くすくすと笑いを零す、肩に押し当てられたアタマに頬で触れてみた。
水面が僅かに揺れている、その中で。半ば以上、身体が浮いている感じだ。
肩から背中にかけて、そして背骨の突き当りから絶妙のラインまで。

く、と埋めては引きだす、その動きは水に揺れるだけで。
肩口から、水面までセトの零す吐息が肌の表層を滑っていく。
「セト、」
「ン、…な、に?」
髪に顔を半ば埋めて、へいき?と。揺れる声に問い掛ける。
「ン、ちょ…辛い、かも」
「ん、りょーかい」

ああ、ちょっと冷たいかもね、と。一瞬思ったけれど。
「ずり落ちて溺れそう、」
そう切れ切れに応えられてしまえば。
「うん、それ、困るしね」
きゅ、と耳もとに口付けてから。両手で背中を持ち上げた。さぱり、とまた水が揺れる。

「ちょい、つめてぇかもよ」
告げて。
「え、な、に…?」
戸惑ったような口調に、心臓が一呼吸分早くなりかける。そしてそのまま、縁に身体を座らせてどうみても冷たそうな
石作りのカベに背中をかるく押し当てる。
「うわ、つッ、」
「溺れないダロ?」
びく、っと身体が揺れて。気休め程度に掌に掬った温水を肩口にかけた。
「そりゃそ…、」
吐息、これは安堵と吐息の絶妙な混じり具合だな。

「でも、すぐに熱くなっちまうかもね…?」
「…へ?」
胸元から鳩尾まで、掌で撫で。
見下ろしてくる潤んだ蒼を受け止めながら、ゆら、と水の中で揺れていた片足を縁に預けさせた。
「コーザ…?」
濡れた腿の内側、流れようとする水を舐め取る。
「ん?」
ちゅ、とそのまま口付けた。
「ど、すンの…?」
すこし、また奥まで滑らせて。
「なにが?」
「オ、マエ、」
また、肌を舌先で撫でて返事する。
「んン?なに?」
あーあ、見上げてるおれのカオ、そうとうにやけてンのかねェ?
「こ、こで、すンの…?」
ひく、と脚が震えていた。
「うん?」
「し、せぃ、」

腿の奥、イチバン内側。くっと浮き出た腱を歯で薄く挟み込む。
「んぅ、」
弾かれるような感覚が面白い、舌先で押し上げてみながら。
拡げさせた場所が閉じた、その瞬間に。掬い取りきれなかった残りが零れて。セトの身体が震えた。
「セト、」
「…っ、」
これまた、おれも。甘ったるい声だぜ、相当。

潤み光を弾いていた蒼が、ゆらり、と伏せられ。目元が、ほんのりと淡い色を佩いていた。
「なんも、しないよ?」
あぁーあ。おれの嘘つきめ。
さらり、と脇腹を掌で辿り。
「準備するだけだって、」
聞こえない程度の声に落としたつもりが。
「…じゅ、…び?」
ありゃ、耳いいね?セト。
奥にまで舌を滑らせた。

「う、わ、ッ」
悪趣味?でもさ。押し当てたままでいたなら、ひくん、ってなるんだし。かーわいいって。
拡げて差し入れずに、何度か震えるさまを全体で感受して。
ゆっくりと、襞を唾液で濡らし始める。

「ふ、う、…ンっ、」
ひく、と蠢くたびに舌先で捕まえれば。足を辿る手に何度か跳ねる筋肉の動きが伝わって。
アタマの上の方に零れてくる吐息は、きっとこの水より熱くて湿ってるだろう。
きゅう、と一層窄まるのにあわせて、舌先を差し入れれば、縁を握っていた手が、髪に潜り込んできた。
く、と。喉奥で笑いを殺す。
かわいいねぇ、ホント。
限度がねえよ、あンたに。

「は、ぁ、」
俯いて震えているのが、跳ね上げた目線の先に写る。
ううん、ヤバイな。
染まった頬が、かわいすぎ。
綺麗なだけにギャップがすげぇや?
どうするかな、明日怒られる覚悟で、一回セトがイクの見させてもらうか?
あっちで背中から頂かせてもらう前に。




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