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 「んん、」
 「このまま、ってのは」
 恋人が囁く。
 「おれがいたたまれない、セトが綺麗すぎる、」
 肌を舌先でくすぐられて、僅かに怯む。
 「ふ、っ、」
 ちゅ、とまた肌を軽く吸い上げられて、背中がシートから浮いた。
 「こぉっ、」
 「後で怒られるから、もうすこしな……?」
 涙目で見下ろせば、にぃ、と確信犯的な笑みを浮かべて見上げられた。それから、く、と僅かにボトムのウェストを引き下げ、かり、と腰骨の上を齧ってくる。
 
 「ふ、ぁ、」
 身をよじるように身体を浮かせれば、ウェストのところから熱い指先が潜りこんできた。
 「あ、」
 ひく、と熱が沸き上がる。
 「は、ァ、」
 理性と衝動を天秤にかけている間に、する、と指先が臍より下に忍び込む。
 「こぉ、も、だめ、」
 唇を噛み締めて、もっと、とねだりそうになる自分を戒める。
 「離せ、」
 なあ、本当に。もっとちゃんとして、と言いそうになるから。
 「コーザ、」
 「んー?」
 揺れる頭に酷くやさしい声が響き。きゅ、と、腰骨の奥のところを強く吸い上げられ、びくりと身体が跳ね上がった。
 「こ、おっ、」
 指から力が抜ける。
 する、と直にモヘアニットの下に腕が回され、きゅ、と強く抱きしめられた。こく、と息を呑む。
 
 「困らせたいわけじゃないんだ、」
 囁きが耳に甘く届く。指に力を篭めてコーザの背中に縋った。
 もう一度、ちゅ、と肌を啄ばまれ、んぅ、と嬌声を飲み込む。すり、と額が腹に愛犬が甘えてくるように押し当てられ、
 「おしまい、続きは後で。うんと溶けちまおう、」
 甘い甘い声が響いた。先に来る交歓を予測させるようなトーンだ。
 「…ん、」
 両腕を伸ばし、ぎゅ、と恋人の力強い身体に抱き着く。とくんとくんと走る鼓動を、震える吐息で宥める。
 当たるシャツの衿やジャケットの生地にさえ、過敏になった素肌はそこから快楽を引き出そうとする。
 「こ、のまま、まって、」
 コーザの首に鼻筋を埋めて、快楽の余韻に震える身体を逞しい身体に預けた。
 暫く強く抱き締められたまま、熱が静かに奥深くで眠りに着くのを待つ。
 快楽を呼び起こさない程度に優しく何度も背中を撫でられる。ふ、と力を抜いて、くたりと身体を預ける。
 
 「…思わず、もっとって言いそうになっちった」
 ふぅ、と深い息を吐き出してから、するする、とコーザの肩に頬を擦り寄せる。
 「まぁいった、こんなにオレ、堪え性がなかったっけ?」
 顔を擡げて恋人を見下ろせば、にぃい、と悪っぽい笑みを浮かべ。
 「わ、煽るなよ」
 なんて本気とも嘘ともつかない声で言っていた。
 言わせたいとこだったんだから、などと言って、さらんと腰から腿あたりまでを撫で上げてきた。
 「ハ、」
 笑いとも喘ぎとも取れる声が勝手に口から零れ出る。
 
 く、とあっさり身体を起こしたコーザに、ひょいと身体を抱き寄せられる。
 背中を広い胸に預ければ、くぅ、と肩口に顎を乗せてきた。落ち着いた?と聞いてきながら、あん、と軽く耳朶に歯を立てられて、恋人の腿に預けた手に力を篭める。く、と腰に回されていた腕が、その力を僅かに増した。
 「煽るなって…、」
 あーあ、声揺れてるってのオレ。
 「流されちまってもいいかも、とか思い始めてンだから…」
 かり、とコーザの腿に爪を立てる。あーあ、我ながら誘ってるのか抑制しようとしてンのか、マジわかんねっつの。
 さら、と目の端で真っ直ぐにセットされた長い黒髪が揺れる。耳元で吐息が零され、んぅ、と溜息のような吐息を思わず膝に落とす。
 「こぉざ、」
 落ち着いた筈の熱がふわっと舞い上がって、瞼の裏で炎が踊った気がした。
 「パリまであとどれくらいかな…?」
 我ながら熱っぽい声だよなァ…。
 
 ふわ、と耳元で吐息が零されるのを感じ。ぞく、とする。
 「そういう声聞かせてくれるし、」
 甘い囁きの後、きゅ、とまた耳朶を食まれる。
 「っ、」
 ぐい、と力強い腕に腰ごと抱き寄せられる。
 「時間はたくさんあるよ、だから」
 眼、瞑ってみる…?と甘い囁きが耳元で唆してくる。
 「っ、」
 ぺろ、と耳を舐められ、一瞬身体が竦む。そのまま、きゅ、と耳の下の柔らかい部分を吸い上げられ、ひく、と身体が浮いた。さら、と下肢も手で撫でられて、ぎゅ、と腿を掴む手に力を篭めた。
 「こぉっ、」
 ふつ、と体温は既に上がっていて、僅かな刺激で直ぐに燃え上がってしまいそうなのを自覚する。
 「ま、かせて、いい?」
 きっと波に呑まれてしまえば、オマエに翻弄されることにもう慣れてしまっているから。上げる声だとか、服の乱れだとか、気遣えなくなっちまうから。全部、任せちまってもいいか…?
 
 する、と火照った目元を唇が掠めていく。
 「いいよ、」
 落とした声が間近で告げてくる。
 こんなに綺麗な恋人のこと、たとえオトウサンでも見せたくないし、と囁きが続けられ。すい、と指先に顎を引き上げられて、じぃっと見詰められる。
 コーザ、と名前を呼ぼうとしたら、噛み付くように深い口付けを仕掛けられる。
 腕を伸ばし、喘ぐように深く激しいキスを受け止めながら、恋人の頬を手で包み込む。
 目を強く閉じて、自分からも積極的にキスを貧る。
 「ん、っ、」
 くぅ、と一度強く舌を絡められ、少しだけ歯を立てられて、縋った手に力を篭める。
 「っ、」
 薄く唇が浮かせられる。
 
 「セト、」
 囁きを落とされ、ふぁ、と喘いだ。そのまま唇を軽く啄まれて、瞼を上げる。煌めくキャッツアイが本格的に餓えを宿して見詰めてくる。する、とモヘアニットの裾から手が滑り込んできて、んぁ、と深く喘いだ。
 「手、つめたくねェ?」
 返事をする前にまた口付けられて、軽く滑り込んできた舌に噛み付くことで返事とした。走り出した心臓の音を確かめるように掌を合わせられ、ひくりと肌が震える。
 「ん、ん、」
 上がった体温がもどかしくて、軽く身をよじった。そのまま腿に預けたままの手に力を篭めて引っ掻く。腰が重たくなって、熱が自己主張を始めている。
 「んっ、」
 触れてほしくて、吐息が震える。口付けを解いて、潤んだままの視界でハンサムな恋人の顔を見詰める。
 「コ、ォザ、も、っと、して…?」
 このままじゃ、きっとランチの間中身体が疼きを訴えていそうだ。だから…
 「ね…?」
 
 
 
 
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