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 屋外のブルーのライトに照らされたウォータウェイを、サンジと一緒にのんびりとたゆたった。
 あまり人のいないプールは長閑な音楽が流れていて。
 ビーチリゾートらしく、のんびりとハワイアンが静かに響いていた。
 
 サンジは水の中で、わざわざ小さな滝の下に潜りに行っていた。
 そこは下からも白いライトに照らされていて。ふんだんにグリーンのプラントやアザレアなどが飾ってあり。
 妙に幻想的な風景だった。
 ディズニーの魔法の国に通じるものがどこかあるように感じる。
 最もそれはテレビ映像だけの資料が頼りの判断であり、実際に訪れたことはない。
 
 プールサイドのバーは、どうやら“オトナ”の時間に入っているらしい。
 子供向けのプールグッズは仕舞われ、その代わりに南国の花がいくつも置かれていた。
 スウィムウェア姿の女性客が二人に男性客が三人、背の高いスツールに腰掛けて談笑していた。
 バーテンダは気の良いプールスタッフと同じ派手なプリントシャツを着ていて、ちらりとプールに目線を遣っている。
 監視員も兼ねているのか、忙しいことだ。
 
 サンジが戻り、濡れた髪を梳いて整えてやる。
 「フェイクでも気持ちよかったよ、」
 にこやかなサンジに笑みを返す。
 「よかったな。今度はホンモノを観に行くか?」
 「ん?どこまで?」
 ばしゃんと浮き板にしがみ付いたまま足先で水を散らしていた。
 「リクエストは?」
 「泳げるところがいいなあ、ああ、あそこだ?行く途中だし」
 「んー?」
 「ヨセミテ。水冷たいぞー?」
 
 青いサンジの瞳がきらきら輝いていた。
 「カルフォルニアが最終目的地だからな。いいぞ?」
 にやりと笑う。
 ぱあ、とサンジが明るい笑みを浮かべていた。
 「けどまあ。オレは行ったことない場所だからな。案内は頼むぜ?」
 言うが早いか、サンジがするんとまた水に潜っていっていた。
 ぱしゃんと水面を叩いてからかう。
 サンジがわざと水を跳ねさせていた。
 
 水面に浮いて、蒼穹を見上げる。
 煌く星が、数えられるほどだった。
 そして柔らかな月が見えていた。淡い黄金。
 マンハッタンで見上げたソラともロングビーチで見上げたソラとも、同じ宇宙なのに何かが違う。
 見上げている場所が違うからというよりは、見上げている場所の雰囲気が違うからだろう。
 もしくは流れている“ハワイアン”の齎すデフォルト・イメージの影響か。
 
 小さな橋が掛かっている下で、サンジが立っていた。
 そのまま背泳ぎで泳いでいけば、すい、と頭を捕まえられ。
 ちゅ、と口付けが落ちてきた。笑う。
 甘いブルゥが幸せそうな色を浮かべていた。
 するりと頬を撫でてから、ぐい、と引き寄せて水中に沈む。
 
 水中で大きく目を見開いていたサンジの唇を、はむ、と啄ばむ。
 カルキ入りの水を飲まないように気をつけていれば。
 ほっとしたサンジがするりと頬を撫でていく感触にまた笑う。
 手を離し、水から上がって。サンジの身体も引き上げる。
 気泡が酷くキレイだった。
 そして水に濡れたサンジも。
 
 「ゾロ、これのほんとは滝でしよう?」
 目元で微笑んだサンジの甘い声に、にやりと笑う。
 「ベイビ、開放的になったな」
 もちろん、NOは返事のオプションに入ってない。
 「ヴァケイション中だしね、」
 どこか強気にサンジが言い。けれど目元を赤く染めていた。
 
 「ビッグ・アップルの小さなアパートじゃ物足りなくなってきたんじゃねェの?」
 「おまえがいるならどこだってそこがイチバン、」
 すい、とサンジが水を撫でていた。
 くくっと笑ってサンジの名前を呼ぶ。
 「Love you, baby」
 に、と笑って囁く。
 
 サンジが一瞬視線を泳がせ。
 それから水中を指差し、とぷんとまた音を立てて沈んでいっていた。
 オーケイ、水中ランデヴ?
 沈めば、すい、と唇を押し当てていかれた。
 離れ際、つる、と舌が舐めていき。
 笑った口の形のまま、水中から上がる。
 
 赤く染まった頬のまま、浮いて流れていったサンジを泳いでおいかける。
 「ベイビィ、逆上せる前にそろそろ上がらないか?」
 どこか照れたようにサンジが言った。
 「温水プールだよ、ここ!」
 
 
 
 
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