シートベルトを、と言われて、思わず笑い出した。
さら、と肩からシャツを落とされて、声を呑んで喉奥で笑った。
ぱら、とデニムのボタンフライも外されて、笑顔のまま思わず深い息を吐く。
目の前のオトコの喉に口付けた。
すい、と片足を引き上げられた。
く、っと笑ったコーザに、愛しいばかりの感情が溢れる。

「頑張って引き下ろせよ」
「あ、そういうの得意技」
「技ぁ?」
くっくと笑っている間に、く、と一瞬抱き上げられた。
身体が浮く。
するり、と魔法みたいに、あっさりアンダーごと膝辺りまで下ろされていった。
「Gees,」
思わず驚きのまま呟くと。
残りをさらん、と引き上げさせられたままの足から、あっさり抜かれていった。
「うっわ」  
「はい、完了」
にか、っと笑った顔が、得意の芸を見せた犬みたいで。
「ヨクデキマシタ」
うちゅ、とわざと濡れた音を立てて唇に口付けた。
さらさら、とシャツを脱ぐオトコを見上げる。
「Bow Wow(わん)」
そう言って、あはははは、と明るく笑うコーザに、くくっとまた笑みを零す。

ちゅ、と口付けを返されて、また笑った。
あー恋ってすげえ魔力。
今更知ったことじゃないけどなァ。
キスだけで嬉しいなんて、なんて純粋なんだろうねえ。
お互い、本気で恋してるってか。

小さな細めのクロスが、肌の上で揺れていた。
きれいに付いた筋肉は、このオトコもなんらかのワークアウトをしてるのだろうと物語ってた。
そういや、いままで一緒にワークアウトしたことなかったなぁ?
あー…そういえば。ほんといつからオマエ、オレに恋してたのさ?
最初に出会った瞬間?ううん。
一緒に風呂入ったしなあ、でも。
ああ、けど。あれはルフィも一緒だったっけな。

ストン、とあっさり全裸になったオトコに抱え上げられる。
ジャグジーには、すでに湯が張られてあった。
「なーぁ、コーザ?」
「んー、」
「オレはさ、オトコのハダカがセクシュアルに好ましいって思ったの、オマエが最初なんだけどな?」
シャワーとどちらがいいか、思案顔のコーザの首筋を舐める。
「お。サンキュ。な、あっち、連れてってイイ」
「任せたって、」
シャワーを見たオトコに、にか、と笑いかける。
「オーケイ」
「オマエはさ、いつからソレ込みでオレを見詰めてた?」
男同士、おためごかしはいらねェぞ?

さぁ、とお湯が流れ出して、シャワーブースの中に入る。
「半年ぐらい経ってから、かな。アイジン契約って言ってた頃は全然」
「半年かぁ…、」
なにかあったっけな、半年ぐらい前?
すい、とブースの中で、足が下ろされた。
「おれは、ほら。キレイなものが好きだから基本的に」
「ウン、知ってる」
にゃは、と笑う。
さら、と湯に濡れた肩を、コーザの手が一瞬撫でていった。
「生きものとして、あンたはすごくキレイだからね、そういう意味じゃ最初から身体もスキダッタわけだけど」
「ウン、それは知ってた、」
「ハハ。おれ素直だしねェ、そういうとこ」

降り頻る湯の中で、コーザの首に腕を回す。
に、と笑っているオトコに、ゆったりと口付ける。
ゆっくりと、背中や肩やヒップにかけて。流れ落ちる湯に合わせて、大きな掌が辿っていく。
オマエの、そういうところを誤魔化さないトコもスキだぜ。

ゆっくりと舌を差し出す。薄く目を開けて、キャッツアイを見つめたまま。
くっと舌を絡められて、目を閉じた。
もっと抱き寄せて欲しいと思い、オトコのまだ乾いた背中を引き寄せる。
柔らかく確かめるように深く口付けられて、水の音が聴こえなくなっていく。
漸く濡れていくオトコの背中に、うっとりと笑って手を滑らせる。
口付け、角度を変えて。

濡れていく感触がキモチイイ。
擦りあう舌の熱さと、下肢の熱さに眩暈がする。
く、っと抱き寄せられて、笑みを刻んだ。
頭から湯を浴びて、すこし息苦しい。
口付けを解いて、喘ぐ。
首筋を流れる湯を追いかけて、口付けられた。
背中を引き寄せて、鎖骨の下辺りまで辿っていく粘膜の熱さを意識する。
「は、ぁ」
息に喘ぎを混ぜて、落とす。
僅かにエコーがかかったそれが、酷く甘ったるかった。

背中、壁に少し預けさせられた。
冷たいタイルの感触に、少し身震い。
「ッ、」
オトコの背中だけに降り落ちる湯を手で混ぜる。
胸の間までつう、と舌を滑らせ、湯を掬っていく音が聴こえた。
「んン、」
熱が上がる。
逆上せる前に、洗い終わって出たいという欲求が上がる。

すい、とコーザが身体を下に落としていき。すい、と片足を、肩にかけさせられた。
片手でウェストとヒップの辺りを支えられる。
きゅう、と鳩尾を吸い上げられて、ひくり、と身体が僅かに跳ねた。
「こ、こで…?」
壁に両手を着いて、バランスを支える。
脇腹を、唇で擽られて、息を跳ね上げた。
すい、と上げられた視線が、おもしろそうだ、と光を弾き。
甘い声が、「洗ってやるって?」と告げた。

「うーわ、」
掠れた声で笑う。
す、と腿を撫でられ、また息を呑んだ。
腰骨に口付けられて、僅かに身体を捩る。
「コォ、ザ、」
ああ、もう。オマエだったら許しちまうよ。
「スキだよ」




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