く、と。
右肩辺り、セトの指先が縋るようにして掴んできていた。
時おり、力が込められ。右手は伸ばされてソファの背を同じように掴んでいるらしかった。
「ん、あ、」
身体の上に蹲るキレイな良き者。
快楽を声が伝えてくる。
深くまで呑み込まれて、絡みつく熱さに渇いた。
けれど、まだ。漸く身体が触れるまで受け入れたばかりで、立たせた膝がひくり、と揺れていた。
腕の伸ばして火照った頬に添わせて、その熱を指先で味わって。
僅かに眉根を寄せて、キツソウな。それでも同じだけの割合で確かに快楽もそこにはある、潤んだ瞳が見下ろしてきていた。
す、と。目をあわせたままで、頬を辿る。
「…コォザ、」
不意に意識を掠めた。
抱きとめられているのだな、と。
掠れた甘い声が、耳に心地好い。
「なに、」
首筋に添って、頬から手をすべらせた。
とくり、と跳ね上がった脈拍を捕まえて。薄くわらった。
「キモチイーヨ、」
セトの甘い声が降って来る。
「オマエでオレのなか、イッパイダ、」
緩やかに、身体を押し上げた。
そうなんだ、おれだけなんだ?「いま」は。
「ん、あン、」
「セト、」
「…んぅ、」
くう、と一層縋りつく指先を感じる。
ゆらり、と蒼が揺らいでいた。見惚れた。
空いた手を膝に添わせるようにし、撫で下ろすように滑らせれば。
ゆっくりと腰を上下させながら見下ろしてきていた蕩けたアイスブルー、それが静かに瞬いた。
滑らせた掌を肌に留めて吐息に混ぜて名を呼んだ。
「あ、ァ、」
少し仰向いたセトから喘ぎが零れて。
掌の下で、熱くなった身体がゆっくりと上下していた。
触れたい、と衝動。
辿らずにいてもじわりと蜜に濡れる熱の中心、そしてこの身体を通して触れられるセトの統べて。
僅かに揺れたのがわかる自分の声が、セトの名を模っていた。そして伝える。
キモチガイイネ、と。
中も外も、とにかく、ぜんぶが。
目をきつく閉じて、沸き上がる快楽に身を浸して、貪るようなソレに緩やかだった動きが変わって。
くう、とセトが口端を吊り上げて喘いだ。
セトの半身を、支えるだけだった手が。きつくその身体を掴んで。
身体を僅かに前に引かせ。
身体の跳ね上がる位置を中から突く。
「あ、ンン、」
喘ぎが零れる唇が、ひどく熱い吐息を間近で漏らし。
噛みあわされる前に舌先を伸ばして濡れるような赤を引き出させ。唇の触れる前に絡み合わせた。
「う、んぅ」
頭を片腕に抱え込まれて、喉奥でわらった。
内に誘い込めば、遠慮なく貪ってくる。同じだけの狂おしさでセトの半身を穿ち、跳ね上がる身体を押さえ。
間近で一度蒼が表われ。そのなかに自分が映される。閉じ込められていた、溶けた蒼の中に。
すげ、――――悪くねェな
あンたの中になら、取り込まれても
身体を引き上げさせ、また深くまで受け入れさせる。目をあわせたまま。
ゆらり、となにかが蒼を過って。瞳が閉じられた。
アイリス・アウト。
セト、と。
縋る腕の強さにわらった。
抱いてるんだか、抱かれてンだかこれじゃ、わからねェよ?
酸欠、かもしれない。
上がるばかりの体温、貪り、貪られる唇。
吐息。
呑み込み、穿たれ、齎される快楽は。
恐ろしく純粋に、キモチガイイ。
ぎゅう、とウェストを掴まれ、跳ぶのを阻まれてるみたいだ。
「う、んぅ、うン、」
口付けて、唇を合わせて尚、声が漏れる。
嬌声。
甘ったるい、快楽に塗れてる。
下から力強くポイントを抉られて、ぐらぐらと血がエクスタシィに沸き上がる。
「う、ゥんんん、」
思考、ストップしたまま。
熱に翻弄される。
身体が要求するままに、身体を上下させる。
「く、ぅん、」
する、と手、汗に濡れてつるつると触れ合っていた肌の間を滑り落ちて行く。
く、とオトコの腹に擦りつけていたモノに触れられて、無意識に口付けを解いた。
「あああ、」
頭で閃光、身体を電流が走る。
喘ぐ、空気を求めて。
また落ちていく感覚。
落ちると同時に浮上するパラドックス。
「あ、ああ、ふ、くぅ、」
濡れた音を立てて、昂ぶりきったモノを熱い手指に絡め取られる。
仰向いて曝け出した首元に、鋭利な熱。
牙、柔らかく立てられて、身体が跳ねた。
「こぉ…っ、」
渦巻く快楽が、出口を求めて体内を暴走する。
ぐ、と昂ぶりを握り込まれて、更に奥から激しく突き上げられた。
「こ、ぉ…ッ、」
息が苦しい。
ぎゅう、と引き絞る。
それでもキモチヨクテ、止まれない。
「こぉ…おざ、」
根元、きつく抑えられて、ぐる、と快楽が一度通り過ぎた。
首筋辺り、熱い吐息が掠めていく。
泣きたくなる。
ひくい唸り声、
「ア、あッ、ア…」
押し開かれる、
刺し貫かれる、
落として呑む込む、
あつい、よぉ…、
「ハ、あああ、」
「セト…っ、」
耳が拾い上げる、セクシーな声。
息、上がってる、ああ、声だけでイキソウ、
「こ、ぉ、…も、…ィくッ、」
縋りつく、肩に。
濡れた音、そこかしこから。
リズム、めちゃくちゃ、
本能のままに貪る、オトコの総てを。
「も、コォッ、イキタ…ィ」
ぐい、と身体を引き上げられた。
グン、と落とし込まれ、奥深くまで内側、抉られて。
強すぎる快楽、身体が震えて。
「や、あああああッ、」
びくり、と身体が跳ねたのを自覚した。
それから、熱波。
ざあ、と身体中を熱が暴走し、イったのを自覚する。
止める間も無く。
「ひ、ぅ、うんんッ、」
ぐ、ともう一度押し込まれ、仰け反る。
奥を蜜が迸っていくのを、その熱さで感じ取る。
「あああああっ、」
何度も身体が震える。
腕に抱きとめられながら、咥え込んだモノを搾り取る。
喉奥に留められたオトコの声が、蕩けたアタマに鮮明に届いた。
「あー……ッ」
ハ、ハ、と荒い息を繰り返しながら、ストップ・モーション。
感じすぎてフューズが跳ぶ前に、少しクールダウン。
「せと、」
掠れた声、甘い声、ああ、ドウシヨウ、
感情が溢れる――――――
「…ッ、」
息を呑んで、オトコの首に回した腕に力を込めて縋りつく。
ぐう、と抱きしめられて、場違いにふわん、と幸せになった。
くちゅ、と濡れた音が耳に届いて、
あ、悪い…オマエにかけちった、エンリョナク。
気恥ずかしさに、口端に笑みが勝手に上った。
「あっちいね、セトの」
囁かれて、オトコの背中を引っ掻いた。
「ア、タリ、マエ」
切れ切れに掠れた声…あ、オレの声?他人のみたいだ、
くくっとコーザが腕の中で笑った。
揺れた拍子に中で蠢いたものに、ぐ、と喉を鳴らした。
意識が少しずつ戻ってくる。
熱くなりすぎた身体と、快楽に沸き立って残った気だるさを認知する。
すい、と頤をあげるように仰向き、頬に口付けられた。
「……き、もち、よか…た、」
体重預けきって、漏らす感想。
僅かに、く、と中に埋めたままだったものを動かされて、息を呑んだ。
「いまもきもちいいよ、」
蕩けた声、耳に甘く、ストンと腰に疼きを齎す。
「っく、」
あ、うわ、身体震えるって。
「こんなに感じたことねェよ…?」
ああ、ナンテコエしてるんだオマエ。
ああ、だからもう、…あああ、
「…コォザ、」
ふるっと身体が震えた。
「セト、」
かあ、と熾き火を煽られる。
感情に彩られた声。
Don't need to say anything, I understand you.
なにも言わなくてもいいヨ、わかるから。
ぐう、と抱きしめられた腕に、さらに強く引き寄せられる。
首元に、コーザが顔を埋めてきていた。
甘く気だるい指先で、湿った砂色の髪を梳く。
過ぎ去った快楽の激情と同じ深さ、けれど対照的に穏やかで優しい感情を分かち合う。
まだ熱い息が、長く漏らされた。
こつ、と頭を引っ付けて、髪を梳きながら目を閉じる。
ああ、オレも。
こんなに気持ちいいのは、初めてだよ…?
オレの中にある愛情が。
こんなに深くなり得るって知ったのも、初めて。
与えられる隠さない劣情と、深く甘い愛情を。
こんなに素直に明け渡されるのも……初めてだ。
「このままベッドいってイイ?」
とろ、と蕩けた甘え声。
セト、と名前を呼ばれ、する、と擦り寄られる。
Darling, why ask?
「ダメって…言うと、思うか…?」
ふふ、と勝手に声が笑う。
あむ、と首元を唇で食まれた。
「んぅ」
甘ったるい声が、勝手に零れる。
「もう、夜だよ、コーザ…」
約束、覚えてるだろ?
「んー?ン、」
「Take me to heaven, darling」
オレを天国に連れてって。
もう既に、入り口に到達してるけどさ?
「Take me higher and higher, Coza, and let's dive」
きゅう、と抱きしめられて、抱きしめ返した。
もっと高いところへオレを連れてって。
そんでもって、一緒にダイヴしよーぜ、なぁ…?
「Until the sun rises again, until we breath our last breathes」
甘い声が告げてきて、零れ落ちるままに笑みを浮べた。
「Certainly, my beloved one」
"陽がまた昇るまで、最後の吐息を混ぜ合わせるまで。"
"もちろん、おれの愛する人。"
ぎゅう、と抱きしめあってから、口付けを交わした。
ああ、もっと。愛し合おうな………。
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