ガラスの上で握りこんだ指が震えて、腕が覚束ない。
掌に顔を埋めてしまいたくなる。
「ぁあ、あ、」
上がりきった体温より、熱いかと思える吐息が零れて思わず腕を前に伸ばしかけて。
反射に、揺れる影が映って、くぅ、と喉奥で声が潰れていった。

軋み、それが背骨に沿って重く、甘い痺れに似て深く拡がっていく。
唇の触れる前から、吐息に震えて。
背の中心を食まれて、形を思い出して。
溶け落ちそうなのに、まだ形があることが不思議になる。
牙に穿たれたなら、そのまま崩れ落ちそうなほど。

「んっ、ぁ、」
光が眩しい、けど。
揺らいだ背、一点からまた火種を落とされるみたいに。ちり、と神経が焼き切れる。
深すぎる快楽、肌を染みとおってく。
点から、拡がってく。引寄せられて断ち切られる微細な血の流れみたいに。
名を呼ぶことさえもう難しくて。
絶え間なく、込み上げる快意に高まったままの中心、触れられて。
「あ、アっ」
肩から崩れかける。

緩く動かされて、零れた熱が。
冷えたガラスに額が着きかけて、焦点が曖昧なままの視界、けれど。垂れ落ちてくものが見えて。
「―――ぁ、っ」
つぅ、と。聞えるはずのない音が耳の底に残って。
「…っぉろ―――っ」
消えそうな涙声が零れてった。濡れた赤い――――唇から。
見えた、快楽に溶け出してたジブン。

「んー?」
とても、緩やかに日常からそのままの声に、くらりと眩暈がする。
けれど、酷くゆっくりと背骨の終わりを濡らされて。その熱さに身体が逃げかける。
火照った指先が、ガラスに線を引いていった、引き戻されて。
「…あ……ぁ…、」
零れっぱなしの吐息に、表面が薄く曇る。蕩け出しそうなブルゥが見上げてきてた、涙で潤みきって。

「あ、――――ン、」
目をきつく閉じても。
嬌声が聞えた。
昂ぶって濡れる中心を握られるようだった、熱が溜め込まれていくばかりで涙が零れそうな場所。抑えた手でそのまま引き上げられて。
「ぁ、――――ゃ、」
腕が力を無くしてガラスの上に遊んで。

掌に撫で下ろされて。背が軋む。
その降りてくさき、もう知っていて。
広げさせられる、奥。含まされたものに濡れて、その先を強請るように引き攣れるのに。余すところ無く晒して。
「―――やぁ、…あっ」
濡れた熱、押し当てられて。ガラスの表面を爪で薙いだ。
眩暈、する。
悦ぶカラダ、奥深くから。

手指に、下肢を拓かされて。濡れた熱に覆われたままで背が撓み、奥まで舐め取られて。
「ぁっ、ア、あ、」
上下する、薄い皮膚を逆撫でて掬い取ってく。零れていくもの。
「ぉ、ろ、――――ア、ぁっ」
節を無くした声、ただ縋り。
促がされるように舐め上げられて、ひくつく。

締め付けて、内で蠢く存在に鳴いて、涙が零れてった。
嗚咽じみた、ただのウタは濡れぼそってる、ただの蜜に似た悦びに。
引き上げられたままの下肢が、捻れて。
「あ、あ…っ」
麻痺したみたいな声が零れてって。

沸き上がるばかりの悦楽、深すぎるソレ。高まりきった中心を抑えられて濡れるばかりの熱の雫と。
引き出されていく、内はその感覚を追い縋って。また、フレアが視界に散る。
波の頂点、また高みに引き上げられて。
「あぁ、ア―――」
喉から競り上がるのは、何を強請って、伝えて。
く、と。
指が押し当てられるのを溶け切った下肢が執拗に知らせてくる。

「ぁ、――――も…、」
うわ言めいた声。
押し当てられた指に、また拓かされていって。
「あ…あああっ……」
零れ出る、ものを掬い取る代わりに。また奥まで濡らされて。
「ひぁっ、ンん、」
弾かれたみたいに、勝手に足が少し開いて。引き出されてく。

目を灼きそうに思える明るさに。状況を知っても、―――だめ、で。
先を強請って、濡れていた場所。溶けいりそうな吐息に先に擽られて。
「ぁ…ゾ……ッ」
コトバは、掻き消えて。
奥まで熱すぎる濡れた舌が、また差し入れられて、嬌声だけになる、喉を競りあがって。
内が伝えるものに震えて。
「ぁ、―――――ぉろ、ゃ、―――も……やァ、」
イきたい、と泣いて。

零れるばかりだった熱、押し止める手が。
指を伝う蜜を掻き混ぜるみたいに追い上げてきて。
「ァ、あ…ッ」
奥、差し入れられた指に。締め付けながら震える。
くちゃり、と音がしそうに蕩けた中を押し上げられて。
「ァああ、」
泣き声があがる。

「ゃ、――――な、…」
哀願する、泣きながら。
「ほし、っ――――の、に…、」
ゾロ、と泣いて。

高みで、また引き上げられて。
「ひ、ぅ…んっ」
熱、零れ落ちてく。弾けて。それさえ、もう。一瞬のことで。
「――――ぁ、あ、」
ガラスに、弾けた痕が見えて。
「溶けたな、」
低い声が耳元に落とされて。また、奥から潤み始める悦楽。
「ぉ、ろ、」
崩れ落ちそうになる身体、どろどろに溶けてってる。

引き上げられて、そこから崩れてくかと思う、身体の表面から溶けおちて。
目はそれでも、翠を探して。
「泣くなよ、」
熱いのに、乾かず濡れたままの頬に口付けられた。
「…ぞ、ぉろ、」
溶け落ちそうな肢体を、抱き上げられて。腕のなかにいるとわかって。
好きなんだ、と。また泣いた。安堵と、なにもかもぐちゃぐちゃで。




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