会計を終え、新しく発売された雑誌をぱらぱらと捲っていたら、知り合いの編集者に出くわした。
ローカルなアングラ情報を中心に発信している、本人もかなりエキセントリックな女性。
今夜暇なら飲みに行くぞう、と決定されかけ。
「残念ながら両手が塞がっているんだ」
と丁度キャッシャーで支払いを終えていたリカルドとシャンクスを指で示したならば。
ぎゃあ、と言いかけでグリゼルダが両手で口を押さえ。
「……オトモダチ紹介して?」
と小声で強請られ、それは却下した。

ぱ、とシャンクスの視線が投げかけられた。
「そういうわけで、また機会があれば?」
と手を振って別れた。
グリゼルダの視線が、均等にシャンクス、リカルド、オレ、シャンクス、リカルド、オレと振り分けられていくのに内心笑う。

シャンクスが、すいすい、とリカルドの買った本を指差していた。
「領収書はキープしとけ」
リカルドに告げる。
「…?」
ああ、いい。まだ意味は知らなくても。
「ケイヒ」
シャンクスがリカルドを見上げて言っていた。
「……?」
ぱちくり、とオレを見てくる。笑いかける。
「気にしないでキープしとけ」
そしてシャンクスにウィンクを一つ。
何か感づいたかも知れないが、黙っておけよ。
「OOP(Out Of Pocket Expenses)」
シャンクスの言葉に、リカルドが苦笑する。
「や、意味は解るけどさ」
ふふ、とシャンクスが笑っていた。

車の鍵をリカルドが開け。ペーパバッグ4袋分の書籍が、トランクに納まった。
「運転換わるぞ」
そう言えば、リカルドが首を横に振った。
「Don't let your friend drive drunk(酔っ払った友人には運転させるな)」
オオケイ。任せた。
車に乗り込んで、部屋まで戻る。
パーキングで降りたところで、キィを返された。
シャンクスが、降りる前に。バックシートから腕を伸ばしてリカルドの首にやんわりと抱きつき。
「あーりがと、」
そう言っていた。
安全運転で、という意味が込められているようにも思った。

荷物を持って部屋へ戻り。リカルドは早速DVDに取り掛かるらしい。
荷物の中からソレを取り出した瞬間から、目がマチキレナイ、と訴えていた。
「Snacks?(なんか食うか?)」
首を横に振られ、水だけあれば、と返された。
「ペットボトルで持ってっとけ」
「アリガトウ、」
早速薄いセロファンをはがしにかかったリカルドは置いておく。

「あンたはどうする、シャンクス?」
「サン・ぺリグリノ、」
「スナックは?」
ああ、そうだあンた果物食うんだっけか。
「食べれるワケない、」
「マスカット?」
言った先から、にこお、と満面の笑み。冷蔵庫から出して、洗い。プレートに乗せて手渡す。
「アリガトウ」

「ティッシュ箱で持っとけよ」
く、と見上げてきたシャンクスの唇にキスして。
「なんで?」
という問いに、
「種呑まないだろあンたは」
と答える。
「種アリ、ちぇー」
「食わないなら戻そうか?」
「イタダキマス」
「いいコだな」
サン・ペリグリノのボトルとペリエのガス抜きをグラスと一緒にロゥテーブルに置く。

「オマエは?」
「オレは仕事」
「どこで?」
「セト・ブロゥには興味があるからダイニングのテーブルで」
さらっとリヴィングダイニングの中に視線を泳がせたシャンクスに言う。

「リカァルド、"海賊"観ようー?」
にこお、と嬉しそうに笑いかけてから、リカルドに言っていた。
さらりと頭を撫でてから、脇を抜けて書斎に仕事道具一式を取りに行く。
「もう開けてる」
リカルドの返事に笑ってから、買い込んできた本を纏めて書斎の隅へ。
リカルドの分はまだ、リヴィングのラグの上に置かれているはずだ。




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