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 芸術品、という言い方は嫌いだと脈絡もなく浮かんでくる。至極自分勝手な願いを受け入れられた後で。
 ミューズにこそ愛されていることは間違いなくても、この存在は芸術品などじゃなくて愛して止まないものであって。
 手前勝手な独占欲だろうがなんだろうが、知らないな、と思い当たる。手指に、熱い蜜を受けて、小さく喘ぎ、蒼氷色が揺らいで蕩けそうにあまいのを見詰めたまま。
 腕のなかで小刻みに震える身体を、片腕で抱きしめ。
 まだ熱いままの中心を撫で上げて、荒く継がれる吐息を舌先で押しとめ。
 濡れて潤む視線が逸らされないことに笑みを刻んで。
 ほんの少し乾いたようだった唇、火照って淡く色を乗せていた唇を自分の舌先で濡らしていくようにしていたのを邪魔する。
 きゅ、と濡れた手のまま熱を掴み、ひくりと震えるサマを味わって。
 舌先を伸ばして、引き上げた手指を舐め上げる。セトから少しばかり身体を浮かせて。
 「−−−−−ん、あっちィね」
 かり、と。セトの整えられた爪で背中。ちょうど肩甲骨のところを引っかかれた。
 笑みが勝手にこぼれて来る。
 大猫サマ、だね、セト。
 手首まで零れた最後の雫を舌先で掬い上げれば。蒼が何処までも色味を深くし、それでいて眩暈がするほど透明で。そんな眼差しがおれをまっすぐに見上げてくる。
 なに、と。問う代わりに口端で微笑む。
 「オレにもノマセテ、オマエの……、」
 く、と。背中に指先が埋められる。
 「んー…?」
 舌先に乗る、濃密な香りは情欲を確かに煽るけど。
 ぺろ、と。赤い、薄い舌先が。セトのソレがおれの指先を辿ってくる。
 「こぉら、」
 指先で、唇を少し割れば。緩く開かれた狭間に、ほんの少し舌上に指先を押し当てる。
 セトの手がする、とその間にボトムスの上から触れてくるのに、く、と小さく笑う。
 てろり、とゆっくりと指を含み浅く舐め上げられ。
 その熱さに、体温が上昇する。
 欲しい、と全身が言葉にするより明らかに雄弁に伝えてくる。
 一ヶ月の、不在と。
 初めての、失点と。おれにとってはセトの舞台を逃したのは悔しいけど失態だから。
 朱をはいて、肌も、息も。熱くなっているコイビトが望むことは叶えてやりたい、ってのは真実だ、が。
 「嫌だ、って言ったら?」
 セトの鎖骨から肩口までさらさらと掌を沿わせる。
 返答を貰う前に、濡れた舌を指先で軽く挟むようにしてから、唇まで戻す。
 「オマエが、ヤ、なら。しないよ、コーザ、」
 ふ、と。以前、セトを始めて腕に抱いたときに交わした言葉が記憶をクリックする。
 する、と。指先に唇を寄せながらセトが小さく言葉にする。
 背中に腕を回して、緩く引き寄せながら蒼を覗き込んだ。
 
 「イイよ?」
 額をあわせて、言葉にする。
 ふ、と熱い息を零してセトがわらう。
 「セト、あンたの望むことなら叶えてやりてェじゃん」
 「ん、」
 どこか嬉しそうな声が返されて、額をまた押し合わせた。
 つうか、別にいいんだけどさ?
 する、とセトの火照った手が脇腹を撫でて行って、そのたおやかなしぐさにまた愛情が引き起こされる。ボトムスを寛がされてくのに、溜息に混ぜ込んでまた小さく笑いが零れる。
 あぁ、そうだよな。あンたも「餓えてる」ってことだよな。
 さら、とボトムスの感覚がなくなっていくのに、幾つか思い付きがアタマのなかに浮かんでくる。
 「せーと、」
 奇妙に熱心に引き下ろし中なセトに声を掛けて。
 薄い、アイスブルーがキラキラと潤み光を弾いて見上げてくる。
 「下でイイの?」
 とん、と頬に唇で触れる。
 「んん?上のが遣りやすい、かな?」
 さら、と火照った頬を指先で擽って、セトに笑いかける。
 「普通はね?」
 「ん。じゃあ入れ替え?」
 ふにゃ、と柔らかに、それでも内に熾る熱情はそのままにセトが笑ってくる。
 「ドウゾ」
 軽く抱き上げて、そのままリネンに背中を着ける。
 「あンた軽いし」
 くぅ、とセトが唇を引き上げて、ちゅ、とキスが落ちてくる。
 「肌が濡れても、ちっとも重くならねェし」
 しなやかな、としか表現できない、セトの造形が。身体の上をゆっくりと降りていくのを視覚で味わう。
 
 ところどころ、唇で触れられて。猫にさらりと舐められる感覚とどこか重なる。
 肌に、柔らかな髪が当たって実はくすぐったい。
 下肢にボトムスは滑っていく。ハハ、脱がせるのも実はウマイんだね、セト。
 タイミングを勝手に計ろうとしていたなら。
 火照ってもさらりとした感触のままの掌に中心を包まれて、口角が上がる。
 すい、と視線を投げれば。下腹あたりにちゅ、と唇で触れられ。さらさらと肩口からブロンドが流れ落ちた。まるで、シルクの束だ。
 挨拶めいて軽く唇が触れる感触に、ふ、と熱が僅かに上がる。
 仕草の一々が猫に重なるのもどうだろう?
 さり、と天辺を舌で辿られ。く、と喉奥で笑う。
 おれの視線を感じ取っていたらしいセトが、すい、と視線を跳ね上げてき。
 目元でわらって答えれば。ふにゃ、とあまい笑みを浮かべてそのまま唇で触れられ、その熱さに眼を細める。半身を引き上げて、セトの肩口を辿り、髪に指を絡める。
 「すげ…、気持ちイイ」
 浅く含まれたままで、濡れた舌先が辿る感覚に。
 コレが巧かったら逆に萎えるね、ってなモンで。男ってのはどうにも自分勝手なイキモノだ、と半ば呆れながら、指に金を絡めて。耳朶の柔らかな感触を指先で味わって。
 唇が開かれ、奥まで含まれていく。緩く吸い上げられて愛しさが込み上げる。あぁ、くそ、セト、あンたかわいすぎだっての。
 頬が淡く色づいて。どこか懸命な様子が。
 あー……カミサマ。そろそろ、あー……勝手していいかね?おれも。
 「セト、」
 まさに、猫撫で声一歩手前だよ、我ながら。
 また少し、腕を伸ばしてセトの肩から腕までを撫で。
 舌で押し上げられたまま、蒼が引き上げられ。唇も、手指も。濡れてる様子にダイレクトに煽られる。
 勝手するからな、と声に出さずに。
 ひょい、と身体を起こして。セトの緩く投げ出されていた両足を捕まえて、に、と笑みを一つ。良くわかっていないブルゥがそれこそ犯罪だってくらいカワイイ。
 
 「クワセロ、あンたのことも」
 きょとん、としたままの蒼。
 あ、もしかして。
 コレはおれはまた世界有数のラッキーなヤツってことか。
 あぁ、だめだ。顔がにやけるぜ?
 「向き、変えてくれるだけでイイから」
 する、とふくらはぎから撫でれば。
 吸い上げられてから、唇が浮き。
 向き?と酷くイノセントな声が呟くのを聞く。
 肘をベッドについて完全に半身を起こして、セトがかああ、っと朱を上らせるのを堪能する。
 「イエス、夢で見ない代わりにね」
 する、と足を捕まえ直して。に、と笑みを刻む。
 あー、クソ、あンたカワイイしどうしようもねえよ。
 
 
 
 足、捕まえられて。
 言っている意味を理解する―――――本当に?
 「カオ、跨ぐのか……?」
 ああ、声が出ないって。
 ホントにか?マジかよ、うわ――――――オマエ、嬉しそうだね……?
 ぺろ、と。ゆっくり自分の唇を舐めて濡らしているコーザを見詰めた。
 マジ?ホントにするのか?つうか――――初めてだらけダ。
 逡巡し、何度か姿勢を変えかけ、躊躇し。
 セト、と。酷く甘い声に促される。
 絶対困ってるカオをしてるオレに構うことなく、コーザがさらりと脚を撫でていく。
 「……っ、」
 デモ。オマエ、オレにさせてくれてるもんナ?
 俯いて、目を閉じて。
 それから、ゆっくりと身体の位置を移動する。コーザの脚を跨いでいたのから横にずれて。
 それから、目を開けて、コーザを踏まないようにして脚を引き上げれば、く、と強く掴まれて、勝手にびくりと身体が跳ねた。
 困り顔のままコーザを見詰め、ゆっくりと片膝でコーザの顔を跨ぎ。
 くう、と開かされ、身体を落とすようにそうっと押される。
 ぺた、と上半身を恋人の下腹部に合わせて、どうしても浮き上がる腰を下ろしていく。
 ふ、とコーザが吐息で笑った。
 「ふ、ぁ、」
 かああ、と。羞恥心がアタマを走り抜けていく。それでもソレはなぜか快楽へと繋がり。
 はしたなく零してしまいそうで、キツく目を閉じた。
 ぺろ、と舌先が押し当てられ、びくんと腰が跳ね上がる。
 「う、ぁ、」
 ちゅく、と吸い上げられて、熱い息を吐いた。
 ず、と動かした手の先、触れた熱の熱さに、びく、と肩まで揺れ。
 更にぐ、と身体を落とさせられ、深く吸い上げられて低く呻いた。
 ゆっくりと、コーザの熱の手触りに目を開けて。
 ぐらぐらと視界が揺れる中、蜜を零すコーザの昂ぶりを根元で捕まえて、そうっと口に運んだ。
 コーザがしているように奥まで含み。
 コーザにされているように、仕草を真似て何度か首を上下させる。
 
 「ん、ぅ」
 くぐもった声が勝手に漏れていき。コーザが、ふ、とまた吐息で笑っていた。
 くちゅ、と吸い上げて舌を絡めれば。蜜を零していた先端を舌先で割り開かれて腰が跳ねた。
 「ふ、んん、」
 ぐら、とアタマが揺れる――――こんな体勢になるなんて……うわあ。
 熱い指先が、する、とヒップに触れてきて、またびくりと身体が跳ねる。
 「ん、んんん」
 ぐ、ときつく吸い上げられて、沸き起こる深い快楽に知らずに声を洩らす。
 それだけにアタマの中を侵食され。けれど口は休めずに、コーザの熱を吸い上げる。
 軽く唇で挟んで上下させる度に、口端が擦れるのに眉根を寄せる。
 ず、と更に脚を割られて。
 その拍子に喉の奥まで含んでしまい、低く唸る。
 熱さと、息苦しさに。思考がぼうっとしてくるのが解る。
 溺れたい、と言ったから。なにも考えられないようにしてくれてるのかな……?
 ちゅる、と熱い口中から引き出される感覚に、ふ、と深く息を洩らす。
 そのまま、根元を手指できゅう、と絞られて、思わず鳴き声を洩らす。
 「んんぅ、」
 一度口から出し、深く喘げば。
 柔らかな精嚢を唇に食まれ。とろ、と熱い舌先に濡らされ、柔らかいところを吸い上げられて、びくんと腰を揺らした。
 コーザの熱を握ったまま、それに唇を押し当てて、声を上げる。
 「ふ、ぅぁ……あ、」
 てろ、と濡れた感触が先端に戻り。蜜を吸いだすように小刻みに舐め上げられて、何度も腰を揺らす。
 「は、ぁあ……ッ、」
 快楽がアタマの中を一色に染め。
 けれど、手の中の熱に意識を繋ぎとめられ、それをそのまま口に含みなおす。
 くう、と時折ヒップの奥に指先が掠める感覚に。
 何度も無意識のうちに入り口が蠢くのを自覚する。
 
 「ん、んんぅ」
 片手で根元を押さえたまま、抑え込む必要のないくらいに力強い熱を啜り上げる。
 ちゅ、と強く吸い上げられて、じわ、と勝手に蜜が溢れるのを自覚する。
 く、く、とリズミカルに刺激を送り続けられるのに、頭の中がぼうっとしてくる。
 それでも、それを無視して夢中になって舌を絡めながら、頬張った熱を吸い上げ続ける。
 「ん、っく、ぅ」
 何度も喉奥を突くくらいに含み。
 けれど、リズミカルに吸い上げられ、求められるのに、くぐもった声は零れ続ける。
 き、と尖ったエナメルが微かに熱を掠めていくのに、びくりとまた勝手に身体が跳ね上がった。
 きゅ、と根元を押さえつけられ。んぁ、と声を上げた。
 「ホシイ?」
 低い声が情欲を滲ませて聞いてくるのに、かあ、と全身が熱くなる。
 口から熱を出し、それに頬を寄せて。
 は、と深く息を吐いてから、小さく頷いた。
 「ホシイヨ、こーざ……ッ」
 「じゃ、エンリョなく、」
 囁くような声に、アタマの中でアラートが勝手に鳴り響く。
 どうされるのかがわからずに、またコーザの熱を奥深くまで含んだ。
 ぐう、と更に自分の腰を落とさせられて、びくりと腰が跳ね。
 きゅ、と熱を吸い上げるのと同時に、じわ、と熱いものが口中に齎されて、んぅ、と唸った。
 じわ、と零された蜜を、熱を咥えたままどうにか飲み干せば。
 ぐ、と濡れた指が奥に差し込まれ。
 ぐる、と視界が一転したかのようなイメージに襲われる。
 「んんん…っ」
 ぐ、と中の一点を押し撫でられ、びく、と腰が跳ね上がる。
 くく、とコーザが喉奥で笑ったのにも快楽を引きずられて。
 「ぐ、っ、」
 喉奥を突き上げる熱をきつく吸い上げた。
 ぐ、と軽く下腹部を押し上げられ。太腿を柔らかな髪にブラシされて震え上がった。
 そのまま、ぐ、とヒップに歯を立てられて、びくりと身体が跳ね上がる。
 「あ、や…ッ」
 思わず顔を跳ね上げ、背中越しに恋人を見遣ろうとすれば。
 てろ、と舐め上げられ、びくりと腰が揺れた。
 そこをまた、がぶ、と噛み付かれ。
 「や、いたぁ……ッ」
 びく、と逃げ出そうと勝手に身体が動く。
 ぺろり、と舐め上げられて、またコーザの熱を口に含み直す。
 そのまま片手で熱を揉みしだかれて、コーザの下半身に顔を埋める。
 「ん、ううう…っ」
 びくびく、と身体が勝手に跳ね。
 快楽がアタマの中で渦巻いて、飛び出し口を探して体中を走り回る。
 
 つう、と普段は閉ざされた場所に舌先で辿られ、くう、と恋人の脚に爪を立てた。
 ぐら、とアタマがさらに揺れたかと思えば。ひょい、と身体を起こした恋人に身体を抱えなおされて。
 「やっぱセトの顔みてェわ」
 そう言って、すい、と仰向けにされる。
 一瞬顔をのぞきこんできた恋人が、そのまま膝を引き寄せ、口付けてきて。
 「あ、けどまたノミタイ?」
 そう言って、にぃ、と笑った。
 「おれまだ全然たりねェけど、セトの」
 潤んだ視界のまま、恋人を見上げ。
 小さく頷く―――――だって、オマエまだ、ちゃんとイってない。
 「もっと、ほし…ッ、」
 こくん、と唾液を飲み込んで、そうっと手を伸ばしてコーザの頬に触れる。
 「ありゃ、マジ……?」
 目元で、ひどく楽しそうに笑った恋人に、酷く焦がれる自分がいる。
 「コーザ、ほしいよ」
 上体を軽く起こし、恋人の唇に口付ける。
 「オーケイ、」
 「ん、」
 に、と笑った恋人に、ふにゃりと笑みを返して。はむ、と唇を軽く啄ばむ。
 「じゃ、続き」
 すい、とリラックスして積み重なったクッションとベッドボードに寄りかかり。
 ドーゾ、と言わんばかりに、にっこりと笑顔を浮かべた恋人を見詰め、ふ、と笑った。
 悪戯はシマセン、て顔してるけど――――ま、いいか。
 伸ばされた足の間に身体を滑り込ませれば。
 「がう、」
 なんて言われて思わず笑った。
 くすくすと笑ったまま、上体を屈めて。逞しい脚に縋るようにして、顔を埋める。
 根元をまた手で押さえ込み、先端を舌先で割って蜜を拭い取り。それからまた奥までゆっくりと頬張った。
 「セト、」
 甘やかすような声に呼ばれて、ちらりと視線だけ跳ね上げて咥え込んだ熱に舌を絡ませる。
 さら、と優しく火照った肌に触れられ、とろりと視線を和らげた。
 くん、と更に熱くなった昂ぶりを、リズムを刻みながら吸い上げる。
 ぢゅ、じゅぷ、と音が立つのに意識を半分乗っ取られながら、頬や耳元など撫でられる感触にうっとりとなる。
 一度口から出して、キャッツアイにじいっと見詰められているのを感じ取りながら、根元を押さえた指のところまで、てろりと舐め下ろす。
 少し細められた目線に微笑を返し。小さく吐息で笑った恋人の熱を、横からはむ、と食んでから。再度奥まで迎え入れる。
 「ん、んむ、」
 く、と軽く喉奥を突かれて。
 ふ、と意識が浮き上がる。
 歯を立てないように意識しながら、何度も唇で挟みつつ、吸い上げていく。
 「セト、」
 キモチイイ、とコトバにはせずに伝えてくる恋人の熱に舌を絡ませた。
 く、とまた喉奥を僅かに押し上げられて、んぅ、と軽く呻く。
 とろ、と口端から唾液が零れ落ちていくのにも構わずに、何度も強弱をつけて扱き上げて。
 手指で頬や唇を撫でられるのに、さらに意識を集中させて頬張る。口端を指で拭われ。
 ぴちゃ、という音に恋人がソレを舐め取ったのを知る。
 
 「んん…っ」
 ぐ、と喉奥に押し込まれ。アタマが一瞬軽いパニックに陥る。
 そのまま、爪先で下肢を押し撫でられ、びくりと身体が浮き上がる。
 「ふ、ぅー…っ、」
 「セト、」
 きゅ、きゅ、と吸い上げながら、生理的な涙が溢れそうになるのを。目をきつく閉じて堪える。
 名前を呼ばれ、その声が腰の奥にまで響くのに、びく、と身体が勝手に跳ねる。
 そのまま、ぐ、と喉奥にまで押し込まれて、ぐう、と咽を鳴らした。
 じわ、と口中を満たすものの勢いに、僅かだけ慌てる――――わ、あ。
 少しずつ熱を口から出しながら、酷く熱いとろりとした蜜が溢れそうになるのを堪えて。
 ふる、と最後に軽く震えた恋人の熱から、新たな蜜が放たれないことを確認してから、そうっと口から昂ぶりを放した。
 さら、と身体を宥めるように触れられ。
 愛おしい、と細められたキャッツアイを見詰めながら、こくん、と咽を鳴らして嚥下した。
 ぐ、と引き上げられて、抱き締められる。
 両足で、コーザの脚を跨いで。
 そのまま、ゆっくりと恋人の首に両腕を回した。
 どこか痺れたような唇を、そうっと舌先で舐めて。
 僅かに塩辛いような味を確認しながら、ぺろりと口を拭った。
 その後を、とん、と柔らかな恋人の唇に口付けられて笑った。
 「――――にゃあ」
 「なぁ?」
 甘えているような声に、ふにゃりと笑ったまま視線を上げる。
 「決めたんだ、」
 きら、と煌めくキャッツアイを覗き込む――――なにを?
 すり、と恋人の頬に鼻先を摺り寄せる。
 「セトの中が空になっても、オレ、あンたのこと愛して喰っちまうから。」
 どこか自信満々に告げられた言葉に。きゅ、と胸が嬉しくて痛んだ。
 「約束通りに」
 そう続けたコーザを見上げ、うっとりと笑う。
 ――――うん、そうしてくれるとウレシイ。
 「あ、それと」
 くう、と悪戯な笑みを浮かべた恋人に、ゆっくりと瞬く。
 「“さっきの”続きも忘れてねェから」
 「―――――?」
 「泣かせるっていったろ?」
 コトバとは裏腹に。優しく抱き締められて、ゆっくりと体重を預けた。
 「――――いいよ。オマエがするのなら、きっとなんだって許せる」
 きゅう、と抱き締めて。すり、と首筋に頬を押し当てた。
 「許すだけ?愉しんでヨ」
 あむ、と耳朶を唇に食まれて。小さく笑った。
 「辛くても、きっとウレシイ――――オマエが楽しんでくれたら、もっとウレシイ」
 かぷん、と肩に歯を立てて。
 それからペロリとその痕を舐めた。
 「愛してるんだ、誰よりも、何よりも一番」
 ぎゅう、と抱き締めてくれる恋人を見上げて、ふにゃりと笑う。
 「セト、」
 くう、と琥珀色のキャッツアイに見下ろされて、とん、と唇に口付けた。
 「二度と、一人にさせないから」
 齎された言葉に、小さく頷く。
 息が止まるほどきつく抱き締められ、ふにゃりと幸せなまま、また身体を預けきった。
 「オマエと二人がイイ、コーザ」
 「ん、まずは」
 いいトコいっちまお、そう言って笑った恋人に、小さく笑った。
 すい、と覗き込んできた恋人を上目遣いに見詰めて、こくりと頷く。
 「全部、任せた」
 する、と手がヒップを辿り。
 「あ、それすげぇカワイイ」
 そう言った恋人に、ぷ、と笑う。
 「知ってるだろうに――――オレ、全部、オマエのだよ、コーザ」
 だから。
 骨が蕩けるまで、オレのこと、愛してナ?
 
 
 
 
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