跳ね上がった語尾、あまく掠れて。名を呼ばれる、縋りつくように。
戸惑いを含み、けれど余裕を段々と無くしていったソレ。
熱い、けれど閉ざされた奥を濡らし。
僅かずつそれでも、その声が慣れない感触のなかに快楽の兆しを乗せてくるまで時間をかける。拓いていく、揺り起こし
快意の欠片を捕まえさせて。
「あ、ア、んんんっ、」
中を押し開いていく指の数を増やし、拡げさせた窄みに舌先を差し入れ。
揺らいだ腰を抑え込みながら、喉奥で笑う。
ヤバイ、愉し過ぎ。
「こぉ、ざ…、」
キレイな生きもの、高みまで軽々と跳躍する存在。
それがいまは、快楽に足を取られて内から熾される熱に震えている。ゆらっと蒼が溶けて揺れ。
見つめられているのだと感じる。
視線に、応える。見つめあう。
氷が、熱を孕み。
火傷しそうだ。
「ふぁ、」
熱い息が零されるのを感じる。なかに埋めたままの手指が熱さに溶け出しそうだと、どこかで思う。
そして、きゅう、と締め上げられる。
平気、かな。
緩んだ隙に、また。数を増やし、蜜を零し濡れる昂ぶりに舌を沿わせる。唇で食む。
「んああ、」
ただ、中を拓くように、ってだけセーブしていたのは、そろそろ止めてもいいかな、セト?
涙に潤んだ目、声に出さずに問いかけ。
だってさ、おれは。
あンたが蕩けちまうのが見たいんだよ。ご免ね、欲深いんだよ、おれ実は。
「セェト、」
「ふ、ぅ…?」
あぁ、猫撫で声。自分でもわかってるさ。
くう、と舌を昂ぶりに絡み付ける。伝う蜜を舐め取り、先を開かせ濡れた音を立てて味わう。
「んんぅ、」
そして、指を蠢かせる。方向、ばらばらに。探しモノがあるから。
「あ、ア?」
熱い内、締め付けてくるのに。
なんで、そんなに。
あどけない声、おまけにかわいいんだろうね?セト。
あンたの方がはるかに「かわいい」だろうに。
く、と指を半ば折り。
緩く引き出しかけ、浅い場所でまた中を味わう。
「ふ、ぅんッ、」
奥、半ば、薄い粘膜に舌先をあて。
びく、と腰が捻れていた。
緊張の走る足を宥める様に愛撫し。また奥に進める。
「く、ぅンっ、」
セト、キモチ良くなろう?
く、と奥を抉る。
弾き、押し開き。
ギリギリ、と手がリネンを引いていた。
ン?近づきつつある、と。
「セト、」
声に乗せる。
「は、っ、コ…ォザ、」
掠れたジブンのソレ。
「―――ココ?」
キモチイイ?あンた?問い掛けて。
「ああッ、」
応えなど待たずに、抉るように掠めさせ。
跳ね上がった脚に、勝手に笑みが浮かぶ。
「かーわいい、」
く、と内腿の奥。思わず歯を立てる。
「ふ、ぅんんんッ」
中を撫であげ、びくびくっと痙攣するほど身体すべてが悦楽を示すのにわらう。
「セト、」
「ぅ、くっ、」
指を、抜き差しするのを止める。
半ばで押しとめ。
嗚咽じみた声に背骨が痺れかける。
ゆらり、と。
潤みきった蒼がのぞき、瞬いた。
見つめながら。
絡みつくような中から引きだす。
「ぅあンっ、」
下肢を押しあて。欲情を知らせ。
濡れた掌を沿わせる。
こくん、と喉が上下し。息を飲んだセトがギリギリの笑みを浮かべていた。
「セト、あンた、さいこう」
に、と。
笑みをどうにか刻んで。
膝裏に手を掛ける。
「あいしてるからよ?」
受け入れてくれないかな?
イイトコ行っちまおうよ。
欲しい欲しい欲しい、と目が訴えていた。
見上げた先、餓えた瞳、一心に見詰めてくるキャッツアイ。
あーあ。オレがノーって言えると思ってンのかね、オマエは。
渇いた光まで過ぎらせて、まあ。
そこまで想われて、光栄、っていうのもヘンなハナシ。
嬉しい、愛しい、応えないわけにはいかないだろうが。
「Come,」
吐息に囁きを混ぜる。
ハジメテの舞台を踏むような感情が奥深くから沸きあがる。
に、と口の端を吊り上げた。
目、見つめあったまま。
僅かに身体を押し進められ、拓かれる、想像以上の存在に。
「は、」
少し息を吐く。
頬を熱い掌で包み込まれた。
視線を逸らさないまま、灼熱に拓かれる感触を耐える。
痛み、よりも、熱。
押し出すことに慣れた筋肉の動きに、逆らって入ってくるモノ。
オトコの目が少し細まった。
「あ、」
押し出そう、呑み込もう、馴染ませよう。
筋肉が蠢いて、少し楽になる。
ぐい、と片足を高く引き上げられた。
ぐ、と一気に奥まで押し進められて、思わず腕を上げて枕を掴んだ。
頭、フラッシュ、白く光って。
歪む、視線、潤む、存在感。
切り裂かれる?
痛み、灼熱、アァ。
低い声で名前を呼ばれたのが、テンポ遅れで脳内で処理された。
ぐう、と跳ね上がったらしい身体を引き寄せられ、圧迫感に唸った。
「ま、て、」
頭、痛み、体内を埋めた熱の熱さとその存在に支配されてる。
イッパイダ、
オレの中、
目の前の愛しいオトコで、
埋められた―――ー
耳元、柔らかな唇の感触。
どこか遠くで感じる。
「セト、」
掠れた声、届く、呼ばれる、喘いで息を入れて、頭クリア。
「あンたのなか、イルよ?おれ」
力、抜いて、息をして。
ぎちぎちみしみしと音を立てていそうな筋肉が、容積に慣れようと蠢く。
そっと頬、撫でられて。
頤の力を抜いた。
「っ、」
息を呑む。
肩をゆっくりと宥めるように辿られて。
「いき、して?」
腕の力も抜いた。
「は、」
「セト、」
優しい声。
宥めるように、縮こまったものを握られた。
「っく、ふ…っ、」
浅く、息を繰り返す。
じわじわ、と津波のように襲った衝撃が遠のいていき。
残される、慣れない存在感が齎す違和感と、どうしようもない熱さ。
「こ、ザ、」
音にする、オトコの名前。
オレを埋め尽くす存在。
指で、すこし戻った熱を、やさしく撫でられる。
瞬く。
頬と、目元に落ちる唇。
ああ、そっか、これオマエか。
中にいるモノ。
「なか。すげ、気持ち良い、」
目元がちらりと笑みを弾いた。
「セト?」
そっと呼びかけられて、下肢、力を入れて締め付けてみた。
押し出そうと蠢くのか、それとも―――?
「あぁ、」
イタイ、とは言いたくなかった。
だから、コトバを呑んだ。
「おれ、リネンに妬くよ、」
少し苦しそうな声。
「ちょ、ま、」
チョットマテ、指、力入ンねェ、
す、と唇、舌先が潤していった。
に、と笑うオトコに眉根を寄せて目を閉じる。
指、ほら、動け。
「――――は、」
息、漸く深いのを吐き出して、指が枕から解けた。
眉間にそうっと口付けが落とされた。
間近で吐息、熱い、甘い、オマエの。
「し、ぬ、か、と…ぉも、った」
ゆっくりとコトバを綴る。
僅かずつ熱を帯び始めたモノを、くう、っと柔らかく握られた。
「んぁ、」
じんじん、ぴりぴり。
じわ、と波紋のように呑み込んだところから上ってくる衝撃。
ぐ、と僅かに動かれる。
引き連れる襞、押し戻される――――
「あ、あ、」
奥、深い場所を。少し掠めるように当てられた。
痛み、よりは熱。
チカチカとフラッシュの連続。
こく、と息を呑んだ。
腕を伸ばして、オトコの首に回した。
「うん、」
きゅ、と蜜が零れ始めた先端を指で押し開くようにされ。
それと同じタイミングで、じんわりと押し上げられた。
「ふ、ぅ、」
ぎゅう、としがみ付くと。
「それがイイ、」
嬉しそうな声が聴こえる。
少し、笑ってみた。
精一杯、余裕なんかない、だけど。
こんな状態でも、嬉しいものは嬉しい。
「ス、キ、だ、」
ゆっくりと、音を綴る。
掠れてちいさな声だ、泣きすぎたコドモみたいな。
「セト、」
泣きたい、かもしれない。
オレはどうなっちまったンだろう、わけわかんないぞ、状態が。
解るのは、どうしようもなく熱いオトコの存在が、自分の中に入ってるということ。
それが、痛みだとか圧迫感だとかなんとかを取っ払ったトコで、純粋に、嬉しいと思える、ってこと。
目元、唇で触れられた。
少し、腰を引き上げられて、唸った。
同じ場所、体内の奥深く。
抉るみたいに押し込まれて、思わず低くうめいた。
「ぅん、」
眩暈。
勝手に筋肉が締め付けて、緩む。
肩口にも、唇の熱く柔らかい感触。
「こぉ、ざ」
ああ、クソ、泣けるかもしんねェ。
「たすけろ、」
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