「Te quiero hasta que usted sera cumplido, mi amor」
背中に掌を沿わせ、そうっとリネンに押し倒す。
―――“あンたが満たされるまで、何度でも”。

柔らかい笑みを過ぎらせたシャンクスの髪を指先で退かし、額に口付け。
瞼、目尻、頬骨の上、頬、と唇を押し当てていく。
「あンたを愛しているよ」
囁きを口付けと共に落とす。
指先で、頬を撫でる。滑らかなラインを愛しむ。
「シャンクス、」
名前を愛しむ。
伏せられていた瞼が、ゆっくりと引きあがった。
「タダのあンたを、愛しているよ」
翠を覗き込み、笑いかける。
ゆっくりと、瞬きが返される。僅かに驚いているような。

緩く唇を啄ばみ。
シャンクスの手を引き寄せて、心臓の上に当てさせる。
ふわ、と甘い色味をのせた笑みが浮かんだのが見える。
そうっと名前を呼ばれた。
「誰よりも愛している。信じなくていい、それだけ覚えていろ」
また緩く唇を啄ばむ。
先を約束したり、誓ったりはしないが。
「あンたは、オレの最愛だ」
妙な確信を持って、思う。
握っていた手を緩め、代わりにシャンクスの頬のラインを撫でる。
笑いかける。

「“在て”よかった……?」
呟くように訊いてきたシャンクスの翠の底を、ちらりと光が過ぎっていった。
宝石よりキレイな双眸。
頷いて返す。
「在てくれてよかったよ、」
Mi amado、オレの最愛。
あンたがいなけりゃ、もしかしたら―――
「他をこんなに愛せたとは思えない」
シャンクスの手を引き上げ、爪先に口付ける。
じい、と見詰めてくる翠を見詰め返す。

「―――そっか、ウレシイな…」
小さく独り言めいて落とされた言葉。
ふわ、と自然に沸き起こったとわかる微笑み。
「すこしは、」
さらり、と指先で裸の首筋をなぞる。
「“すこしは”?」
じい、とますます、甘い眼差しが合わされる。く、と僅かに眉根が寄っていくけれど。
そのまま、そろそろと指先を皮膚の上を滑らせる。
「…わかってきた気がする、」
底に艶を刷いた声が囁いてくる。
微笑んで、唇を押し当てた。
柔らかく啄ばんで、漏らされた吐息に額を押し当てる。
「オマエを、あいしてるんだ、ってこと」
微かな声。
頬をそうっと手で包む。

「夢中すぎて、ワカンナカッタのかもな…?」
くう、と微笑んだシャンクスに、目を閉じてまた微笑む。
「急いで解らなくていい。何度でも、あンたが自信を持って言えるまで、付き合うつもりでいるからな」
目を開けて、口端を引き上げる。
軽口で告げる本音。
指先で、額の髪を横に流す。
さら、とシャンクスの指先が頬に触れてきた。
そうっと唇を啄ばむ。

「Te quiero, mi amado」
静かに落とし込む“睦言”。
熱い舌先が、唇を濡らしていった。
柔らかくソレを追いかけ、口中に引き込む。
緩く口内で掻き混ぜ、押し合わせ。それから、口付けを深めた。
すり合わせ、アングルを変え。それでも柔らかく貪るように。決して乱暴にではなく。

指先で頬を愛撫し、髪をそうっと横に梳く。
深く口付ける、ティーンエイジャのようなキス。
何度もすり合わせ、吸い上げて、甘噛みし。シャンクスの息があがり始めるまで、そうやって求めた。
「こんな風に抱くのは、あンただけだ、シャンクス」
囁いて、微笑む。
短い、甘い息の合間からまた名前を呼ばれた。
耳元、唇で触れられる。
裸の胸を、掌で辿る。響く心音、どくどく、と命の鼓動を刻む。
く、とシャンクスが一瞬息を詰めていた。
「今日を、忘れるな」
微笑んで囁き、頬に口付ける。
それから頤に。

反らされた喉元、柔らかく浮いた鎖骨。唇で、舌先で辿る。
啄ばんで、吸い上げて。甘い痕を僅かに残す。
指が短く切ってある髪に絡んで来、きく、と引かれた。
声が零れる吐息と共に聞こえた。
舌先で首横を辿る。
また軽く啄ばんで、甘く噛み。
そろそろと指先で脇腹を辿っていき、そうっとアンダーに手をかける。
ほんの微か、シャンクスが笑おうとしていた。
口端を引き上げ、肩口に押し当てる。

「そ、れ…面倒、」
きゅう、と背中に腕が回されて、笑う。
「おれ、ボタン途中までで、挫折、」
「―――Tenemos todo el tiempo en el mundo」
からかいながら口にするコトバ。“必要なだけの時間があるだろう”と。
「あンたはシャンクスで、オレの最愛で。これから愛し合おうってのに、邪魔するものは何もない、だろう?」
王子でもなく、役者でもなく、恋に忙しいエピキュリアンでもなく。
場所は切り離された空間、時間は要るだけ空けられる。

ゆっくりと指先で、ボタンを外していき、リボンを引いた。
シャンクスが、度々、きくりと跳ねていくのが愛しい。
時間をかけて解いて。それからそうっと引きおろす。
まだシャンクスの指に嵌ったままのリングが、肩にラインを引いていくのが解る。
剥き出しになっていく肌に、そうっと口付けを落とす。
ふかく息を吐くシャンクスの腰骨の上、軽く歯を立ててみる。痕が残らないように。
柔らかく解けている、シャンクスの何もかもが。

余分な布地を総て引き下ろせば。
「――――っ…」
爪先まで震えていった。
「とてもキレイだね、あンた」
柔らかく甘い魂が。

ゆら、と翠が合わされ、微笑みかける。
柔らかい眼差し、甘い色味の翠。
過去に何度かしか目にしたことの無い表情。
肌に口付けていく。表面、爪先まで辿り落ちながら。
背中からシャンクスの腕が落ちていき、淡い白のリネンにとさりと音を立てて伸ばされていた。
片足ずつ引き上げて、唇で愛しむ。
蕩けそうな声が、シャンクスから聞こえてくる。

そろそろと表面を一通り全部辿ってから、心臓の上に口付けを落とす。
淡い紅を残す。唇越し、早い鼓動が伝わってきた。
「んぁ、ぅ」
シャンクスの背中が薄く浮く。
いつもなら焦れて伸ばされる手。けれど今日は享受するつもりなのか、ソレはリネンを伸ばしたり握り締めたりしているだけだ。
もっと深く感じろ、と口付けに願いを込める。
あンたに与えたいものは、快楽の向こうにあるから、と。

掌で表層を辿りながら、唇を落としていく。
「Yo lo amo, querido」
触れるたびに上がる体温を感じ取りながら、そうっと囁きを落とした。
“あンたを愛しているよ”―――1つの真実。




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