快楽に濡れて、悦楽に理性を手放して。狂っちまおう、そう言った。
美しい身体、快楽に従順で、貪婪。サイコウ。
ただの、肉の快楽ってだけじゃなく。アタマのなかでも何度も白光する、むしろ。
赤光?血の色に滾るほどの悦楽。
天国だろうが、地獄だろうが、いまは関係なく。
しなやかな身体を仰け反らせ、快楽に震えて。セトの嬌声だけが聞こえる、身体を繋ぐ音と。
蜜を零し続け、熱く震えっぱなしの昂ぶりをおれの手は、ずっと戒めたままで。
セトの懇願が入り混じった声で、名を綴られ。
あぁ、バカだね?セト
そんな風に、言われちっまったらさ?もっと言わせたくなるに決まってンだろうに。
イキタイ、イカセテ、って。
おれの、欲望のすべてをあンたにいま、やっちまってる。
「こ、ぉ…ッ、も、ャ、あっ、ン、ああっ、」
抑えられない喘ぎと、嬌声がすげぇ、イイって?
汗に濡れた腿に挟み込まれて、幾度も声を上げる途中で首から滑り落ちる腕も。
内を乱すたびに漏らされる、おれを呼ぶ声も。
短く切り揃えられた爪が、線を引ききれずに何度も背中を縦に走る。
「セト、」
「ア、アッ、」
身体を一層引き上げさせ、ずる、と足が身体の横を滑り落ちる。
あぁ、あンた。溺れてくれてるンだ、波に。
なかから湧き起こる熱に?
「ゃ、ああああっ、」
滑った足が、リネンで跳ね上がった。
戒めている手の中で、耐え切れずに零されないまま、放たれることの無いまま、セトが吐精した。
ぽろぽろと、涙が留まらずに眦から零れ続けて、濡れ光る身体が弓なりに反り返り。
締め付けるチカラに、セトの血の中にまで入り込んで突き乱しているだろう快楽の欲深さを知る。
喉奥、息が詰まりそうだ。
快意と痛みの奇妙な混ざり具合、あぁ、御互い様?
さあ、と朱に染まった身体。
苦しい、と訴える喘ぎ、それでも。あンたはキレイだよ?
腕を伸ばし、セトの泣き濡れて熱い頬に触れた。
「ハッ、はッ、くっ、うゥっ、」
締め付けてくるなかを、身体を引きながら。
ぎゅう、と眉根が寄せられる、快楽に歪むカオ。
リネンに踵を滑らせていた足をまた捕まえる。ウン、逃がさないよ?あンたが寄越してくれるものはなに一つ。
だから、セト、あンたも?もっと溺れちまいなよ?
そんなことを思う自分をわらった。
「あ、あァッ、こ、ぉッ、こ…ぉッ」
熱の引ききらない身体をまたゆっくりと擡げさせる。
「い、ああああっ、」
ジブンの身体で押し上げるようにしながら。両膝をリネンに突くまで折らせれば。掌中で、まだ高まったままのセトが
跳ね上がって。
溜め息混じりの、感嘆。
快楽の欲深さに。
「セト、」
緩くなかを穿った。
手指で張りつめた皮膚を宥めながら。
「ふ、ぅ、んあああっ、」
「セト、キモチイイ……?」
声に出してみる。耳に届かないだろうな、とは知っていても。
「ふ、ぅっ、く…ッ、」
押さえ込んだ腿に指先を埋める。
声が揺れている、拓かせきった身体も、多分ココロも。
「こ、ぉ…ざぁッ、」
声に流される。
引き攣るように締め上げてくるなかを遡り、熱く拓かれた縁までも押し戻して。
求められるまま、望むままに穿ち。
赤のヒカリが過る。
「あ…っ、あ…ッ、ア―――――ッ」
ぐ、と喉奥で押し殺され、歯の間に編み締めるのは、自分の息に紛れたケモノじみた唸り声だ。
耳が拾うのは、至上のウタ。
痙攣するように、震え始めた肢体を身体で繋ぎ、手指で昂ぶりを握り。
とうに午後を過ぎた明るさの中、遮るものなどなにもない視界の中、泣き濡れて快楽に鳴くさまと。
閉ざすことを忘れた、蕩けた氷の蒼があった。
溶けそうだ、アタマから。
天に向かって穿たれた二つの眼窩、光が反射して。
引き絞られ、波を一つ、奥へ突き入れてやり過ごし。
「ぅ、あ、ア―――――ッ、」
極上のウタ。
手指の戒めを解く前に、とろ、とまた零れ出て。
熱を放してやりながら。
両腕でセトの半身を抱き寄せるのと、溢れ出す蜜が身体の間で溢れるのと。
びく、と跳ね上がる身体、拓かせた奥にまで突きいれ注ぎ込むのと。
なにもかもが、同時で。眩暈がした。
腕を放し、突っ伏して抱き込む。濡れてぐちゃぐちゃだね、お互い。
くたり、と。身体を繋ぐ線が途切れたみたいに。
意識を手放したセトがいた。
四肢が、くったりと投げ出され。
ふい、と沸いた連想が。やはりギニョル、人形。
可愛がりすぎて、こわれちまったって?
フン。
ハズレ。独り言に独り言で返す。頭ンなかで。
愛情をこめておたがいぶっ壊れて、またすぐに元通り、ってヤツ。
ぐい、と抱きしめる。
髪にハナサキを埋めて。
跳ね上がった鼓動と、呼吸が収まってくるのを感じながら陽射しで時間の見当をつけた。
―――うん、オーケイ。じゃあ、かるいブランチでも用意させとくか。頭の中で、バスから出たら丁度良いタイミングを計ってみた。
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