片腕に抱くようにすれば、くうと背が撓るさまがキレイだった。
身体を落とさせている間、どこかひどく幼い表情がセトの浮かべるソレの下に、隠れているみたいだった。
拙い仕種と、それでも。
受け入れやがて誘い込むように絡みつく内との差、ギャップ。
一々、煽られる。
腰の上に、落とさせた所為で目線がわずかに上にある。目の前に晒されている、細い首。
ヒトの身体の描く線とは一瞬思えない。想像できうる限りで最上にウツクシイもの。
じわり、と。また自分の内に際限なく沸くものがある。
充たしたいという思いと、充たされているという実感と、愛情と渇きがすべて溶け合ったようなモノ。
緩く、取り込もうとする熱を押し上げ、触れあい熱くなったセトの肌の表面を悦楽が拡がっていくのが抱き寄せた
身体から伝わる。
「んっ、」
僅かに反らされるように伸びた首筋に歯をあてる。
「ぁ、」
肌に埋め込ませはせずに薄く表面を掠り。
渇いたように、浮いた汗を舐め取る。
「んぅ、」
とくとくと早まった血の流れを感じ取り。
腕の中で身体が一瞬、震えていた。
ああ、噛み破っちまいてェかもしれない、熱が思考になり。すぐに溶けていく。
ぐ、とまた奥を穿ち。
誘惑に負けた。
あまい肌に埋める。
「い、た、…っ、」
肌の下を流れる血の流れを感じ。
耳は、子供のような声を聞く。
じわり、と肌にまた埋め込み。同じように上げさせた腰を落とさせ、絡み取られるかと思い。
上がった声を宥めるように肌に浮いた痕を濡らし、擽る。
腕をまわされ。身体を一層委ねられ。
「こ、ぉ、」
吐息と混ぜあわされた、耳もとで言われたのでなければ聞き漏らすほどの声が呼んでくる。
目線を上げる、腰を押し上げまたかすかに跳ねる肩を掌で触れながら。
泣き濡れたように潤み、ヒカリを反射させそれでもあまく、蕩揺う眼差しと視線を絡ませる。
唇が、模る。
漏らされたのはおれの名前で。伝わる、これは。「大切なもの」を呼び、求める声だ、と。熱に浮ついたアタマの何処かで知る。
背の震える一点に押し当て、浮き上がろうとする身体を押さえ。抱いた。
抱き留めたなら。
蒼が見つめてきた。一心に。
どうした、と問うより先に左目の上、傷痕に不意に舌が伸ばされた。
「―――セト…?」
掠れた声が出て行った。
「…ん…?」
濡れた熱の感触、左目の上あたり。
間延びしたリズムで、触れられる。音にするなら、ぺぇろり、とでも言った具合か?
背骨に添って、肩口を撫でていた手を降ろして言う。
「ネコに戻ったのかよ…、」
く、とセトの背を揺らすほどに内を味わう。
「…にぃあ…う、」
ふにゃりと、蕩けた笑みで返され。
あ、ダメだ。いま。
血、おれンなかの。瞬間で蒸発。
気化した。
「ネコちゃん、」
耳もと唇を寄せ。耳朶をきつく穿った。
「んなぅッ、」
「――――噛むなよ…?」
「んぁっ、」
腿の下に掌を滑らせ、掌に火照った肌を馴染ませ。
片手、気が遠くなるくらいに出来上がった腰の線を味わってから半身を引き上げさせる。
「んっ、ア…ッ?」
「動いてみる?」
「…ン、」
言葉で擽り、舌先といっしょに耳元に潜り込ませる。呆れ果てるくらい、あンたにヨクジョウしてる声だ。
判る?
こくん、と頷いたセトに、ココロの中で問い掛ける。
「コ…ォ、」
「なに、」
上向けたカオ、額に。ちゅ、と口付けが落ちてきた。
セト、と。言葉に出来ずに名を呼ぶ。
「…I love ya, Coza,」
額をあわせられ、間近で蒼がとろり、とあまいヒカリを浮かべたまま、ゆっくりと笑みを乗せ。くう、とまた肌があわされ、
蒼が覗き込んでくる。
舌を伸ばし、セトの唇をなぞった。
セト、と。声に乗せる。
「も…と、さわ、って、」
声が揺れていた。
そろ、と自分から腰を持ち上げ、ゆっくりと落としていた。
「オ、マエ、で、みた…して、」
じわり、と割り拓く感覚に息が詰まる。
思う様、捕まえ突き上げたくなる凶暴な衝動を押し殺す。
「ぜ、んぶ、そ…め、て?」
ゆっくりと、引き戻される内の熱に煽られる。押しとめたくなる。
「―――セト、」
抗いきれずに、両足を掴んで押し戻したくなる。
揺るく熱を穿ち続けるなか、背骨の終わりからつづく線を手に押し込める。
じわり、と掴むように割り拓き、もう知った最奥に掠めさせる。
耳が捉えるのは、呪文じみた睦言で。
切れ切れに囁かれる。短くあがる吐息と一緒に。
「血の色まで、オマエで染めて、みんなオレがオマエのだってわかるくらいに、」
零される、模られる。
悦楽を隠さず滲ませた瞳が、その間中あわせられ。
あンたを味わうのと同じくらい、あンたもおれのこと喰ってるンだね、――――イイじゃねぇ?
ゆっくりと、揺れる半身を腕にやんわりと抱き。
ハラの間に濡れ零れる蜜の感触に口許が吊りあがっていく。
「セト、」
なかなか、上手、と。耳の下、薄い皮膚をじわり、と吸い上げ歯を立てて告げる。
「ンン、」
喘ぎ声に紛れて。
齎された言葉を思い返す。
オマエの疵も、痛みも、何もかも、オレが喰っちゃうから。
オマエはオレの泪と甘いもので満たされて。
―――――マイッタ。あンたの情の深さに。そして、それが惜しげもなく与えられるのはジブンなのか、と。
今更ながらに、酷く驚いた。いままで、感じたことのないほどの幸福感。
「Seth,」
呼んでみる。
「なぁ…ん?」
You're like super nova, oracle in the middle of the blue sky,歌うように告げる。
唇を啄ばんでくるのに、半ば笑い出しそうになりながら。
セト、あンたはまるっきり。
スーパーノヴァ、蒼穹のまン中に湧き起こる奇跡の神命。
世界の終わりにきっとおれは、あンたのことを探して。愛していると言って。
えらく幸福なキモチで抱き合えるといい。
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