朝ごはんというよりは、ブランチをサヴァナからさほど遠くないところで済ませ。
I-16にルートを戻した。
そこからI-95に乗り、2時間ほどしてランチには停まる予定をしていたジャクソンビルを通過。
さすがのオマエも腹いっぱい?そうサンジに笑われて、肩を竦めた。
「運動もしてないからな、」
に、と笑ってフロリダ入りを宣言した。

I-10に乗って、南下ではなく州境に沿うように西に車を走らせていく。
「不味い珈琲飲みたくなったらドライヴ交代するよ?」
そうにっこりと笑って言われ、ライヴオークのPAで一休憩してサンジと入れ替わり。
そこからさらに西にI-10を直走って、フロリダ第一の街、タラハッセに向かう。
運転手であるサンジが、カーステレオから流れてくる曲に合わせて時折口ずさんでいた。
Jetの“Do You Want To Be My Girl”。
アップテンポのリズムに乗せて、上手にサンジが歌っていた。
エリィはオレの膝の上で丸まっていた。
夕方4時のフロリダの空は、まだまだ透明で青い。

「なにかリクエストある?」
インターステートを下りて、US-231に車は乗った。
ひょい、と一瞬顔を向けてきたサンジに、特には、と言い掛け。
最終目的地を思い出す。
「California Dreaming、もしくはCalifornification」
「後者!」
「Go right ahead and sing, baby」
笑ったサンジに、ではどうぞ歌ってくれ、と促す。
「Anybody play guitar for me?」
ダレかギター弾いてクレナイノ?そうサンジが言って。
「ギターは無いがCDはある、」
光を反射するディスクをプレーヤに吸い込ませた。

甘い声で、サンジが静かに歌い出す。
フロリダの空が、ゆっくりと紫を帯びていっていた。
国道が、州道へと変わっていき。
FL-75からFL-30へと乗り換えれば、目的地のパナマ・シティ・ビーチに到着。
夕方6時、そろそろ太陽が沈みかける頃だ。
CDプレーヤを停めて、ナビゲーションにサンジの運転を従わせる。
州道を下りれば、車は沿岸ルートへと自然に抜けていく。
サヴァナのコンドミニアムから朝のうちに予約しておいたホテルへと、そのまま車を向かわせた。
ビーチリゾートらしい巨大なコンドミニアムの建物が見えてきて、名前をチェック。

「どれ?」
「今日明日はあそこの、でっかい白い冗談みたいな建物に泊まる」
にこ、と前を見たまま微笑んだサンジに告げる。
「うわ、ばかでか」
「まったくだ。けどいかにもフロリダ、というカンジがして、ある意味ほっとするな」
笑ったサンジは、順調に車を進めていく。

マリオットのエントランスに車を付けさせる。
「お疲れ様」
「いいえ、どういたしまして」
一度エンジンを止め、く、と伸びをしたサンジの髪を掻き混ぜてから、寝惚けたままのエリィをバスケットに戻した。
サンジはやってきたベルボーイに車の鍵を預け。てきぱきと荷物の運び出しなどの説明をしていた。

エリィのバスケットを抱えて、車から降りる。
「先にチェックインしちまうから、ちょっと待ってな、」
「どこで?」
エリィをサンジに預け、ラウンジのソファを指さす。
にこお、と笑って。バーとか?と言っていたのにはにっこりと笑った。
「シェイカーが振られている間に支度が整うよ、」

ふわんと微笑んだサンジがソファに埋もれていっていた。
忠実なベル係が、そんなサンジをどぎまぎと見詰めないようにしながら気にかけているのに小さく笑って、コンシェルジェ・
デスクに向かった。
チェックインの手続きをしている間に、サンジにウェルカム・ドリンクがアタリマエのように振舞われているのに小さく笑って、
クレジットを切った。
マリオットのスタッフは、さて、オレの天使に。どれだけのサーヴィスを提供するつもりかね?




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