合ってく。
 
 潤んで、熱に。
 声も、視界も輪郭が曖昧になって。
 「いい歌、」
 柔らかな笑いを滲ませた声が、落とされる。
 吐息、感じて。また中心が快楽に揺れて。唇、触れられたのだと知る。熱の零れる下部。
 
 「あっ、ん、」
 捩れかける下肢、最奥。塗り込められたものが零れて、境いをじわりと濡らし、広がる感覚に鳴いて。
 「ぁ、ア…」
 舐めとられて……?
 その後をすぐに熱に覆われて。
 「―――――やァ、ぁっ、」
 泣き声、めいた声。甘えてるだけの。洩れてく、とめどなく。
 
 「甘い、」
 「――――――――だ、ぁ…って―――、」
 競り上がる息に邪魔されて。
 「は、ぁ、あ、」
 尖り過ぎた神経が、感覚を全部拾い上げて。
 
 熱で潤む奥を、指先で押し撫でられ、拓かされて。また、張り詰めた熱が、濡れ零すもの、ゆっくりと絡めた舌で舐め取られて。
 「あぁ、ん、」
 ただの、紡ぐものになる。齎されるものを受け止めて、返して。音に、空気に、熱に混ぜて。
 内に残される感覚が、まだ先を強請って。
 「ぞ、ぉろっ」
 声が強請る、溶け始めて溢れかけて。
 
 沸き上がるだけの体温と、吐息まで熱を孕みすぎて喉、焼けそうに。
 上がりすぎた熱、下げたくて。でも、引き上げられ、溢れかけて。鳴く。
 「あ―――、ア…っ」
 
 内から、直に。迷わずに快楽を引き起こす箇所を、押し撫でられて、弾ける。溢れ零れてく熱に。
 「ン、ぁ―――っ」
 抑えられたままの足、強張って。
 含まれたまま、吸い上げられて。
 「…あぁっ、」
 嚥下する音が、くっきりと聞えて。肌が震える。
 
 眼差し、落として。
 明るさにいまさらながら、気付くけど。揺らいだ視界は酷く朧で。
 唇を、舌先で辿るゾロがいた。
 零したもので濡れたそれ。
 「やっぱりオマエの方が甘い、」
 囁かれて。
 解放されたばかりなのに、また。快楽の欠片が入り込んできた。
 じわり、と。
 肌を通して、声を通して、――――――――存在を通して。
 
 「もっとアイス食って、甘くべとべとになっちまうか?」
 視界から、不意に。優しく笑うようだったゾロがすう、と消えて。
 足の付け根、口付けられた。
 「…ぅ、」
 揺らぐ。
 擽るように、声が忍び込んでくる。
 「もっとも、いまはタダのあまいクリームだけどな、」
 熱い息を零す。
 
 「たべて、くれる…?」
 啄ばむように、唇で何度も触れられ。
 競り上がる息と声が混ざり合う。
 「Sanji avec creme chocolat?」
 笑いを含んだ声、あまい。
 
 「そ、すれば―――」
 音にのせる、指先で肩口に縋って。
 「おまえ、もっと――――餓えてくれる…?」
 おれに。
 問い掛ける、なあ、ゾロ――――?
 
 
 
 
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