サンジが、随分とキゲンのいい声で言いかけながらやってきた。
ゴハンを食べていたエリィから視線を上げれば。
「おやまあ。随分とかわいらしい格好で、」
「んん?」
すっかりスウィムウェアを着込んでいるらしいサンジがいて。にこお、と笑っていた。
オマケに手にはゴーグル??
クリスプな布地がしゃぱしゃぱと軽い音を、サンジが動くたびに立てていた。
見た目、蒸れそうなナイロンのパーカ。
「おまえのもセットした」
にこにこと片手に携えていた束を渡された。
「ん?」
アクセサリ込み?
「ジュエリもしてな、」
「さっそく着せ替え予行練習か?」
にこお、と笑ったサンジに苦笑する。
「泳ぎに行く前に、夕飯はどうするか決めちまおう、」
座れ、とダイニングの椅子を指し示した。
サンジがひょい、と首を傾け、ゴーグルを頭にかけていた。
二つのブルゥが見詰めてきて。
「おまえが着替えたら座るよ?」
きらきらと輝かせて言っていた。
苦笑する。
まあ、先日。随分と泣かせちまったしな。
Fun time for a good boy?良い子にはご褒美を、か?
「オーライ、」
肩を竦め、トンとサンジの唇にキスをする。
「一先ずここまで、お疲れさまでした」
に、と笑ってからキッチンを後にする。
くう、とサンジが嬉しそうに笑っていた。
サンジの前で着替えるのは別に構わないが。
昔“野良猫”に散々『時と場所を考えろーッ』とか絶叫されていたしな?
ベッドルームまで戻ってから、着替えをする。
ツイデに貴重品はラゲッジに仕舞っちまおう。
ラッゲジの中身はキレイにアンパックされ。鍵をかけてキープしておきたいものだけが、残されていた。
ナンバーロックで充分の時間ぐらいしか部屋を空きにしておく気はないから、それでいいか。
「ジュエリ一人で出来るー?」
声が届いて、さあ、最後に着けるから今はなんとも、と答えておいた。
広いベッドの脇に半分ピンクの毛皮の捲れ掛かったティビーが転がっているのを見遣りながら着替え始めれば。
随分と機嫌の良さそうなサンジの、あ!!という声が聴こえてきた。
なにかがあったような声ではなかったから、まだ置いておこう。
そう思っていれば、ひょい、と金色がドアから頭を出していた。
「アスリートみたいだね」
「海兵隊と言われないだけマシか」
笑って服を脱いでいく。
「マリーンのハダカ知らないし、」
大笑いしたサンジに肩をすくめる。
「で。最後まで見ていくのか?」
するりとサンジが猫のように部屋に入ってきて。とさ、とマットレスに座って、ウン、と頷いていた。
「スケベ、」
に、と笑って構わずに服を全部脱ぎ捨てる。
「背筋キレイだねぇ」
サンジが出しておいてくれたスウィムウェアを穿いて、ショートパンツも重ねる。
感心したようなサンジに、すい、とジュエリを手渡す。
「よろしく、」
「長いのはそのまま被って平気ダヨ」
短いのだけ手からするりと抜いていかれ、残った方を首からかける。
サンジの隣に腰をかけた。
すう、とブルゥが見上げて来て、するりと直ぐに付けられた。
イタズラはなし、と。
いいコだな、オマエ?
内心で苦笑してから立ち上がろうとすれば、かじ、と耳を食まれた。
ふわりと微笑んだブルゥに笑みを返す。
「さすが、エリィのマミィ」
「んー…?」
きらきらと目を輝かしながら、サンジがわざと首を傾げていた。
「自覚ナシなんて言うなよ、my love cat,」
仔猫チャン、と笑いかける。
「Meow?」
くう、とサンジが口端を吊り上げていた。
「What's for dinner "Master"?」
「Don't be so cute lookin’ kitty, I might as well have you for dinner」
ゴハンはなに?“ご主人サマ”と訊いてきたサンジに。
あんまりカワイイコネコチャンでいるなよ、晩飯に喰いたくなるだろうが。
とん、と額を突いて返した。
きゅ、と僅かに小悪魔のような笑顔を、サンジが嬉しそうに浮かべていた。
「けどまあ明日目一杯遊ぶ予定があるからそういうわけにもいかないだろ。で、オマエは何時くらいに何が食いたい?」
立ち上がりながら、まだ何も着ていなかった上半身にシャツを着込んだ。
半袖のカーキ。ますます“マリーン”だ。
「“つれなーい”」
ナイロンのパーカをしゃぱしゃぱ言わせながら、サンジがバンザイをしていた。
すい、と屈んで露になった胸にキスをする。
「ジョウダンだろ?」
にやり、と軽口。
「っん?」
いきなりで驚いたらしく、サンジが目を僅かに見開いていた。
するりと頬を撫でてトンと口付けする。
「オレが“ツレナイ”わけないだろうが、ベイビィ?」
「ゾーロ?」
「Yes, my dear?」
「明日目イッパイ遊ぶならさ?」
サンジの目がキラキラと光を弾く。
「ンー?」
「おれにクワセテクレタラいいんじゃないかな?」
悪戯っ子な表情で見あげてくるサンジの髪を撫でる。
「おまえ不足だよー?おれ、」
甘い声に肩をすくめる。
「今朝の状況から判断して、明朝起きれないと結論が出ました。よってその申請は却下します」
笑ってサンジを引き上げた。
「えええええー。起きれるよ」
「ハイハイ、エリィ、オマエの意見をプリーズ」
笑ってそのままダイニングに戻る。
エリィはまだ忙しそうにゴハンを食べている真っ最中だ。
よって返答はナシ。
「プールから戻ったらルームサーヴィスとって、そのあとに、」
「そのあとに?」
「おまえを一齧りか二齧り?」
にこお、と笑ったサンジに肩を竦める。
「We'll see about that,」
それは後で考えような?
next
back
|