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 極端に感情が振れると、むしろヒトはフラットになるらしい、と。
 相反するモノしか存在しなかった。
 深まり拡がっていくばかりの愛情と。
 いとおしすぎて壊したくなる感情と。
 泣きだしたいのか、笑いだしたいのか。
 抱き起こしてしまいたい、という渇望と。
 しがみついてくる身体をただ慰撫し抱きしめたい、という願い。
 
 取り込まれたうちの熱さと、押し出そうとするのか、引き入れようとするのか。呼吸とは別のリズムでじわり、と
 キツイなかで締め付けられる。
 これは、あぁ―、クソウ。
 ぐ、と腕に一瞬だけ力を込めてセトの身体を抱き寄せる、自分に。
 
 悪魔とか神とか、さっき言っていたけれど。
 すくなくとも、いまおれがこの瞬間落とし込まれたのは。天国の悲劇、もしくは。地獄の喜劇。
 ウレシイケド、どうしようもねえじゃねえかよ。
 セトが、自分から身体を拓いていった。苦しげに息を零し、それがやがて吐息と混ざりあって。
 遊びで抱くなら、いまなんざ。恰好のポイントで。
 たかまった感覚を身体が抑えようとしてるスキをぬって。少しだけ感覚を揺らせて波間に放り込んじまえばイイ。
 強張った身体が、ウソみたいに乱れてくれるンだけど。あー、くそう。
 レザレクション、ってやつか?過去の行いはいずれ我が身に降りかかる、っていう戒め。
 身勝手、ただの快楽を追いかけあうだけの遊びじゃねェから。
 あンたに、そんなこと出来ないよ。
 あまったるいまでの愛情を自覚する、もう何度目かなんて判別不能だ。
 
 「は…ぁ、」
 唇が綻び息が零れる、セトの。カタチになったとしたら、水の膜がうっすらと纏いついているだろう。熱く潤んで。
 ジブンの腕がセトの身体の横、わき腹を撫で下ろしていく。勝手に。
 おれは、そこまで出来たニンゲンじゃねぇし。やっぱりあンたに触れていたい。
 
 「コー…ザ?」
 とろりと、蜜に漬け込んだおれの名前ってヤツか。
 「へー…き?」
 おれよりも、セト。あンただよ、平気?
 そんなことを言っている声は、驚いたことにおれのだった。
 
 身体の重心を動かさないように、こころもち上向けられた頤をかるく歯で掠めさせる。
 「んぅ、」
 背骨を、あまったるい痺れが滑り落ちていった。
 溶けた声、それが微かに苦痛と快楽の狭間にいる、と教えてくる。
 どちらか一方なら、まだラクなのにな。
 すこしでも苦痛にあンたの声がブレテいたなら、おれはすぐにでもただ、あンたを「抱きしめる」ことだけに意識を向けるのに。
 
 「セト、」
 「まだ、し、ン…でな…、」
 気丈なセリフに、く、と。喉奥でわらう。
 まだ死んでいない、んだ?
 目元を覆い隠していた前髪をあげさせ、顔を覗きこむ。
 繋がりが深くなり、くう、とセトの背が撓むのが感じられた。
 「んぁ…っ、」
 
 ゆっくりと、上半身を重ね合わせ。潤んだ蒼が細められるのを見つめた。
 額を合わせるようにすれば、眼差しが絡みつく。
 キレイだ、と。バカみたいにそればかりを思う。
 「生きてる…?」
 「ン…、」
 あとわずか、奥にまで進め。
 くう、と笑みが刻まれた。
 目元、口付け。
 間近で吐息が零される。掠めていく熱い息がじわり、とまた体温を押し上げていく。
 「イ、ッパィだ…ぁ、」
 熱く潤う内側を、押し上げる。
 「ん、ぁ、っ、」
 快楽に流れた短い声。
 きゅ、と締め付けられ堪らず息を詰める。
 腕に抱き、組み敷いた身体が一瞬震えていた。
 
 「気持ちイイ?」
 「た、ぶ…ん、」
 くちゅり、と音を立てて耳朶をやんわりと吸い上げ。
 やわらかく、快楽を伝えているものにまで手を滑らせる。
 「考えすぎるなよ、」
 「うァ、」
 声に落としながら、びく、と跳ね上がる身体を宥め、手指でじんわりと昂ぶりを挟み。
 とろり、と僅かに零れた蜜が、指を伝う感触に耳朶を食む。
 硬く張りつめた表面を濡らしながら言葉を落とし込む。
 
 「おれは、気持ちイイよ。あンたのなか」
 ほらな、と。
 ゆっくりと、最奥まで押し上げる。
 「す、げ…、」
 なきそうな声に感情が千切れ掛ける。その底に確かに快楽に揺れるセトを確かめて。
 包み込むなかが小刻みにさざめき。
 「…っ、」
 セトの耳もとに、上がりかける吐息を落とし込む。言葉の代わりに。
 
 「セト、」
 「ん、」
 絡み合った足ごと、片膝を折らせ。
 ズ、と。リネンがセトの背で皺を作り波を深くするのを視界の端で捕えた。
 「ん、っふ、」
 濡れた音を立て始める掌の中のもの。
 首元に体温より上がっているかもしれない吐息が零される。
 ひくり、と蜜を零す熱が揺らぎ。
 それから、腰が同じようにわずか、揺らいだ。
 じわり、と潤んだ熱に一層取り込まれ、角度を変えて擦りあげる。
 「あ、はゥ、」
 息を吐き、艶めいた笑みを淡く浮かばせるセトをまたやんわりと揺り上げる。
 
 「セト、」
 声と、手と、中を穿つモノと。
 抱きしめる腕と、重ねた肌と。淡く朱をはく程に熱くなったあンたの肌と。
 混ぜ合わせれば、おれがあンたの中で感じている熱さと同じになるだろうか。
 「いま、すげぇ、きもちよかった」
 イタズラに成功した、っていわんばかりの短くあげられた声に返す。
 「もっと、キモチヨクなろう?」
 「…ゥン、」
 
 掌、腰を押し撫で。
 ぐ、と。指先が腰骨を押さえつける。
 身体の造作が、キレイなんだ。一々、味わいたくなるだろやっぱり。
 浮いた汗が肌を彩って、淡い光を掬い上げてる。
 きゅ、と胸元を吸い上げ、薄赤い痕を残していく。
 「んぁ、」
 繋がった下肢を押し上げるようにして、緩く浅く、セトのなかを味わっていった。
 びくん、と跳ね上がる腰を背中にまわした腕で身体に引き寄せ。
 中を穿つ。
 ゆっくりと、「やさしく」。
 
 「あ、ア、」
 快楽を伝え始める声に、体温が上がってく。
 「コォ…ザ、」
 そして、じわりとした快楽に肢の強張りが溶け切ってから、初めて。
 名前の呼ばれ方で、セトが溜め込まれていくばかりの悦楽を少しずつ受け止めていることを感じながら。
 一際、嬌声じみた声を上げた場所、覚えこんだその奥を直に撫でる。
 
 ソコを突き上げちまいたい、そんな衝動をセトからとめどなく零れ始めたあまい声でやり過ごし。
 びくり、と足が浮くのに笑みが浮かぶ。
 手の中からは弾けそうな熱が滾るのを感じる。
 「セト、」
 「んんぁっ、」
 「溶けそうに、なれてる?」
 とん、と押し込み。
 「ァあんッ」
 爪の先で蜜の零れる場所を擽った。
 「セト、」
 「や、ぁ、コぉ…ッ、」
 
 一層、潤みきったなかに取り込まれかけ。遠慮なく締め付けてくるのに、首元を吸い上げた。
 き、と歯を立て。舌で宥め。まだ、じわり、と噛み締める。
 「イタ、…ッ、」
 追い上げずに、緩いリズムを刻みながら。
 震える身体を片腕に抱きしめ。
 穿った痕を舌先で愛撫する。
 
 「あまい、」
 声に乗せ。
 奥にまで深く、初めて望むままに突き入れ。
 「ゃあっ、こ…ォ、」
 泣き声?
 チガウ。
 揺れる、あぁ、鳴いてくれてンだ。
 
 「もっと…?」
 「も、っと、…ほ、し…っ、」
 熱を取り去りたい、それほどまでに望むほど飢える。
 ゆらり、と。
 刻む動きにどこかぎこちないまま、セトの半身が揺らいだ。
 「コォ、ザ、も、っと、」
 せっかくやさしくしてたのに。
 
 最奥、その熱だけを求めて突き入れてみる。引き止めるようにさざめく内に息が詰まる。
 「へーき…?」
 ぐう、と濡れたままの昂ぶりを掌に収めたまま声に出せば。
 「んぅっ、」
 嬌声が返され。
 それは、もっと、と掠れた声に続き。
 昂ぶりを追い上げながら、熱を貪ることに意識をあわせる。
 上がり始める息と鼓動。
 「イィ、か、ら」
 切れ切れの、嬌声。
 あぁ、あンたに、やれるだけのすべてを快楽に変えてくわせてやりてぇよ。セト。
 
 「セト、」
 掠れた声だ、自分の。
 「んっ、んぅっ、」
 絡ませた足を解かせ。
 甘い声の誘うまま、肩に掛させ視覚にまた神経が揺らぐ。
 内を意図せずに抉ることになりセトが身体を一瞬強張らせる、快楽に。
 「あ、コぉ、コォ…ッ、」
 汗に濡れて滑るソレ。膝の内側、柔らかく張った薄い肉に牙を立てる。衝動、だ。
 「や、ぁあああッ、」
 一際高く上がる声に。
 跳ね上がる身体を抑え、上から落とし込むように熱を逆撫で押し拓いていく。
 
 ぱつり、と。
 セトの身体に汗の粒が落ちていった。ハハ、おれけっこう余裕ねえのな?
 「ダメ、こ、ぉ…ッ、も、やぁッ、」
 「まだ、」
 「や、あッ、」
 ぐう、とことさらセトの感覚の中心を抉るようにした。
 「や、って言っても。」
 「ぃ、あ、あっ、ああッ、」
 
 ぐちゅ、と濡れた音を立てさせる。
 ハリツメタ熱を手指で愛撫する。
 「イ、ク…ぅ、も、ヤ、…コォザッ」
 「まぁだ、」
 冗談だから、もうすぐだって。
 「や、あ、アッ、ああッ、」
 
 ぐ、と最奥まで何度かリズムを変えて穿ち、熱を辿り。
 抑えていた熱を放せば。
 びくり、と跳ねた身体がこの上もなく淫靡、としかいえない線を描き。
 「ア―――――――ッ」
 どんなアリアも敵わない、そんな嬌声が惜しげもなく与えられて。
 締め付けられて、セトの身体の奥深くまで熱を注ぎ込んだ。
 身体の間、そして手に零れるとろりとした熱を味わいながら。
 
 「――−ト、」
 しがみ付かれている事実がどうしようもなくウレシイね。
 掠れた声で呼べば、まだわずかに眉根を寄せたまま、身体の中を走る熱に浮かされたままいっそうしがみつかれた。
 肩、まだ足が痙攣しているのを感じる。
 あー、ウン。ごめん、させて?
 きゅう、と内腿に吸い付いた。
 美味そうだもんよ、そーぜつに。
 「んああああッ、」
 
 かり、と薄く歯を立てる。
 そのまま、滑らせ。
 内腿のイチバン奥に口付けていたなら、とろ、と蜜が名残りのように零れ。
 あ、ぜったいそれ美味いな……?
 舌先を伸ばし、零れたものを舐めとった。
 
 ふい、と預けられていた身体が力を無くしていた。
 ――――んン?
 天国みれちゃってたり?
 セート…?
 
 
 
 
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