目が、覚めた。
朝、誰かの腕の中にいた。
確かな重み、熱……ああ、そうか。コーザだ。
目の前のクロスに、目を細めた。
気だるい身体はまだ重く。
REM睡眠してもまだ、疲れが残っていた。
何時だろう、と考え、時計を探そうかと思っていたら。
斜め上、閉じていたキャッツアイがゆっくりと開いていったのが見えた。
……どーしよう。
ものすっごい、愛おしいんだけどさ?
腕を伸ばして、顔を引き寄せた。
首筋に埋めさせる。
「オハヨウ、」
とても小さな、柔らかい声が届く。
砂色の髪に口付けた。
「オハヨウ、でもまだ眠いね、」
視線、跳ね上げた先、時計。
いつもの起床時間、7時ちょっと過ぎ。
コーザが少し顔を動かして、首筋に唇が触れる感触に笑った。
「セト、」
甘い声に笑って、ぎゅう、と抱きしめた。
「起こしてゴメン、もうちょっと寝よう…?」
するする、と額を押し当てられて、髪に口付けを数個落とす。
きゅう、と抱きしめられて、ふう、と深い息を吐いた。
引かれたカーテンの向こう側。
明るくなり始めている色だった。
…ま、いいか。今日くらいは。
「昼前まで、寝たい、」
「ねたの、いまから3時間くらい前だ、」
「……うーわ、じゃあ、」
あむ、と肌を唇で挟まれて笑った。
「セト、」
「ダーリン、寝よう…?」
とろとろ、起き抜けの甘ったるい声だね。
…参った、まだ蕩けてるのか、オレ。
「キレイすぎ、」
甘い、甘ったれたような低い声が言って。
それから、くぅ、と眠りに付く息の音。
……結構オマエと一緒の空間で寝てきたケド。
オレの前で、オレより深く寝てるのって。
…初めて、だよな?
「……安心、してンだ、オマエ?」
嬉しくなって、髪に顔を埋めた。
唇、押し当てて、愛してるよ、と囁く。
きゅ、と腕に抱き寄せられて、また小さく笑った。
「…コーザ、ダーリン、おやすみ」
囁いて、目を閉じた。
眠りはすぐにやってきた。
腕の中にある熱が、気持ちが良いからこのまま寝てる、ってのも良い案だけれど。
どうやら、少しずつ意識が表層上ってきているらしいセトは、そういうことをさせてくれねぇだろうなあ、と。
何とはなしに笑い出したいような気分で考えていた。
少し前に、ゆっくり目覚め。
抱き込まれるみたいにして眠っていたのに少し驚いた。
鼓動が間近でリズムを刻んでいる、うっかりするとまた眠り込みそうになる。
ふ、と。
ユーワクに駆られる、よなこれは。
鎖骨の線を辿る、唇で。
はやく起きないかな、セト…?
「…こーぉ…?」
「んー、」
まだ半分眠っている声だ。
「……なん、じ…?」
かり、と細い骨に歯を立てる。
「………ん、」
く、と浮き上がる窪みを吸い上げ。
「昼前、」
いい加減な時間を告げる。
「…ん、」
手を肩から手首まで滑らせる。
さらり、と滑らかな感触。
「…んー、」
くう、と軽く手首を縫いとめる。
「オハヨウ?」
首筋を辿って、ふぁ、と欠伸した頤のラインを耳もとまでなぞれば。
「オハヨー」
呟きと一緒にセトが目をゆっくりと開けていた。
「良い天気みたいだね、そと」
とろり、とした眠た気な声に返し。
耳朶を少しばかり口に含む。
「…うー、」
く、と唇に挟み。空いた手で腰あたりまで身体の線を確かめた。
ずらせた視線の先ではセトが何度か目を瞬いてから、短く欠伸して、くううと背を反らせていた。
―――連想。
伸びをする猫。
浮いた背の下に、腕を差し入れた。
「セート、」
「…なぁー…ん、」
ちゅ、と口付ける。
ふわ、と笑いかけてくる。
ん、起きてきたな?
すい。と手首を抑えていた手を、セトの中心まで滑らせる。
「んん?」
「ん?」
にっこり、と笑った声に同じように笑みで返す。
「さすがにちょっと過重労働気味?」
「んー…おかげさまで、気だるいです」
やんわりと、手指で容を辿らせる。
微かな笑い声。そして、しかもな?と悪戯ッ子めいた声で続けていた。
「なん?」
すい、と柔らかな金を撫でる。
「…まだ、後ろ、オマエいるみたいなカンジがしてる、」
くすくす、と笑い声。
「――――セト、」
「んー?」
あーあ、おれのカオ。締まりがねぇぞ、いま確実に。
キラキラとした目が見つめ返してくる。
「カワイイことを仰いますネ」
眦に唇で触れながら、言葉にする。
「やー、だってホントのコトだぜ?」
「ふうん?」
く、と意思を持って。すこしばかりまだセトに触れていた手を押し上げた。
「オマエ、されたこと無いのか、」
「うーわ、おい」
くすくす、と笑う声に返す。
「なぁん、コーザ?」
「襲うなよ?」
に、と笑みで返し。
「さーぁ?」
「あ、そういうことを言う、」
「オレもオトコですから、」
く、と柔らかなものを握りこんだ。
「ん、そうだね。たしかに」
「…ふ、」
微かに、艶を帯びた小さな笑い声がして。すう、と手が伸ばされていた。
「んン?」
「…オマエは、さすが?」
笑う。
「足りネェモン」
「うーわ、」
く、と握られてそれでもまぁ、本音6割、冗談4割。
クスクス、と零れ落ちる笑いに、片頬で笑う。
「セェート、」
口付ける。
「んん、」
目を覗きこんで。掌に熱を押し当てれば。軽く上下される。
「なぁ?」
唇を浮かせる。
「…したいのか?」
「んんー、実は。セトのさ、」
「んー?」
ペろ、と濡れた熱が唇を辿っていった。
「イくときのカオ、おれ好きみたいで」
もう一度熱を辿る。
「…ふっくくっ、そりゃ、アリガトウ、」
笑って、また指を蠢かすさまに、ストレートに告げる。
「かるーく、抱いてイイ?」
入れないし、と。
「…イイヨ、」
すう、と刷かれる笑みに。
「やりィ、」
にやり、と笑みで返す。
ぽん、と半身を押し上げて。きゅう、とセトの鳩尾あたりに口付け。
「って、」
さらり、と手を緩たセトに少しばかり苦笑してから、「いただきます」と宣言してみた。
ブレックファスト、や?ランチか。
「うん、美味そうだね、朝みても」
「うーわ、」
にっこり、と笑いかけてみた。
「さて。愛し合いますか、セト殿?」
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