声に、ああ、今日は余裕があるのか、と思い至る。
軽くしておこう、と思ったが、この分ならそういうわけにもいかないってか。
オイルのボトルをベッドの上に落とし。くちゅとシャンクスの中心部を撫で下ろす。
くう、と細い頤が仰向き、低く笑った。
つるりとした頤が、サイドランプに甘く蕩けた色味を刷いていた。

ぷつりとした飾りに舌を伸ばし、ぺろりと浮かせ気味に舐める。
意識していない甘い声が、低く零れたのを耳が拾い上げる。
緩やかに中心部を掌で揉みながら、唇の位置はそのままに、掌でゆっくりと四肢を辿る。
エステ通いに狂ったオンナたちよりよほど手触りがいい肌に、低く喉奥で笑う。
自分が組み敷くこのオトコを、正しく愛でることができた相手は、果たして何人いたのだろうかと思う。
本人訊く気はないし、それこそ余計なお世話だな。

「―――ぁ、ンぅ」
"浮気"を何度もされているが、それでもその度に"物足りない"と訴えてくるからには。
それなりに"特別"なのだろうな、と。甘ったれた声を聞きながら思う。
それ以上は求めないし、それ以下になったらコイツはさっさと"最上"の下に駆け込むのだろう。
引き留めもしなければ、追いかけもしない自分と。果たしてどちらの方が"ヒドイ"のだろうか。
チャチなプライドでもなければ、下卑ているわけでもない。
事実が事実のまま、自分の中では揺るぎようがないということ。

ゆらりとシャンクスの目が開き。感情を取り混ぜた翠が、見上げてきていた。
目許で笑う。
そのまま片足を引き上げさせ。膝裏に唇を寄せる。
すう、とシャンクスが眉根を寄せていた。
官能的な表情。
かし、と腱に歯を立てる。
目の前で、シャンクスの身体がきくんと揺れていた。
「ァ、」
短い声で鳴き、表情が僅かに歪む。
ぺろりと噛んだ箇所を舐めた。

リネンについたままの片足、爪先で布地を掻いていた。
焦らしている。解っている。
けれど、焦らせば焦らすほど熱くなり。
蕩けて、甘く熟れる。
魅力的な器と、誘惑的な中身。
煽られて突っ走るんじゃ、とても長くは保たないだろう。

「―――ほ…し、」
「まだ、なんじゃなかったのか?」
とろりとした声に訊く。
「ちが、」
手の中では熱く熟れたシャンクスの昂りが、蕩けそうに滴っている。
甘い息を吐いていた。
準備運動は済ませてあったよな、そういえば。
"嫉妬"しているみたいで、少し喉奥で笑った。

「つか、わなくて―――へ、…き、って言…」
喘ぎ声に混ざった声に、低く笑う。
抱かれ慣れた体内は潤むことを覚え、さらに快楽に貪欲になる。
「キツくても構わないのか?」
ぺろりと脹脛を舐めながら尋ねる。
とろりと甘い笑顔が浮かんでいた。
誘惑的に、吐息で誘ってくる。
果たしてこの笑顔に、親友はどう反応するのだろうか。

身体を引き上げたまま、カーゴパンツを引き下ろした。
シャンクスの零した蜜を塗りつけてから、押し当てる。
細めの腰を引き上げ、ゆっくりと体重をかける。
「―――っぁ、」
シャンクスの唇から息が零れていた。
低く笑って、ゆっくりと押し進め始める。
くう、と眉根が寄り、やはりきつかったか、と思い至る。
ま、あンたが望んだものだしな。
キツさも、何かを埋めるんだろう。

「―――ん、ぅ、」
きくっとなる喉元に。さらりと中心部を指先で触れ、快楽を思い出させる。
「…ぁ、―――っく、」
回した腕が縋ってき、上体を屈める。
する、と舌先で歪んだ口許を舐めた。
「ン、ッぅ」
薄く唇が開き。そこから真っ赤な舌先が覗いた。
少し舌を差し出して、ぺろりとその場所を舐める。
ぐ、と腰を抱え込んだまままた押し込み、いつまでもキツい内に、低く唸る。
「ァ、あ、」
また強くなる力に、喉奥で笑う。

髪にシャンクスの指が滑り込んでき。それと同時にく、と腰を押し付けられた。
熱く濡れた先端が腹を掠める。
「まだゆっくりと、だ」
低く囁けば、
「ゃ、ぁ…っ」
焦れて甘く蕩けた囁きが告げ。潤みきった翠が、見上げてきた。
「潤滑剤を使ってたならともかく。傷はヤバいだろ」
シャンクスの腰を手で押さえ付け、押し込む強さをコントロールする。
「お、まえがい…っ、の、」
鳴き声の節が蕩けていっていた。
「ガマンしろよ。その方が後で美味いだろう?」
ぺろりと唇を舐めてやり、宥める。
ゆるゆると体重をかけることは止めないまま。

「や、混ざる、」
そう蕩けた声が訴えてきた。
くうう、と肩にシャンクスの指が食い込んでくる。
じわじわと押し進めながら、潤んだうちが何度も締め付けてくるのを感じる。
一番キツい山は越え、あとは体積に慣れれば、滑らかになるはずだ。
「ワガママ、」
「は、…ぁ、」
笑おうとしたシャンクスに、笑って口付ける。
歪んだ顔は、酷く艶っぽい。

黙って腰をきつく押し進める代わりに、舌を差し込んだ。
熱く熟れた舌を引き上げ、吸い上げる。
息が零れ、苦しそうではあるが。
その苦しさも楽しんでいるのは知っているから、気侭に貪る。
くう、とシャンクスの舌が絡められてき。
ハ。クソガキの煙草の味がした。
マイナス点だぜ、ソレは。
マナー違反。

腰を一気に押し進める代わりに、柔らかな舌に歯を立てた。
「ン、ッゥ」
苦しそうな声に口付けを解く。
「ラッキー・ストライクの味はいらん」



いつまでも深みに引き上げられない熱さの最中に。
何かを言われて、瞬きした。潤みかける視界をクリアにしようと。
解かれた口付けの後を吐息で追いかけて。
問い掛けた。なに、と。
緩やかに埋められたままの熱は引き上げたままで、身体を放り出して。
首回した腕を、引き上げるようにして。
額をあわせるようにした。背中が揺れる。

「よくそんな不味いものが平気だな、あンた」
さらり、と触れるほどに近付いた唇から洩れる。
する、と濡れた皮膚だけを擦り合わせた。
「―――キ、ライ?」
「嫌いだ」
く、とまた押し入られる。
「マルボロ、は」
赤のパッケージを思い出した。
唇を舐める。

「アレは慣れた」
「そう、―――じゃぁ、変えさせる」
「それがいい。趣味が悪いぞ、いくらなんでも」
ぺろり、と唇の内側、つるりとした感触を味わう。
「いちばん、ブリッツらしく、ね、だろ…?」
「あンたみたいなモノを好むんなら、もう少しテイストは上げるべきだ」
「―――は、」
わらおうとして。
奥まで身体を押し開かれて、息がくぐもった。
――――き、つ…。

熱い、喘ぐ。
狭まった視界、僅かに眉を引き寄せるカオが間近に。
耳元に、唇を寄せた。
髪ごと、耳朶を食む。
腕が、限界を訴えてくる。
指先、頚椎のあたりを爪で穿って。
身体の中の熱に意識をもっていかれかける。
「―――た、ぁりね…よ」
「よく言う、」
「ァ、ああ、」
耳元に声が落とされ、そのまま軽く食まれて。内側が僅かに軋んだ。

片足を引き上げる。
齎される何もかも、引きとめ味わうように。
熱い掌を感じる、引き上げた足を押さえ上げてくるソレ。
内に刻み込まれる。
「ああ……ぅっ、」
強請るだけの声、皮膚や肉を通してよりも背骨から響くようなソレを強請って。
揺らされる、神経が追いかけて。
滑りかける腕がイヤで。
爪で縋った。

「ぁ、く、」
引き上げられて身体が悦ぶ。
耳元。短く声が届いた。
「コラ、」
「―――ぅ、―――ぁン…」
訊き返したつもりも、無茶苦茶だ。
腰、片足で引き寄せて。また声が引っくり返った。
「あんまり引っ掻くな、後で痛いだろうが」
低い音の連なり、神経が千切れていきそうな。

「ぁぅっ……ふ、」
わらいたい、わらえない。ぱし、と血の中にフレアが落ちてくる。
「ぅァ、ん…ッ」
濡れた熱に中を埋められて顔を反らせた。耳、おれ、よわ、い…ての、
「―――ン、やァ……っ」
嬌声、や、じゃない、けど。

打ち付けられて、締め付ける。
腕を突いちまいたい、そんなガキじみた衝動が湧いて。
皮膚を深く穿ってから、首に腕を回す。
近付いた吐息にまた中を濡らされて、身体が震える。
「ん、くぅ、―――っ」

「ヤじゃないだろ、」
低い、響く笑うような声が舌先と一緒に差し入れられて。
首筋に歯を立てた。
ぐ、と内を穿たれて。
「噛むなっての、」
また低い音が落とし込まれる、意識の底の底まで届く。
「ん、…ぁう、」
言葉の代わりに、濡れた音で返す、だってしょうがないだろ、と。
オマエの寄越すものが全部、イイんだから、喰わせろ。

両腕をきつく回して。
額を押し当てた。汗の浮いた肌に。
「ぁ、って、す、きだも―――」




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