快楽に揺れる、あまい声が耳の底にいつまでも残響する。
委ねることを覚え始めた身体も、眩暈がするくらいイトオシイけれど。
おれがなにより、慈しみたいと思うのは「セト」だから。ゆっくりと言葉に模る。
やめようか?と。言葉遊びでも、焦らすわけでもなく、ただその通りの意味合いで。
柔らかい陽射しに、セトの肌がうっすらと上気して、あぁやばいと思わず唸りたくなるほどにキレイなことも。
眼差しが蕩けていく様も、厭きることなく覚えこんだからいいんだけど。
「……いぃ、から」
「ん、けど。軽く、じゃすまねぇかもよ?」
「…オ、マエが…ほしい、」
―――――鼓動が、アタマの上から聞こえた。
やっぱり、ムリさせたくねぇし。
……だけど、なぁ。
そんなに柔らかい声と、必死な様子に――――
おれは、いくらだってあンたなら抱けるけど。
「な、ぁ…くれね…の…?」
セト、と呼びかけようとしたなら熱い内が指を締め付け。
蕩けきった蒼が、見上げてきた。
「コー…ザ?」
求めるものを、素直に湛える色に乗せて。
呼ばれちまったら、――――――――
両腕を、セトの肩の上あたりに突いた。
濡れるような光を佩く瞳を覗きこむ。
ぐ、と。とっくに熱くなってるモノを下肢に押し当てて。
「放してやろうと思ったのに、」
にぃ、と笑みが浮かんだ。
「…あ、ぃして、っから…いー、」
くぅ、と。唇が引き上げられた。
「セト、」
「…なぁん?」
視線のあわされた先から空気が熱さに撓んで溶け出しそうだ。
「警告、しとくけど」
「…ン?」
ちゅ、と唇に触れた。
「おれ、あンたに限度が無ェから」
舌を引き上げ絡める。
「んぅ、」
昨夜より、僅かにキツク。
貪ってみる。セトのなかを、存分に。
す、と首に回された腕がそれでも柔らかに抱きしめてきて、あまい舌をやんわりと食む。
頬に手を添え、自分の弱みさえ見せて。
口付けを深くし。
絡めたまま啜り上げられ、あぁー、まいったね、おれあまやかされてンじゃねえの、そう一瞬思考が掠めても、
それも、耳が拾う甘くもれる声に消されていく。
幾度も合わせる角度を変え。齎されるものを受け止めながら。
さらさら、となにかが背中を辿るのを意識する。背骨を伝いおりていく、指か。
濡れた音をたて、口付けを解き。それでも、と告げた。
「気、かわんねぇの……?」
ラストチャンス、だよ?セト。
「さっき、オ…マエ、愛し、合お、って言、った、」
掌に濡れた熱をいとおしむ。
「ウン、言ったね、おれ。たしかに」
あンたとはいつだって愛し合いたい、と本音をまたバラシタ。
「トレ、ニン…も、す、るけ、ど…、」
セトの甘い声が、身体の間、わずかな隙間を潤わせていった。
オマエもほしい、と。
欲張りなおーじなんだ、と。切れ切れにそれでも自慢気に告げるセトがいる。
「セト…、ダーリン・ベイビイ。イメージトレーニングできょうは我慢しナ?」
なぁ、いっそのことさ?
「ストレ、チ、だけは、こんじょ、でスル」
「あぁ、おれしてやろうか?アクロバティックなの、あンま好きじゃねェけど」
悪い冗談でも言わないと、愛しさでアタマがどうにかなりそうだ。
「コー、ザ、だ、てさ?」
「なに、」
掌が濡れ零れる感触にどうしようもなくウレシクナル。
「I'm… in love… with you, bloody deep, so… I burn… for you(オマエにバカみたいに恋してンだから、オマエに焦がれんの)」
「セト、提案」
オマエに欲情しないわけ、ないだろーが、と。浮かされたように艶めいた笑みで言われて。
ちょいと理性が片手を放したもンだから。セトの片足を肩に預けさせた。うーわ、やぁらけー。
ぴたり、と。胸と腿とがあわさる。
「なに、ダーリン?」
「愛に溺れて、焦がれてみねぇ?二人して、」
ふぅ、と甘い息を耳もとで感じ取る。
「バカみたいに気持ち良いことだけ、してようぜ?」
「…次、起きたら。真夜中でも、オレは…トレーニング、すっけどな。いいぜ?」
「フフン。あまいな」
にぃ、と笑った口許に口付ける。
「ダンサーの、オレのことも、あいしてンじゃ、ねーの?」
「あいしてるさ、そりゃあね?けど寝かさねぇもん、マイ・ディアレスト・セト?」
冗談めかして言葉にし。
言葉を返される前に、あンたのイイ声、そろそろ聞きたいから。
拓かせた身体に、体重をかけてみたんだけど。
「い、た、イタタタ、いたいって、こら、コーザッ!!」
「うーわ、色っぽくいこうぜ、ダーリン!」
わらっちまった。
「だぁ、いてェっての!!ムリ!マダ!ウェイト!!!!」
「やーだね」
おれは器用なの。
あー、おーじさま、暴れんなって。
「あ、く、イテ、ムリ!!てめェも一度ヤられてみろ!!!」
がぶう、と大猫に肩を噛まれた。名誉の負傷、「セトの噛み痕」。うわ、プレミアじゃねえの。
でもって、取り出しマシたるこの―――――
「セティ?濡れたら文句いいっこナシな」
「あー…痛くなかったら文句言わねェよ、」
わらって。アンプルの折れる音を立てた。
そのまま遠慮なく拓かせた奥に手を擡げ。金色をした中身が雫を作るほどにゆっくりと零れていくのに任せれば。
「んぁあ、」
イメージとしては、おネコさまの耳がきくり、と動いて。実際は、身体が芸術的にカーヴした。
蜜に濡れる中心ごと、撫で上げ。濡れた手をそのまま腿に滑らせた。
「ほら、溶け出した」
「んぅっ、」
身体を押し進め、キツイ中にゆっくりと身体を埋めていく。
濡れてヨクジョウした目が、それでも軽く睨んでくる。
「セト、あいしてるよ?もっと溶けよう…?」
「…ん、ぁっ、」
ぐう、とまた割り入る。
きゅう、と切なげに眉根が寄せられ。ゆっくりと目が閉ざされていく。
身体を僅かに倒す。セトの腕が届きやすいように。
「ふっ、」
やがて離れていた腕が首に回され。ぎゅう、と身体があわされしがみ付かれ、笑みを佩く。
なんだか、泣きそうだぞ?おれ。
――――くそ。すきだっての、セト。
「コォザ、」
「愛してる、セト。愛してくれて…アリガトな?」
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