「―――オマエを奥で感じるの、すげえ好きなのに」
背骨に添って、指先で線を引く。
く、と。見下ろしてくるキャッツアイが、物騒に細められて心臓が跳ねる。
「おれもセトを泣かせるの好きかな、」
甘いけれど物騒な声が耳に届く。
こく、と一つ息を呑んだ―――ああ、オレは。オマエの声だけでも感じることができる。
「―――オレのこと、考えてくれてるんだし。あんまりワガママはダメだな」
自分に言い聞かせるように呟き、はふ、と熱くなった吐息を零せば。
する、と。リネンの寝巻き越しに掌が滑っていき、ヒップあたりまで熱を感じる。
「―――ッ」
「“わがまま”?」
恋人が低く笑った―――あ、ダメだ、煽られる……ッ。
「カワイイだけなのに」
く、と指が力を入れてきた。腰の奥のほうでジリジリと快楽が沸き起こってくるのを感じる。
「……じゃあ、イイ…?」
「んー?」
1ヶ月、一緒にいる間、何度となく愛し合った身体は、もう簡単に火が着く。与えられる快楽を記憶し、その底なしの要求をあっさりと思い出す。
く、と。また指がずらされる。もどかしい、早くオマエを感じたいのに。
に、と。恋人が唇を引き上げた―――“悪いガーディ・スマイル”。
く、と。コーザの腰骨の脇に指先を埋めた。
「……んん、」
はふ、と。すっかり熱くなった吐息を零す。
す、と耳元、髪が退かされて。つる、と熱い口腔に耳朶が含まれ、甘く吸い上げられてまた体が震える。
「ふぁ、」
ひく、と。腰が勝手に跳ねる―――ピアスされて齎される衝撃を、もう快楽として覚え込んでいるから。
それを期待して、更に奥深くで熱が上がる。
くう、と大きな掌が腰を引き上げていき。する、と下着ごとアンダーが下ろされていく。
舌先が耳朶を押し上げてくるのに、んぁ、と甘ったるい声を上げる。
脚の間に割り込んできていた脚を、片方の爪先で辿る。
「コーザ、」
甘ったるい自分の声、隠すことなんか考えたこともないけれども―――少しだけ、簡単に煽られてしまう自分がハズカシイ。
ちゅ、と。音を立てて耳元からこめかみにかけて口付けられる。
「んん、―――きもちいぃ」
じぃ、と。覗き込んでくるキャッツアイの視線を感じて。
すっかり潤んだ眼で見上げて、ふにゃりと笑う。
「そっか、」
蕩けそうに優しい声に、更に笑みを深める。
「……気持ちよすぎて、タイヘン」
囁くが早いか、ぺろ、と熱く濡れた舌が唇を辿っていく。そのまま潜り込んだソレが、軽く舌を一度だけ、絡みとっていった。
する、と。アンダーを下げていっていた手がウェストまで戻ってくる。その感触に、小さく仰のく。
「んん……っ、」
する、と。片足が引き上げられるのに、逆らわずに応じる。さらっと既に濡れ始めた中心部に触れられ、眼を瞑る。
「あ―――は、ァ」
く、と。自分から恋人の手に腰を擦り付ける。
「アマイネ、」
コーザの言葉に小さく笑って、潤んだ眼でまた見上げる。きゅ、といきなり扱かれて、びくりと腰が跳ねあがった。
「んっ、あ、」
背中に線を引く―――ほぼ成功したことはないけれども。
ぴくん、と。爪先が勝手に反応して跳ね上がる。
「残せそう?」
甘い声に、眼に力を入れてみる。
「線―――?むり」
朝、ネイリストのひとに来てもらって、短くしてもらったから。
「ざァんねん、」
恋人の言葉に、ふは、と笑う。
軽く首を擡げ、首筋に噛み付こうとすれば―――きゅ、きゅ、とリズミカルに絞り上げられ始める。
「ん、あ、ァ、ふぁ、」
熱が擦られる度に先端から雫が沸き上がっていくのが解る。
ゆっくりと身体を落としていった恋人が、不意に先端を舌先で抉って割り開いていった。
「―――ふあ、ア、」
びく、と腰が跳ね上がった。そのまま、ちゅく、と吸い上げられて、恋人の背中に残らない線を引く。
「ゃ、ア……ッ」
どこまでも甘く蕩けた声だ―――熱く潤った口腔に包まれて、腰が蕩けるように重く感じる。
く、と。また舌先で突かれ、びくりと腰がまた跳ねた。
「あ、こ、ぉ……ッ、」
す、と伸ばされた片手が、胸のまだ小さな尖りを掠めていった。
それからまた、きゅ、と強く押しつぶされるタイミングと同じに強く吸い上げられる。
「ん、あ、ア……!」
コーザの髪を乱して、甘い声を零す。
何度も強い刺激を送り込まれ、ぐつぐつと体内で沸き上がるかのように快楽が渦巻く―――頭の中が真っ白になって考えられない。
きゅ、と恋人の髪を握った。
「ん、ぅ、ふぁ………ッ」
追い上げられて、あっさりと白旗を振る―――濡れた音がなんども響き。潤んだままの蒼で見上げる。
「も、い……っ」
トン、と。あっさりと天辺から飛び降りる。
「ぁ、あ、ああ、ぁあ」
更に促されて、どくりと体外に体液を零す―――飛び散ろうとした勢いで零されたソレは、恋人の掌をきっちりと濡らした。
ぐ、と。いきなり腰を引き上げられ、息苦しさに喘ぐ。
「こ、ぉ……っ、」
熱く濡れた手指が、抱え上げられた腰の間を辿っていった―――零した体液が、何度も恋人を受け入れた場所に塗りつけられ、そこに……。

「ふ、ぁ―――ッ」
ぺちゃ、と。濡れた音がして。指より熱く濡れた舌が、その後を追っていった。
震えが体中を駆け巡る―――頭の中でちかちかと光りが走る。
きゅ、と。また濡れた掌が、一度熱を零してもまた直ぐに主張してきていた中心部を握った。
二箇所に齎される快楽に、頭がおかしくなるくらい煽られる。
「ひ、ぁ、―――んぅ、」
舌先が伸ばされ、皮膚を押し上げられるのを感じて、リネンを握り締める。
「こぉ、こぉ…ッ、」
泣き声じみた嬌声だ、快楽に浸った。
きゅ、と。肌の柔らかい所を吸い上げられて、また喘いだ。
「ふ、あ、ぁ―――、」
またイッてしまう、と。半ば泣き声で告げれば。
ぐう、と奥にまで熱い舌を差し入れられて、背中が勝手にアーチする。
「や、あ、ァ、っ、」
掌できゅ、と絞られ。尖らされた舌先で内側を衝かれ。
手を伸ばし、恋人の方膝を捕まえて握り締める。
「ァ―――ッ」
堪えきれずに、また快楽の絶頂から飛び込む。
きゅ、きゅ、と促すように扱かれ。その大きな掌に遠慮なく熱を零した。
連日愛されてきたから、1回に零す量は多分少ない。
けれど、ぽた、と胸の上に熱い雫が零れ落ち、びくんと身体を跳ねさせた。つ、と熱く濡れた舌が伝い。また中心部を咥えられて腰を揺らした。
「く、るし、……こぉ、」
喉で息が詰まっている風に感じる。頭はとっくにぐらぐらになっていて。
感情を吐露するように、勝手に涙が零れ落ちていく。
ゆっくりと腰がリネンに下ろされて、深く息を吸い込んだ。けれど片足はまだコーザの肩に引っ掛けられたままだ。
熱い指先が、一度濡らされた奥に触れて、体がまた勝手に震えた。眼を見開いて、キャッツアイを見上げる。
―――シテ。オレを埋めて。
物騒な光りを浮かべた、それでも優しい色合いのキャッツアイに、音にはせずに語りかける。
けれど、だぁめ。と目で返されて、さらにリネンを握り締めた。

「―――ぁ、」
瞳を合わせたまま、ゆっくりと指先が潜り込んでくるタイミングに合わせて息を深く繰り返す。
求めていた質量ではないけれども―――ゆっくりとポイントに触れられて、また嬌声を上げる。
「ぃ、んんっ、コォ…ッ」
甘やかすような、誑かすような。優しく低い声が告げてくる―――キレイだね、と。
「セェト、」
「ふ、あ、ア、んぅ、」
「咲き誇っておいでよ、いくらでも」
齎された言葉の意味を痺れた思考で解読している間に、またぐう、と指の腹で奥を刺激され、堪えきれずにまた密を零した。
「ひ、あ、ア、んんんッ…!」
ぎゅう、と。リネンとコーザの膝を握り締め。白く発光する頭の中が落ち着くまで荒い息を繰り返す。
熱の散った肌の上。そこをゆっくりと、音を立てて、恋人が舐め取っていく。
その感触に何度も小さく震え、声を上げた。
「こ、も、や―――」
指は内に浅く残されたまま。収縮させるたびにその存在を感じて、また別の熱に頭が痺れたようになる。
押し開かれて、首を横に振った。
「――――オマエ、が、イイ、」
何とか言葉を捜して、音にして。
愛しいオトコのキャッツアイを潤みきった目で見つめる 。

「コーザ……プリィズ、」
く、と。指先を膝に埋めた。
「オマエ、なし、は。ヤだよ、」
ぐう、と。奥深くまで、指を埋められた。
「ぃ、あ、ア、」
じん、と腰の奥が甘く痺れた。
する、と。また僅かに引き上げられ。揃えられた指がまた埋められて、腰が勝手に揺れた。
「んっ、ふ、ァ、」
かり、と。脚を齧られて、きつく目を閉じた。
「こぉ、こーざ、―――ぁああああっ、」
何度も何度も、押し入れられ、奥を抉るように撫でられ。快楽に、コントロールを失う。
涙が勝手に零れ落ち。零す蜜はどんどんと掬い上げられていく。
「こぉ、こーざぁ……ッ、」
恋人の名前のほかに言葉はもう思い浮かべられず。
何度も名前を呼ばれ、齎される刺激に煽られるまま、絶頂を極める。繰り返し、何度も。
「――――ぁ、」

何度も、何箇所も。口付けられ、軽く齧られ。甘く吸い上げられた。
きり、と。いつの間にかうつぶせにされていた身体の下にあった蜜嚢が痛みを訴え。
コーザの熱を奥に零されることのないまま、くたりとリネンになつく以外のことができないくらいに“愛された”。
荒い息のまま、涙を零したままの目で恋人を見遣った―――ゆっくりと手を伸ばし、同じように体をリネンに預けていた恋人の腕に触れた。
愛してるよ、ホントにオマエだけ―――声にはせずに。
もう何万回も告げてきたことを告げる。
ぎゅう、と。まだ熱の引かない両腕に抱き締められ、目を閉じた。ぐらぐらと揺れた頭のまま、恋人の肌に唇を押し当てた。
そのまま抱き上げられ、バスルームへと運び込まれる。セト、と。優しく名前を呼ばれ、ゆっくりと視線を上げてキャッツアイを見上げれば。
寝ちまいな、と。甘い声が唆してきた。
あともう数時間しか一緒にいられないのに……、そう文句を言おうとして、けれど適わずに目を閉じた。
抱いてるから、そう声が響いて。
より一層恋人の体に体重を預け、意識を手放した。
寂しさを、その日もう思い起こすことはなかった。




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